渇欲 58
2017-05-07 Sun 21:00


このお話はフィクションです
血縁者の設定ですが第三者の女性が登場します
予めご了承ください






忘れていた感情…
いや、封印していた感情言うべきか



それを
この男によって蘇らす事になるとは…



俺から興味を持って接していたのは間違いない



だが、この男は



俺自身が長きに渡り積み重ね作り上げていた氷の城壁をいつの間にか溶かし、俺の陣地へとあっさり侵入していた



俺だけしか知らない息抜きの場所…
姉さんが眠るシアトルへと続く海が見えるあの場所に連れて行ったのも
俺の心がこの男に掴まれたからかもしれない



シム・チャンミン…



手枷足枷をされた挙句
無理矢理俺に身体を開かされた筈なのに
短期間で俺の目の前に姿を現し、くるくると変わるいくつもの表情を見せてくれた



怯えた顔、動揺した顔、困ったようなはにかんだ笑顔、そして官能を貪る妖艶な顔



そして今
俺の腕に抱かれ穏やかに目を瞑る寝顔…



自分の腕の中にあるものを守りたい
そんな感情を蘇らす事になろうとは、思ってもみなかった



フレアがこの男に簡単に懐いたのも一つの理由かもしれない
彼はプライドが高く人に声をかけられてその体に触れさせても、決して頭を撫でさせる事はなかった



それなのに初めて会った時からシム・チャンミンの話を聞き、きちんと目を合わせて
そして彼に頭を撫でられて嬉しそうにしているのを見て、俺の中で何かがぷつっと切れたのだ



フレアは、姉の宝物だった
死んでしまった姉の身代わりに、俺のそばで無理矢理生かされている
そのフレアが、シム・チャンミンを受け入れていたから…







俺には、一回り年上の姉がいた
いわゆる腹違いの姉で俺が産まれた後すぐに両親が事故で死んだため、赤ん坊である俺と共に孤児院に引き取られた



大きな夢を追って渡米した父親は財を成すどころか借金を残し、挙句の果てに呆気なく事故で死んでしまう



まだ学生だった頃から姉は
父親の作った借金と、望んでいなかった父親の再婚によって産まれてきてしまった弟を背負わさせられた



でも姉は俺を大事にしてくれていた
腹違いとはいえ残された血縁者が俺だけだったから、孤児院から学校へ通いつつアルバイトをしておやつを買い俺が待つ孤児院に帰っていた



俺を連れて一日も早く孤児院を出たかった姉は、睡眠時間も惜しんでアルバイトしていたらしい
友人と遊ぶ事はもちろん、恋をする事もなくハイスクールを卒業した



孤児院の院長はアル中で、事あるごとに子供達を虐待していたそうで
殴られている俺に覆い被さりながら、姉が身を呈して庇ってくれた事を覚えている



姉は、色の白い人だった
母親が違うせいか俺とは違い、目鼻立ちがはっきりしていて韓国人らしくない顔をしていた



ハイスクールを卒業した姉は小さな旅行会社に就職し、アメリカに商談に来る韓国人の通訳をする様になっていたが
その見た目が災いしたのか、夜まで付き合わされる様になっていく



〈ユノ。私はあなただけが生き甲斐なの。
あなたがテストで良い点を取ってくれればすごく嬉しいし、あなたが大学に行って一流企業に勤めてくれる事が夢なのよ〉



事あるごとに俺へそう言っていた姉さん



たった一人の肉親である姉に懐いていた俺は、その言葉に応えようと一生懸命勉強した



ジュニアハイスクールでも優秀な成績を納め、このままいけばハイスクールでは飛び級で名門大学に合格するだろうと言われた



“そのためにはぜひとも、学力を更に伸ばすべく家庭教師をつけて勉強させると良いですよ”



ジュニアハイスクールでの三者面談時、先生にそう言われた姉さんは



〈ユノが頑張っているんだから私ももっと頑張って働かなくちゃね〉と
背丈の超えた俺を見上げる様にして優しく言っていた



そのためだったのか
姉はいつの間にか、渡米してきた韓国財界人相手の高級娼婦になっていた事を俺は知る由もなかったが…



俺がハイスクールに入ったばかりの時
どうしてもワシントンでやらなければならない仕事があると言う姉と、半年ばかり離れ離れになった事がある



その時姉は、ワシントンではない近くの産婦人科で一人の男の子を産み落としていた
姉を気に入りアメリカに来る度姉を呼んでいた、韓国の大手企業の社長の子供を身篭っていたのだ



その子供は産まれてすぐに教会へ預けられた
俺を立派な大人にするために、父親にもその存在を知らせずに姉は我が子を手放したのだ



俺が姉を愛している事に気づいたのは、その事実を知ってしまった時だった



ハイスクールから飛び級で大学へ進学した俺は、奉仕活動で通っていた教会で可愛らしい男の子を見かける



アジア人の顔立ちだがびっくりするくらい色白で、そしてそのくりくりとした目元がどこかで見た事がある様な気がしたんだ



人見知りが激しく癇が強かったその子は、教会でも持て余される子供だった様で
いつも教会の隅っこで、一人ぼっちで遊んでいた



何故だか俺はその子が気になって、吸い寄せられるようにその子に近づいた



『何で一人でいるんだ?俺と遊ぼう。
俺もさ、いつも一人だったからお前が遊んでるそのゲームけっこう得意なんだぜ』



そんな風に声をかけた俺を見上げた顔が
いつも俺のそばで、どこか寂しげな顔で俺を見上げているその人にそっくりだった



俺の差し出す手に色の白い小さな手を差し出したその子は、なぜかぎゅっと抱きついてきた
抱きついたまま何も喋らず、ただじっとしているその子がすごく愛おしく思えた



それ以来教会に行く度にその子に必ず声をかける様にして、その子も少しずつ俺に喋る様になり自分の名がテミンと言う事も教えてくれたのだけれど



姉さんとの食事の際にたまたまその話をした時
姉さんが急に食事を喉に詰まらせひどく動揺した事が妙に気になった俺は、大学の先輩で教会のボランティアをずっとやっている人に事情を尋ねた



そして、事実を知った



姉さんが誰かの子を産んだという事実
そして俺のために我が子を手放したという事実を…



問い詰めた時、姉さんは泣き笑いの顔で言った



〈私にはユノだけが生き甲斐だと言ったでしょう?産まれた時から、たった一人の大切な存在であるユノを…あなたを愛しているの

あなたが笑い、喜ぶことが私の幸せになる。
あなたが泣き、苦しむ事は私の不幸になるのよ〉



俺を抱きしめた姉さんが続けた



〈だから、こんな私のために苦しまないでちょうだい。ね、ユノ。私に笑顔を見せて?〉



〈愛している〉
姉さんが言ったその一言は、俺に背徳の行為へと踏み切らせた



俺も、姉さんを愛していると思った
唯一、心から愛している存在だと気づいてしまったから…







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2017-05-07 Sun 21:47 | | # [内容変更]
義姉さん…………(´;ω;`)ウッ…
(´;ω;`)ウッ…
(´;ω;`)ウッ…
(´;ω;`)ウッ… 義姉さん………

めっちゃ可哀想やん(இдஇ; )(இдஇ; )(இдஇ; )

早くに両親亡くして父親の借金と赤ん坊の
ユノまで背負わされて自分の人生
全然楽しんでないし 全てはユノの為に
生きてきたんだね……(´;д;`)

しかもテミンも 可哀想やし(இдஇ; )
ユノの為に 自分の母親に捨てられて( TДT)( TДT)

なんか ユノの義姉さんが 不憫で不憫で……(இдஇ; )

ユノの核心に迫る回だったね。゚(゚´Д`゚)゚。

今日はちょっと早めにダブルババ達を午前と
午後に分けて 母の日のプレゼントを買いに
連れて行ってきたわ( ✧Д✧) カッ!!
お陰で ヘロヘロに疲れたわ( ✧Д✧) カッ!!
2017-05-07 Sun 21:57 | URL | くみちゃん #- [内容変更]
Re: りょ****様
こんにちは
コメントありがとうございます(*^_^*)

ユノがダークサイドに堕ちていった理由を持たせるため、そしてストーリー性を持たせるためという事情はありましたが、正直かなり勇気のいる内容でしたね( ノД`)

しかしながら、あくまでもフィクションであるという事と、今まで書いたことの無いような物語にしたくて思い切った次第です

私が働いてる場所は今繁忙期なんです
GWも間に一日だけ休みがあって、それもヘトヘトになった体を休めるために何もせずぼんやり過ごしました

りょ****さんは御家族とお出かけなさりましたか?この時期はどこに行っても大混雑で大変ですよね(>_<;)
2017-05-08 Mon 12:15 | URL | ゆんちゃすみ #- [内容変更]
Re: くみちゃん様
こんにちは
コメントありがとうございます(´∀`*)

お疲れ様でした!
えらいわァ!ちゃんと母の日のプレゼントを一緒に買いに行くなんて...ヾ(*>∀<)ノ゙
出来た嫁だわ( ✧Д✧) カッ!!( ✧Д✧) カッ!!
チャンミンに魂は抜かれてるけどね(笑)

すみをは昨日はお手伝いに行ったので気疲れしちゃいました。今日明日でゆっくり休もうと思ったら、同僚の骨折の連絡がきて( ノД`)
何とか頑張って乗り切りたいです

そうなのよ...すみをが思い描いていた、ユノの過去はこんな悲しいものだったんです
お話とはいえ、躊躇うような内容だったから変更しようかと随分迷ったんですが、テミンとの関係性を熟慮した結果思い切って書きました(∩´∀`)∩

今まで書いたことの無いような内容ですよね
私も小説家には程遠いですが、韓国ドラマくらいの内容に出来る様に頑張ります!
2017-05-08 Mon 12:23 | URL | ゆんちゃすみ #- [内容変更]
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