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華筏 第2章 ~星鏡 11~
2017-02-05 Sun 18:00


このお話はフィクションです





ヒチョルさんが持たせてくれたサンドイッチを持って、星鏡の湖に向かう



僕の手はユノの手の中に包まれるだけではなく
彼のコートのポケットにも温もりを貰っていた



僕の家から程ないこの湖には、生い茂る樹々の間を抜けて行くから
陽の当たらないこの道は何だか寒々しいのだけれど



僕のこの手は…ユノの愛で幾重にも守られている気がした



『もうすぐ星鏡の湖にも冬が来るな…舟を出すのも今日が最後かな』



そう言うユノの手は、その事が寂しいからか
握っていた僕の手をもう一度ギュッと握り直す



そう
冬が来れば、湖の一面が凍ってしまう
僕の好きな碧い水面も…春まで見られなくなってしまうんだ



彼と迎える二度目の冬
愛を深めれば深めただけ欲張りになるのと同じで



この湖が凍ってしまう事さえも
そうならないで欲しいと思ってしまう



一面が氷で覆われてしまえば



碧い水面も
星鏡と呼ばれる所以である、夜空の星を写す鏡の様な漆黒の水面も



見る事が出来ない…



今日の僕は何だか変だ
こんなにも彼の愛を独り占めしているというのに



心に芽生えた不安は
この人でなくては消せない
僕は歩きながら、ユノの肩へと頭を乗せた



『寒いか?ここにきて一段と冷え込んで来たからな』



ユノはそう言って繋いでいた手を解き、僕の背中に腕を回す
手を解かれる寂しさよりも大きな、彼の温もりを貰った



「ユノ…仕事は楽しいですか?」



心地よい温もりに包まれて、ふと聞いてみたくなった



忙しい中でも、ユノが少しでも楽しさを感じてくれていれば嬉しい
そう思って、彼に尋ねる



『そうだな…楽しい、と言うよりさ。嬉しい、かな』



ユノはそう答えた
嬉しい…それはどういう意味なんだろう



その意味を尋ねる前に、森を抜ける
穏やかな陽射しを受けてきらきらと光る星鏡の湖が
今日も静かに僕らを出迎えてくれた



ユノが桟橋に繋留されている舟の縄を解き、先に舟へと乗り込む
舟の上から僕に向かって手を差し出した



差しのべてくれる彼の手を見つめる
僕はこの手を取らないで、生きていく事が出来るのだろうか?



ううん…
あの時僕と共に苦しみ、共に生きてゆく事を選んでくれたこの人の手を取らないなんて…
出来っこないんだ



僕はユノの手を握り、そのまま胸に飛び込んだ



『うわっ!危ないってば、チャンミン。
こんな小さな舟が傾いたら、すぐひっくり返るぞ』



僕はユノの胸にしっかりと抱きとめられたけれど
白い小舟はぐらりと大きく揺らいだ



「舟が沈んでも…僕を助けてくれる?
それとも、湖の底まで一緒に沈んでくれる?」



こんな面倒くさい質問をする僕は…
きっとユノを困らせてしまうって自分でも分かってる



それでも、聞きたかった



『チャンミン。俺は前に誓ったはずだ。
愛しているから、チャンミンと共に死ぬ事も厭わない。

でも、俺はさ
どんなに水が冷たくても、服がまとわりついて泳ぎにくくても、泳ぎが下手くそでも…

おまえを腕に抱いて、必ず水面に這い上がるよ』



小舟の上で僕を自分の足の間に座らせたユノは
そう言って僕のこめかみに口づけた



僕は、やっぱりこの世で一番の幸せ者みたい…
愛しい人のこの上ない言葉を胸に再び刻む



ユノは今、どんな顔をしているんだろう…
背中に伝わるユノの動きを感じ取る



きっと…自分の言った言葉に照れて、顔を赤くしていると思う



それを感じ取らせまいと大きく咳払いをしてから
彼はオールで大きく水をかき、星鏡の湖に舟を漕ぎだした







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華筏 第2章 ~星鏡 10~
2017-01-20 Fri 18:00


このお話はフィクションです





この人の全てに
僕は狂わされているんだ



僕は何故か、急に怖くなった



仕事が忙しいユノの久しぶりの休み
彼と夜中まで抱き合い、ユノの愛を独り占めして



なんだかんだ文句を言いながらもこうして
僕が希望した通りに、ユノの先輩の店で昼食を食べている



彼と思いを通わせて以来、僕は毎日が幸せだ



朝起きて隣にいるユノの寝顔を覗く事も
僕の作った食事を美味しそうに食べてくれるユノを見る事も



僕が好きなワインを楽しむ時、ワインの香りだけで顔を赤くしてしまうユノも…



彼と過ごす一分一秒が、全部幸せなんだ



何故、怖くなったんだろう…
目の前でヒチョルさんの料理を頬張りニコニコしているユノの顔を見つめる



『どうした?食欲ない?』



僕のフォークが動かない事を心配するユノ
慌てて顔を振るけれど、僕の些細な変化に敏感なユノに隠し事は出来ない



『食事を済ませて外に出ようか。少し顔色が悪いな』



ユノ…
どうしてあなたは僕の事を全部分かってしまうの?



僕は…まだあなたの事を分からない時もあるのに
何だか悔しい



フォークを持つユノの指を絡め取る
その指を口に運び、噛み付いた



突然の事にびっくりするユノ
こういう時の彼は、捨てられた子犬の様に困った顔をするんだ



「ユノ…僕は幸せです」



こんな訳のわからない僕の行動は
ユノでも理解出来ないと思う
それでも彼は、噛まれた指で僕の頰を撫でて言う



『俺も、幸せだよ。怖くなるくらいにね』



僕の心までも見えてしまうの?
怖い、と思っていた事までもお見通し?



ユノが、好き…
噛んでしまった指に今度は、そっと口づけた



その後は
ただ黙って料理を口に運び、時に見つめ合う



側から見たらこんな僕らはどう見えるんだろう



僕の周囲の人間は皆、僕らの関係を知っている
父、腹違いの姉、従兄弟…



僕は生まれた時からずっと海外で暮らしてきたから、周囲にいる人間はたったこれだけだ
父もつい最近、言葉を交わすようになっただけの気薄な親子関係だし



ユノは…



そういえば僕は
ユノの周囲の人物を全然知らない…



唯一ユノが前にいた会社の先輩で脱サラして、ここにレストランを開いているヒチョルさんだけだ



ユノと一緒に暮らし始めてもう随分経つのに…



一度不安を覚えた僕の心は
それまで気づくことがなかった事実も、急に気になり始めてしまう



ヒチョルさんのレストランを出た僕達
いつもの様にユノのエスコートの元、車の助手席に座る



運転席に乗り込んだユノは僕の方に手を伸ばし、僕のシートベルトを締める



これも
僕を過保護過ぎるくらい大切にしてくれる
ユノのいつもの流れだ



その腕を取り、ぎゅっと抱え込む
不安な気持ちが僕にそうさせた



いつもと違う僕に、ユノは再び困った顔を見せる
僕の事を全部お見通しの筈のユノも…時々こんな顔を見せる



『チャンミナ…今日は何だか甘えん坊さんだな』



真昼間の繁華街に停められた車の中で
それでもユノは、僕の事を抱き締めてくれる



同性愛という大きな偏見さえ
気にも留めないユノの、そんな堂々とした抱擁だった



「甘えん坊な僕は嫌いですか?」



僕もまた
堂々としたユノに応える様に彼の耳に口づける



同性愛という括りに拘る方がむしろダメなんだ
僕は、ユノという人間を愛しているんだから…
性別に拘る方が間違ってると感じていた



『甘えん坊のチャンミンは、ちょっと困るかな』



えっ?



ユノ……
僕は、あなたに迷惑をかけているの?



きっと僕は
ユノの予想外の答えに動揺して、目が泳いでしまったと思う



そんな僕を抱き締めているユノの鼓動が
どんどん大きくなっていくのが伝わってくる



『甘えん坊のチャンミンはさ……
いつも以上に魅力的過ぎるんだってば。
さすがの俺でも白昼堂々襲えないよ』



耳元でそう打ち明けてくれるユノ
自分でも正直に言い過ぎたと思ったのか、ちょっと顔を赤らめて車のエンジンをかけた



ねえ、ユノ…
あなたはどれだけ僕を夢中にさせれば気が済むの?



甘えん坊の僕を…魅力的過ぎると評したあなた



僕にとってあなたは…
ただ、僕の隣で息づいているだけで魅力的過ぎるんだよ



それを知らないあなたは
照れている事も隠さないまま、運転をし続けている



あなたのその整いすぎた横顔が
僕をすっぽりと包み込んでしまう広い胸が



僕を虜にして、どんどん深みに沈めてゆくんだ



この車は、僕たちの家へと向かっているけれど
僕たちはこれから、どこへ進んで行くんだろう



一度芽生えた小さな不安は
本当だったら幸せだと感じる事でさえも不安に変えていく



隣にいる愛しい人を
自分で勝手に、遠くへと追いやっている錯覚に囚われていた







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華筏 第2章 ~星鏡 9~
2017-01-16 Mon 18:00


このお話はフィクションです





〈よぉ~!久しぶりだなチャンミニ!ユノ、忙しそうだな〉



仕切り直しに揃って二度寝していた僕とユノは
遅すぎるランチを食べにユノの先輩の店に来ていた



ユノが僕との恋に悩んでいた時、背中を押してくれたヒチョルさん



ワインが好きだという僕に色々と合わせた料理を作ってくれて
チャンミニというあだ名で呼ばれるまで仲良くなれた



ユノがこうして
自分の世界を僕に共有させてくれた事が嬉しかった



〈ヤキモチ焼きのユノのせいで、チャンミニと会えなくて寂しいよ〉



茶化すヒチョルさんをシッシと追い払いながら
僕の背中を抱いてユノがお気に入りの席に向かう



『先輩、そのチャンミニと俺に美味しいの食わせて』



ユノに追い払われつつも、嬉しそうなヒチョルさんは
〈任せろぉ~〉と大きく手を振り厨房へと消えた



『喋らなければいい男なんだけどな、先輩は』



僕を椅子に座らせてから向かいの椅子に腰掛けるユノが笑う
自分は優しくない、紳士的な振る舞いとは遠くかけ離れてるんだって彼は言うけれど



実は僕には優しすぎるくらいなんだ



車に乗る時もドアを開け僕を助手席に乗せた後
運転席に乗り込むユノはシートベルトすらも僕につけさせない



いつも当たり前の様に手を伸ばし
僕の鼻の頭に軽く口付けてシートベルトを締める
そんなキザな仕草も、僕の自慢の恋人にはすごく似合ってしまうんだ



どこに行くにも、ユノは僕の背中を抱く
そんな仕草から僕はユノの愛を一身に受けているっていう充実感を味わえる



過保護すぎるくらいのユノの愛に
僕はどっぷり浸かってしまっている気がする



『チャンミン、ワイン開けるか?運転してきてるから俺は付き合えないけど』



そう言いながらワインリストを見せてくれるところも
小さなことだけどやけに優しくて



僕は、そんなユノの手をそっと握る



「今日はこの後…湖に舟を出しましょう。だからワインはやめておきます」



昨日ユノが言っていた事をしたいと思ってた
ユノは僕の作品にも描いた白い小舟に揺られてうたた寝をするのが
一番の気分転換になるって前に言ってた



仕事が詰まっていて疲れているユノに駄々をこねてしまった昨夜の僕
お詫びにあの舟に揺られ、僕の膝枕で疲れを癒してあげたい



『何だよ、チャンミン…嬉しいな』



そう言ってキュッと目を細めて笑うユノ
僕の大好きな星鏡の瞳は、三日月みたいに細めたまぶたの合間からもきれいに見える



ユノは僕が握った手に指を絡めて『楽しみだな』と呟いた



〈店が空いた途端に今度は愛で満席になってるんですけどー〉



詩人のような事を言いながらヒチョルさんが美味しそうな料理を運んでくる



〈根菜のサラダに、これはクリームチーズの生ハム包み。昼だからワインは要らないかと思ったけど、やっぱりチャンミニが好きだから気づいたらつまみ作ってたぜ〉



『ちょっと、ヒョン!!』



僕を好きだと言うヒチョルさんにゲンコツを見せながら立ち上がるユノ
ヒチョルさんも笑いながら逃げていく



こんな他愛のない時間さえも、僕にとっては
ユノの知らない面に新しく気づいたり出来て、すごく新鮮なんだ



ユノって
意外にヤキモチ焼きなのかな、ってね



だから僕もついつい顔が綻んでしまうんだ



『旨そうだな!早速食べようか。チャンミン取ってあげる』



ユノは取り皿にさつまいもやカボチャ、レンコンを取ってくれる
でもちょっと不器用だから、ミックスビーンズはぽろぽろと周りにこぼれてしまって



『あぁ、んもぅ!』



そんな風に口を尖らせて、慌ててビーンズを拾い集める



細面な顔立ちにシャープな目、スゥッと通った鼻筋になぜか下唇だけは主張が激しくて
それを尖らせるもんだから、余計に唇の赤さが目立つ



僕はクリームチーズを取って
赤い唇にギュッと押し込んだ



キョトンとするユノ
僕は手に残るソースを自らの舌で舐めとってから、ユノの口についてしまったソースも同じようにする



ユノの赤い唇が、やけに官能的で



昼間なのに
ユノの先輩の店なのに



吸い付いてしまいたくなる衝動を
クリームチーズの生ハム包みに助けてもらった



僕は
ユノに狂わされているんだろうか…



自分の身体の中で疼くものが
一瞬だけ怖くなった






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華筏 第2章 ~星鏡 8~
2017-01-11 Wed 18:00


このお話はフィクションです





いつも居てくれる人が隣にいない
自らがそんな状況を作り出したにもかかわらず
そのせいでこんなにも眠れないなんて



馬鹿だなって
あっさり後悔してみたり



僕が思っている以上にユノは僕の中で息づいている
そんなことに今更気付いたり



頭を冷やそう…冷静になろう…
そう思ってこの部屋に来たというのに
それどころか睡眠すらも僕に訪れてくれなかった



ようやくうとうとし始めたのは
いつもは起きて動き始める時間だった



ドタドタという音が
入眠中の脳を再び覚醒させる



その音を立てる主は、僕のいるこの部屋を通り越しアトリエのドアを開けた
そして再びこの部屋を通り越して階段を降りていく



色を失ってから
その代償を神が与えてくれたからなのか、その他の感覚が研ぎ澄まされたようで



足音だけでその主がどこに向かい、何をしているのか
そんなことが分かるようになった



次はきっと
僕の名前を呼ぶだろう



『チャンミナっ?!』



ふふ…正解…



僕を寂しがらせた罰だよ、ユノ
僕はね、案外根に持つタイプなんだ



そう思い、ワザと頭からすっぽりと布団をかぶる
最後にきっと、この部屋のドアを開ける…



『よかった…ここに居たんだ…』



きっと今ユノは
外国のドラマみたいに大きく肩をすくめて、ホッとしているだろう
あのきれいな目を閉じて…



『チャンミナ…ごめんな』



ふふふ
悪いのは勝手にこの部屋で寝た僕なのにね
それでも謝ってくれるあなたが好き



前にまるっきり逆の状況だった事があった



あの時は
僕がユノの休みの日に朝一人で起き出し、アトリエでキャンバスに向かっていて



そんな僕のためにコーヒーを淹れて来てくれたユノがパジャマ姿だった事に小さく文句を言い
それをきっかけにユノがむくれてしまった



きっとユノは
僕がパジャマ姿でうろうろしないでと言った事よりも



せっかくの休みの日なのに
朝一緒に目覚めずおはようのキスもせず居なくなった事が、嫌だったんだと思う



今度は僕が
忙しいユノと一緒に過ごす時間が減ったということに怒って、子供じみた反抗をしているみたい



僕たちって
似た者同士なのかな?
あの日のユノも、今僕がやっているように布団を頭からかぶってた



『チャンミナ。お昼はさ、先輩の店に食べに行こう。それから…久しぶりに映画でも見に行くか?
星鏡の湖はまた今度でいいから』



僕が寝てないのを分かってて話しかけているユノ
それにちゃんと昨日僕が言ってたことも覚えてる
僕がユノの先輩に会いたいって言ったらヤキモチ妬いたくせにね



僕は黙って布団をめくる
ユノがちょっと困った子犬のような顔で僕を見ていた



「ユノ…」



ユノの誘いには答えず
ただ名前を呟いて彼の首に腕を伸ばす



恋に落ちたばかりの頃と全然変わらずに
どこかへ出かけるよりも、この人をここにずっと閉じ込めていたいって思ってしまう僕



そんな思いが僕の腕に乗り移るんだ



ユノは黙って身体を寄せて、僕に口付ける
彼の指が僕の髪を梳くようにゆっくりと往復する



『もう一回一緒に寝ようか。それとも…』



ユノはそう言ってもう一度キスをしてくる
今度のキスは、朝のそれには相応しくないくらい熱くて



僕は自然と閉じていた口を開けて
ユノの舌を誘い入れてしまうんだ



昨夜久しぶりに愛し合ったばかりなのに、それでも尚貪欲に彼を貪ろうとする自分がひどくあさましい



僕をこんなにしてしまったユノに…少しだけ腹がたつ



「ユノ…ごめんなさい。いつまで経っても僕はだめだよね。
あなたはもう僕のものなのに…もっともっと、僕だけのものにしたくなっちゃうんだ」



ユノの熱い舌を味わいつくしてから、彼の肩に頭を乗せた
僕だけの、ちょっと硬めの枕だ



『何言ってんだ。チャンミンだけじゃないよ。俺だって同じさ』



そう言ってユノは僕を抱き寄せる



似た者同士の僕たちが再び眠りに落ちて
もう一度仕切り直しで一緒に目覚めたのは、昼近くだった





-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


親愛なる皆様へ


ご記憶の方もいらっしゃるかと思いますが、愛犬の体調が芳しくありません


夜も数時間おきに起きて世話をしているので、私も疲労困憊の状況ではありますが
自分自身の気分転換にもなりますので、不定期更新ですが「星鏡」を再開させて頂きます


もしよろしければ、お付き合いください


ゆんちゃすみ


-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*





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華筏 第2章 ~星鏡 7~
2016-06-18 Sat 18:00


このお話はフィクションです





「ごめんね、ユノ…
僕はなんだか、前よりずっとワガママになっちゃったみたい」



バスルームから熱いお湯を汲んできて、汗と体液でぐちゃぐちゃになったユノの身体を拭きながら、ユノに話しかける



あなたはよく『俺ばっかりチャンミンが好きみたいでイヤだ』って文句を言う



それは多分、違うよユノ
僕の方があなたが好きでたまらないんじゃないかな



あなたの事が好きだと気づいてから
僕はあなたに触れたいという欲求が深くなった



その感情は、手を繋いだ事でより深くなり
僕は自分から初めてのキスをあなたに捧げた



キスをすれば、更に欲求は深くなって
今度は、あなたと結ばれたいと思うようになった



僕は何もかもあなたが初めてだけれど



僕と初めて会った日に彼女と別れたと言ってたくらいだから、ユノには女性を抱いた経験があると否が応でも分かった



だから僕は一人で調べた
男同士の愛の形が、どういうものなのかを…



ユノも僕を好きだといい、そして求めてくれた
でもやっぱり、寸前で躊躇ってるように僕には見えたんだ



普通に女の人と恋愛をしていたであろう彼にとって、男の僕を抱くという経験は未知数だったはずで



その点僕は、全てが未知数の世界だったから
ユノへの想いだけで突き進むことができたけれど
怖くなかったと言ったら嘘になる



触れたことのない場所に自ら触れて
そこに愛する人を受け入れるという事は
すごく怖かったけれど



それと同時に
自分の身体に愛しい人を取り込んだという満足感でいっぱいになった



もう何度も、身体を繋げているけれど
ユノへの想いは色あせないしユノにもっと触れていたいと、以前にも増して感じている



でも最近、ふと不安にかられる時がある
僕とこの人は、この先ずっと一緒に居られるんだろうかと



ユノは『チャンミンに僕の生涯を捧げます』と誓ってくれたと父から聞いた



そう、今まで一度も会うことのなかった父とは
ユノと一緒に暮らすようになってから会うようになっていて…



父が僕の母に捧げたという大きな美術館の開館の時、姉と共にそこで初めて会った



父は…
初めて見る父は、自分に似ていた
親子というものの偽りのない事実をそこに見た



〈ユノ君が私の分までチャンミンを守ると言ってくれた。だから私も、そんなユノ君を別の角度で守ろう〉



初めて会ったというのに
僕と父の会話は全て、ユノの話で



初めて会う自分に対し一切怯むことなく
あなたの息子を愛していると言い切ったユノに
とても感動したと言っていた



自分があの時、ユノ君のように真っ直ぐな心で立ち向かっていたらおまえとあの人を苦しませることはなかったんだと…私は彼に教えて貰ったよ



父は遠くを見つめて、そう僕に話す



遠くを見ている父は
きっとそこに僕の母を見ていたんだと感じた



父は、最後にこう言った



私はおまえに何もしてやれなかった
だから、おまえが生きたいという人生を応援していく事だけは、これからさせて欲しいと



父は自分で言った通り、自分の会社に招き入れたユノに何かと目をかけていると姉に聞いた



ユノもまた、失業しかけていた自分を救い、男である自分を息子の恋人として認めてくれた父に恩返ししようと、一生懸命らしい



だから、最近帰りが遅くなっているんだけれど
僕はそれを寂しいと思ってしまうんだから、やっぱりワガママなんだろうな…



きれいに拭き終わったユノに、きちんと布団をかける



少し…僕が冷静になろう
ユノを好きすぎる自分を、制御出来るようにならなくちゃいけないのかもしれない



僕はパジャマを着直して
寝室の隣にあるゲストルームのベッドに身体を休めた



当たり前になっていた隣にある温もり
その温もりが無いベッドでは、柔らかい布団すらも無機質な冷たさだった…







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