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渇欲 50
2017-04-02 Sun 21:00


このお話はフィクションです






点と線が
一つずつだけれど繋がった感じがした



時間というものは集中しているとあっという間に過ぎていき
気づくともう空が夕焼けの色に染まっていた



ミノも俺のそんな性格を知っているから、あえて声をかけずに居てくれたんだろう



自分のやるべき仕事をきっちりとやり終え、俺宛に〈調べたい場所があるから〉というメモを残して先に帰ったようだ



俺も今週号の最後の校正を済ませてから、いつもの時間に更新をセットしてパソコンの電源を落とした



検察から請求された大統領の逮捕状を裁判所がどう判断するか、来週にも答えが出るだろうけれど



現職の大統領という事で前例も無く、判断が難しいと推測される



地下鉄の中で開くスマホのニュースにも、俺の頭の中にある内容と同じような言葉が並ぶ



…チョン・ユンホは
この流れをどんな思いで見ているんだろうか



『この騒動についてのお前なりの見解が楽しみだ』



ウィスキーを飲みながらヤツはそんな事を言った
俺が書く物を見ているんだという、妙にくすぐったい気持ちになったけど…



現大統領をその場から引きずり下ろす事は
ヤツ自らが望んだ事なんだろうか?



それとも



そうする事がヤツにとって好都合というだけなんだろうか?



分からない…
点と線が一つずつ繋がって行く事で
俺はその答えを得る事は出来るのだろうか



今夜もいつもの様に【紫蘭】へと足を向ける
地下鉄の駅から地上へ出ると、週末の狎鴎亭はいつもの賑わいを見せていた



いつもより少しだけ早かっただろうか
これから飲みに向かう連中が楽しそうに会話していたり、夜の街で働く人達が職場へと急ぐ姿も見えた



俺がいつも【紫蘭】を見張っているビルの脇に辿り着く



そこの建物に入っている飲み屋もこれから賑わいを見せるんだろう
今はまだ、従業員が準備の為に忙しなく出入りしていた



《何だ、あんた。こんな所に座って邪魔なんだよ》



俺の事を訝しげに見ていたバイトの女の子が言ったんだろう
店の店長なのか、やたらと強面な男から声を掛けられた



「ダメなの?ここは通路でしょ。あんたの店の敷地には入ってないじゃん」



俺は事実を言っただけなのに、その男にいきなり掴みかかられた



《その言い草は何だよ?舐めてんのか?》



人間というのは、どこか虫の居所が悪い時がある
この男ももしかしたらそうだったのかもしれない



俺は普通に接したつもりだったのに…



「あんたみたいなおっさんなんか舐めたくなんかねーよ」



止せばいいのに
向こうがそんな言い方をすれば、こっちもそんな風に返してしまう



こういう所が俺のダメな所だって
よく分かってるんだけど…



次の言葉の代わりに
俺の顔へ強烈な右フックが飛んで来た



俺はあんまり喧嘩は得意じゃない
背だけは妙に高いけれど、横幅が無く絶対的にパワー不足だから



あっという間にこの男のサンドバッグと化した



反撃する事もなく、ただされるがままに殴られる
痛いとかそういうのは感じない
人間というものの落差を感じて、ただ虚しいだけだった



〈その辺りでやめといた方がいいよ?〉



突然聞いたことがある声が、その男の背後からかかった



《なんだ?テメーも殴られたいのか?》



喧嘩の仲裁に入るにはこれまた不適切な体型のLuciferが、蔑む様に男を見ていた



今日もまた革のジャケットに膝小僧が丸出しのダメージジーンズを履き、手にはブランド物のバッグを持っているLucifer



蒼い目は、屈強な男をも恐れない強い眼差しを見せる



〈悪い事は言わない。その人を離した方がいいよ〉



Luciferの飄々とした言い方が、目の前の屈強な男へ更に燃料投下した様で
俺を掴んだ手を離しパッと身を翻すと、彼の細い腕を掴んだ



〈あんたさ、この店に入ったばっかり?ここで商売やりたくないの?バカだね。

…その男は狎鴎亭の帝王のお気に入りだよ?〉



Luciferは掴まれた手を振り払い、たわんだ袖をぱんぱんと直してから続けた



〈僕はLucifer。その名前も聞いたことが無かったら、あんたよっぽど無知だね〉



狎鴎亭の帝王のお気に入りと聞いた瞬間
男の顔から文字通り血の気が引いたのが分かった
そしてLuciferと聞いて更に後ずさりする



〈この人をこんな目に合わせたって知られたらどうなるかなぁ?早く対策を講じた方がいいね〉



屈強な男はでかい図体をこれでもかというほど小さくして、自分の店へと逃げて行った



〈大丈夫?ほら〉



路地に倒れている俺に手を差し伸べるLucifer
金髪の髪を立ち上げて目一杯大人びた雰囲気にしているけれど、心配そうに小首を傾げる顔は幼かった



俺に二十歳と言っていたけれど、本当はもっと若いのかもしれない



「悪りぃな」



素直にその手を握り、身体を起こした



〈狎鴎亭も落ちたものだね。あんな品の無い人間が居るんだからさ〉



以前会ったあの地下室に向かっているのか、
Luciferはそう言いながら歩き出す



「俺は元々ここに縁がないから。どんな人間がこの場所に相応しいのか分かんないな」



俺はそう返しながら汚れてしまった服の埃を払い、定位置に座った



〈手当てしなきゃ。血が出てるよ〉



座った俺の腕を再び握って、俺を立たせるLucifer



「大丈夫だって。こんなのどうって事ないよ」



〈ダメだよ。すぐ済むから、ほら。それに紫蘭の開店時間まではあと小一時間あるよ〉



Luciferは俺が【紫蘭】を見張っている事を知っている



いつどうやって知ったのか?



そもそも俺がチョン・ユンホをターゲットとしている事にも何故気づいたのか?



Lucifer、と名乗って相手が怯んだ理由は何なのだろうか?



この男の話をもっと聞きたいと思い立ち、素直について行く事にした



地下室の鍵を開けるとLuciferは早速奥から箱を持ってきた
その箱には包帯や消毒液、傷薬などが乱雑に収まっていた



「用意周到だな…いいよ、自分でやる」



手当てしなきゃ、と言いつつも
消毒液をガーゼに浸す動作がぎこちなくて
見ていてまどろっこしい気分になり、ヤツの手から道具を奪い取った



〈自分でやるのと人にやってあげるのとは、ちょっと要領が違うね〉



さっき屈強な男に対して強い目線を投げていた彼とはまるで別人の様に、はにかんだ笑顔を見せる



「Luciferさぁ。昼間清潭洞のお屋敷にいる王子と、夜に薄暗いこの地下室にいる不良少年と。
どっちがお前の本当の姿なんだろうな」



二面性を持って生活しているのには、きっと理由があるんだろう
ボコられている俺を助け、手当てをしようと言った彼はどっちの彼なんだろうか



自分の傷を手当てしながら
目の前でこれも不器用そうな手つきで、コーラをコップに注いでいるLuciferに聞いてみる



……トングで掴んだ氷を不器用な手つきでグラスに入れていた、あいつの顔がふと浮かんだ



どことなくチョン・ユンホと似ている…何故かそんな風に感じた



〈どっちの僕も、僕じゃないのかもしれないね〉



コーラを俺に手渡してくれたLuciferは
蒼い人工的な瞳に哀しみの色を浮かべていた



チョン・ユンホが過去に負った哀しみ
Luciferにこんな目をさせる様になった哀しみ



その二つの哀しみがどれくらい深いものなのか
俺はまだ、知る由もなかった






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