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渇欲 49
2017-03-30 Thu 21:00


このお話はフィクションです






〈ヒョン、珍しくセーターなんか着ちゃってどうしたんですか?〉



ヤツと共に眠り夜明けを迎えた俺は
ヤツから渡された服を着て新聞社に到着した



先に出社して資料をまとめていたミノが、俺を見るなり目敏く指摘してくる



「んあ?!これな!!母さんが送って寄越したんだよ。なんか俺って雰囲気じゃないよな?」



取材の時にはその場その場に相応しい嘘がポンポン出てきて
案外役者に向いてるかもしれない…なんて思ったもんだが



どうも最近、嘘が下手になっている気がする



〈ヒョンはいつもパーカーですからね。違う人が入って来たのかと驚きましたよ〉



いつも通りの人懐っこい笑顔を見せながら、出来上がった記事を俺に渡すミノ



彼の純粋な目からも…俺は最近逃げている気がする



ミノに対して、なんとなく後ろめたさを感じているからだと分かっているけれど



…その本音からも逃げている俺がいるんだ



パソコンを立ち上げ、国内三大新聞のウェブ版に一通り目を通す
自分も“新聞”を作っているからこそ、毎日必ず目を通したい



タブレット端末で米国の株式市場をチェックしていた翌朝は、アナログに新聞紙を広げていたチョン・ユンホ
彼なりのこだわりなんだろうか…



今日の紙面もやはり騒がしいのは青瓦台の件で
大統領は毎日自分自身の汚職への疑惑を払拭するべく、国民へ向けた会見を開いている



「あれだけクリーンなイメージだった人なのにな。こうも印象が変わるもんかね」



颯爽としたイメージで、外交の場でも常に新しい風を吹き込んでいるようだった人が
そんな姿は今や見る影もなく、汗を拭きながら何かに追われている雰囲気しかなかった



テレビで朝のニュースをチェックしていたミノも
彼の爽やかな雰囲気に似合わない舌打ちをして、そんな大統領を憐れんだ



〈任期が一年残ってますけど、世論はその期間をどれだけ我慢出来ますかねぇ〉



そう言ってコーヒーを口に運び、リモコンをテレビに向けて電源を落とした



今週号はほぼ出来上がっているから、来週に向けての紙面作りに取り掛かった
大統領の件ももちろんだけれど、俺には追わなけれはならない大事な案件があるんだ



あれからずっと、あの男の持ち物であるという会員制高級クラブを張り込んでいる



ミノから教わったデジタルカメラを手元に忍ばせて、クラブに訪れる面々を撮影したけれど
道路を挟んでの距離が邪魔をして、あまり鮮明には撮れていなかった



ミノがいつも使っている望遠レンズであれば
きっと表情も読めるくらいに映るんだろうけれど…



「そういえばミノさ、前に紫蘭で張り込んでた時があったよな。
あの時って例のスムダンの会長とか検察庁長官とかしか写真撮ってない?」



ふと思い出した事を彼に尋ねる
ミノはパソコンの画面から顔を上げた



〈やだな、ヒョン。俺はこれでもチンシルウィークリー専属カメラマンですよ?
明確なターゲットだけでなく、前後に出入りしていた人物もちゃんと撮ってます〉



購読者数四桁にようやく手が届いたような弱小の新聞社だけれど



ミノが誇らしげに胸を張り、そんな風に言ってくれたのがすごく嬉しかった



「だよな、悪りぃ。お前の事を信用してないって訳じゃ無いんだ。むしろミノの方が俺よりも…」



この新聞社を大切にしてくれていると言いかけた言葉は、彼がかかってきた電話を取った事でそのまま飲み込んだ



ミノは電話で応対しながらも、パソコンを使ってさっき言った写真のデータを俺に送ってくれる



ギプスをしているのに手際が良い彼は
やっぱり俺よりも、よっぽどここの主筆に相応しい人間の様な気がする



そう思いながら送られてきたデータを開いた



この数週間続けた【紫蘭】での張り込みで、自分の目で見た人物の記憶
その記憶を手繰りながら、ミノが撮っていた人物を照らし合わせる



あの時は
あくまでもスムダン会長とアイドルの不倫が、彼等を追っている理由だった



俺が地道な聞き込みでデータを集め、ミノはひたすら自慢のカメラでターゲットを追っていて
そして、あのクラブに辿り着いたんだ



少し前の出来事なのに、すごく前の事の様に感じるのは



俺がチョン・ユンホというとてつもなく大きな存在に出会い、濃密な日々を送っていたからかもしれない



男としての憧れみたいな気持ちから始まった



最高級のベンツに相応しい威風堂々とした圧倒的存在感
国内最大級の企業を手中に収めた時も事もなげに
多くのカメラの前で淡々と語っていたあの男



その男の腕の中で与えられる快楽を貪り
そして共に夜明けを迎えた俺は…これからどうすればいいのだろうか?



ヤツを追い詰める事は
もしかしたら自分自身も追い詰める事になるのかもしれない



だけど



俺はこれでもジャーナリストの端くれだ
ミノが胸を張ってくれた様に、俺も自分の作る物に自信を持っているんだから…



チョン・ユンホは俺の“ターゲット”だ
それ以上でもそれ以下でもない
もう一度自分にそう言い聞かせ、写真の整理に取り掛かった



……あれ?
この男、どっかで……



ミノが撮っていた写真の中で、検察庁長官が写っている前後に数回写っている人物がいた
そして俺の記憶の引き出しの中でも、数回見た顔だった



確か最大野党のスンリ党党首と一緒に居る所を見た事がある



高価そうな革のコートを着ているが、それがこの男の落ち着きのない雰囲気に馴染んでいなくて
何か良いにおいのする方を常に探っている様な、狡猾そうな表情が印象的だった



そして
紫蘭前で見た引き出しの記憶以外でも、何かでこの男を見た気がした



その時、スマホに登録してある大手新聞紙の新着ニュースを知らせるアラームが鳴った



〈ムン大統領逮捕へ!検察当局、建国史上初の現職大統領への逮捕状請求〉



そのニュース速報を見て思い出した
この男はムン大統領の義理の弟のパク・ジニョンだ



パクが運営する財団法人が施設を作る際に土地の譲渡で問題を起こした
その際、義理の兄である大統領に泣きつき一喝された事を逆恨みしているって睨んでた人物だ



何かが、繋がった気がする



ミノが昼飯の事を話しているのがちっとも耳に入らないくらい、夢中で自分の推理を文章に起こしていた



大統領は巧妙に仕組まれたシナリオに乗せられて、その座を引き摺り下ろされようとしているんだと思う



そして
その背後には…



事実状の大統領府だと揶揄された【紫蘭】の主である、あの男がいる気がした



チョン・ユンホ…



俺を抱きしめながら眠りについたあの男の“真実”に



初めて共に目覚めた今日やっと
一歩だけ近づいた様な思いがした…







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