スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | ∧top | under∨
渇欲 23
2016-12-04 Sun 21:00


このお話はフィクションです






“蛇に睨まれた蛙”
そんな表現に自分の事を当てはめたくなかったけど



“狎鴎亭の帝王”が悠然と立ちはだかる前では
俺は蛙なんかよりも全然身動きが取れなかった



逃げなければ
一瞬、そう思ったけれど
この男への敗北を認めることになる行動だけは、決してとりたくなかった



情けなくも返す言葉は出てこない
それでも俺はチョン・ユンホの顔をジッと見返した



『今夜も爆弾酒を飲みに来たのか?売れない新聞を書いている割に羽振りが良いな、シム・チャンミン』



俺が何をしているのか
全てを知った上で言っていると思った
揶揄する様な言い方が、全てを物語っている



「そうなんだ。あいにくこの間の店は閉店してたんで、今夜は仕方ないから帰ろうと駅に向かってた所だよ」



ならば俺も同じ様にしれっと返そうと思った



『ほう、それはあいにくだったな。せっかくだ。俺の行きつけの店でよければ案内しよう。一杯どうだ?』



表情を変える事なく男は言う
こういう時のヤツの目は、まるでそこに何も映っていないかの様だ



その人形の様な黒い瞳が俺をじっと見ている



「せっかくだからな」



何が“せっかくだから”なのか分からないけれど
もう俺はこの男の領域に足を踏み入れてしまっているんだ



もう…後戻りは出来ない



チョン・ユンホはそんな俺を見てニヤッと笑う



『ついて来い』
そう言って革底の音を鳴らした



さっきまで道路の反対側から観察していた場所にこんな形で入ることになろうとは、これっぽっちも思っていなかった



【紫蘭 Hyacinth orchid】



クラブの入口続く敷き詰められた石の道
その石に響くヤツの革靴の音が、俺に対する警告音の様にも聞こえる



重厚な大理石で出来た入口には
黒いスーツに蝶ネクタイをした男が立っていた



〈いらっしゃいませ、チョン代表〉



下げていた頭を上げると
男はまるで美術館に飾られている彫刻が動き出した様な…そんな錯覚にとらわれるくらい美形だった



“美形の支配人は雇われ店長。オーナーは超大物”



あの掲示板に書かれていた事を思い出す
この背の高い男がその支配人なんだろう



『閉店後にすまんな。連れが酒を飲み損ねてしまったのでここに連れて来た』



〈珍しいお連れ様でございますね。すぐご用意致します〉



支配人らしき男は、俺に対してもきちんと一礼をして奥に消えていった



ヤツは案内もされずにそのまま歩いて行く
まあ自分の店だから、こんなものなのかも…
自分には何もかもが不釣り合いな雰囲気の中で、俺もヤツの後をついて行く



薄暗い照明の通路を進む
ヤツは突き当たりのドアを開けて中に入った



シックな色合いの調度品が置かれ、上品なランプが灯されている
この男の趣味なのだろうか?



チョン・ユンホはジャケットを脱ぎ、ビロード張りのソファに深く腰を下ろす



『ボケっと突っ立ってないで座れ』



チッ…
見慣れない物を興味本位できょろきょろ見てしまった自分を後悔する
ヤツから一番離れた場所に腰かけた



〈失礼します〉



ドアの外からかかった声にヤツが応える
さっきの男がボトルやグラス、アイスペールを運んできた



その後ろに続くウエイターらしき男が、フルーツなどつまみらしき物をテーブルに乗せていく



〈それでは、ごゆっくり〉



支配人らしき男とウエイターはテーブルに全て並べ終えると、丁寧にお辞儀をして部屋を後にした



『シム・チャンミン。酒は好きか?』



音楽も何もないこの部屋の静寂を破ったのは、ヤツのそんな言葉だった



「酒は大好きだよ。と言っても、こんな店じゃ飲んだ事は無いけどな」



脚を大きく投げ出して精一杯の虚勢を張りながらも素直に答えてしまう



『俺はあまり得意ではない。だがな、シム・チャンミン。良い酒と安酒の区別はつくんだ。高ければ良い酒、という訳でもない』



へぇ
酒に強そうに見えるけどな
人は見かけによらないってこういう事を言うんだ



チョン・ユンホは
得意ではないという酒のうんちくを並べながらグラスに氷を入れる



左利きなんだ…
トングを持つ指に自然と目がいく
すっと長い指はさぞや器用な動きをしそうに見えるが、氷を入れていく動作はぎこちない



完璧過ぎる見た目とは違った、意外な面を見た気がした



『我が国の飲酒は惜しむらくは品がない。ただ酔えれば良いと思って酒を飲む。爆弾酒が良い例だ。俺はこの店の支配人が日本で買い付けてくる質の良い酒が好きでな』



チョン・ユンホはそう言って
置かれていたボトルの酒をグラスに注いだ



日本語だろうか?
漢字が書かれたボトルは、決して高そうに見えないシンプルなデザインだ



『香りが良いんだ』



俺の前に腕を伸ばし、グラスを寄越した



ウィスキーか?
スモークされている様で、かつフルーティな香りが鼻をくすぐる
その香りに誘われ一口含む



ピリッとした鋭さの中で、ふわっと広がる芳醇な旨味
飲んだことのない味だった



「へぇ、美味いな、これ」



俺は
慣れない雰囲気に飲まれてしまったのか
それとも
チョン・ユンホの目に毒されてしまったのか



やたら素直に感想を言ってしまう



初めて知った味を、もっと知りたくて
グラスに注がれた酒を一気に飲み干した



「グェッ!!」



身体中に勢いよくアルコールが駆け巡るような感覚に、思わずむせてしまった



『馬鹿だな…ウィスキーのストレートを一気に飲むやつがあるか。全く品のない…』



ヤツは呆れたのか、大きく肩をすくめる
空いたグラスを手にすると再びウィスキーを少なめに注ぎ、今度は水で割って寄越した



『水割りで慣らせ。良い酒が勿体無い』



度数の強い酒を一気に飲み、その味が強烈だったせいで目が白黒していたんだろう
ヤツは俺を見て、あろう事か笑い出した



「っ!笑うなよ!失礼だな!!」



自分が恥ずかしくて、その照れから逃げるために酒を飲みつまみを食べることに集中する
並べられた料理はどれも食べたことのない物ばかりだけれど、びっくりするくらい美味しかった



美味い酒は、酔いも上品なんだろうか
身体がふわふわしている感じで、どこかの楽園に自分がいる様な錯覚に陥る



いつの間にか俺は
さっきヤツが深く腰かけた大きなソファーに座り



チョン・ユンホの腕の中で
その心地よい酔いを貪っていた



『シム・チャンミン…俺の手に堕ちて来い』



その楽園が



愛欲が渦巻く底なし沼への入口だった事に気づかないまま…






次回「渇欲24」は12/8(木)21時に更新致します

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト
別窓 | 渇欲 | コメント:6 | ∧top | under∨
<<縁結 第2章 ~至愛 番外篇 6~ | TVXQ 〜Vertigo〜 | 縁結 第2章 ~至愛 番外篇 5~>>
この記事のコメント
愛欲が渦巻く底なしの沼❢❢Σ>―(*´Д`*)→グサリ
きゃああ( ●≧艸≦)
きゃああ( ●≧艸≦)
愛欲が渦巻く底なしの沼に
チャンミン 堕ちちゃってーーΣ>―(*´Д`*)→グサリ

ユノのスマートな所作に
ガサツなチャンミンって感じで
いつもと雰囲気が反対な感じがして
ちょっと新鮮だわ(๑•̀ㅂ•́)و✧
チャンミン 高いお酒も
美味しい料理やおつまみも
ガバガバ食べてるし((´∀`))ケラケラ😁😁

そして美形なスヒョクキタ━(゚∀゚)━!!!
すみをが チャンミンの夜を歩く士の
イベントの時に
チャンミンより スヒョクが
カッコ良かった💕💕💕って
言ってたのを 思い出したわ( ✧Д✧) カッ!!( ✧Д✧) カッ!!

彼は元々モデルだったからチャンミンより
背が高くてイケメンだったよね♡(๑¯ ³¯๑)
でも あたしは チャンミン1筋だから(b´∀`)ネッ!

ガバガバ飲んだ美味しいお酒で
チャンミンが潰れますよーに……・・・!!∑(;゚Д゚)ハッ!
(ノ´∀`*)イヤイヤ そんな
チャンミンが
愛欲が渦巻く底なしの沼に
堕ちますようになんて
全然思ってないからぁぁぁぁぁ( ̄∀ ̄;)

すみを 輝く子達の一般チケット先行予約
来たわね( ✧Д✧) カッ!!( ✧Д✧) カッ!!
くみを 当選するように
祈ってるからね(๑•̀ㅂ•́)و✧
って あたし達ビギ○トだよね……川;゚;Д;゚;川
2016-12-04 Sun 21:27 | URL | くみちゃん #- [内容変更]
キャハ━━━━(#゚ロ゚#)━━━━ッ!!
堕ちてー‼
まっさかさ~まに堕ちてー‼
奈落の底には壮絶に男前のユノが両手を広げて待ってるからぁ(*´Д`*)ハァハァ・・
そして繰り広げられる愛欲の宴(*´Д`*)ハァハァ・・

スヒョクもキタ━━y=-(゚∀゚)・∵━━ン!!
スタイルもいいし、イケメンだし、ちょっとアンニュイな感じが【紫蘭 Hyacinth orchid】の美形オーナーにピッタリ♡
でもありをもチャンミンが1番よ( ー`дー´)キリッ
2016-12-04 Sun 21:48 | URL | Ali #- [内容変更]
No title
“良い酒と安酒の区別はつくんだ。高い酒が良い酒とは限らない”という台詞。人間の事を比喩してるのかな⁉️と思いました(^^;;

私のゆんちゃすみさんへのコメントっていっつも固いですよね〜ε-(´∀`; )
くみちゃんさんとアリさんが面白いから良いけど(≧∇≦)

チャンミン、帝王の前だと虚勢を張っているようで異常に素直ですね❤️
帝王もチャンミンの前だと素直さが垣間見える。

うわーぁぁぁ、これからどうなっていくんでしょうね‼️
何も映さない、無感情の帝王の瞳に光が灯ると良いですね(^^)

コメントを書いていて、何を書いたかハッキリと思い出せない事がたまにアリで、公開でf^_^;)
2016-12-04 Sun 22:06 | URL | りょんりょん #- [内容変更]
Re: くみちゃん様
オハヨーヽ(*´∀`)ノゴザイマス
コメントありがとうございます♡

ダメじゃない!酒を飲んで潰れて底なし沼に落ちてしまうのを期待するなんて( ´罒`*)✧
チャンミンのペンでしょ!!とか言いつつ、すみをが落としちゃうんだけどォヾ(〃^∇^)ノ
羨ましいわ( ✧Д✧) カッ!!ユノの底なし沼にハマるなんて!って私もハマってない?!随分前から...(。-∀-)

すみを、あのイベントの時はいい席では無かったけど、まずは当たったという事と、行けない友の分まで...という気持ちで気合いを入れて行ったのよね
それなのにいざ行ったらスヒョクさんのジェントルマン具合と声と猛烈にバランスのいいスタイルに釘付けだったわ( ✧Д✧) カッ!!チャンミン以外にあんなスタイルいい人を見たのは初めてだったわね〜(๑°ㅁ°๑)‼

ユビちゃんは...ゴリラの元カノだし...(-∀-`; )
って誰よ!ゴリラって!!!
2016-12-05 Mon 06:55 | URL | ゆんちゃすみ #- [内容変更]
Re: Ali様
おはようございます(*´▽`*)ノ))
コメントありがとうございます♡

こっちのチャミペンもチャンミンが底なし沼に落ちて行くのをワクワクしてるわよ(。-∀-)全く...
真っ逆さまに堕ちてDESIRE〜♪落ちたら早いよ水商売!!炎の様に燃えてDESIRE〜♪燃えたらしつこい三十代!!...あー懐かしい(o´艸`)

スヒョクと並んだチャンミンも何だかヨジャの様だったわ...だってあんなでかいチャンミンよりでかくて...ドラマのシーンの再現でチャンミンを抱きしめてたけど綺麗な絵面だったわー(≧∇≦*)ユビちゃんが間に挟まれてたけど、連れ去られる宇宙人状態だったわね(;´Д`)

いーなー
ユノが両手を広げて待ってる奈落の底なら余裕ですみを堕ちていくわ〜(*´艸`*)でも天使テ〇ンくんが助けてくれるわよ( ✧Д✧) カッ!!僕のATMだからァ〜って言いながら!
2016-12-05 Mon 07:06 | URL | ゆんちゃすみ #- [内容変更]
Re: りょんりょん様
おはようございます
コメントありがとうございます(*´∀`)

体調はいかがですか?

分かります(((^^;)
私も初めて師匠の所で初めてコメントを入れさせて頂いた頃、非公開で書かせて頂いていたのですが。お話を拝見した勢いでバーッとコメントを書いていて、どんな事を書いたのか明確に思い出せない時がありましたよ〜(o´艸`)

ユノが洗練されていそうでおぼつかない手元で氷を入れる所は、ユノペンの私の身悶える所なんです(笑)トングでうまく掴めず落としちゃいそうな(´>∀<`)ゝ
逆にチャンミンは、一時期ヒョンに対して反抗期めいた行動をとって、やけに虚勢を張ってた時があったので(あくまでも私の目線です)その頃のチャンミンをイメージして書いています(o^^o)

いい所見てますね!りょんりょんさん( ´罒`*)✧
おっしゃる通りです
そんな私は旦那を見る目が無かった事に例えられる様に、いい酒と安酒の区別がつきません(。-∀-)
2016-12-05 Mon 07:24 | URL | ゆんちゃすみ #- [内容変更]
∧top | under∨
コメントの投稿

管理者だけに閲覧
 

| HOME |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。