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渇欲 12
2016-11-01 Tue 21:00


このお話はフィクションです






まるで今ここで何も無かったかのように
仕立てのいい三揃いを、元通り着こなすチョン・ユンホ



ただ
いわゆるオールバック的に後ろに流し固めている髪の毛だけが前に垂れ下がり、少し乱れを見せていた



そんなところに男の憂いを見た俺は
あまりにも信じられない状況のせいでどうかしてしまったんだと思わざるをえない



何が起こったのか
分かっているのに分かりたくない自分が居る



俺の身体の中に己の欲望を吐き出したこの男は
なぜかもう一度俺の元に近づき、顎を掬ってジッと見つめてきた



さっき見たときは、無表情に見えたこの男の顔
今度は何か言いたげな…そんな風に見えた



俺も、最後の意地でヤツをジッと見返した
目を逸らしてしまう事は、この男への敗北を宣言する事だと思ったから



『いい目をしているな、シム・チャンミン。お前の“真実”が何なのか、答えが見つかったら俺にも教えてくれ』



切れ長の目で俺を見つめ不敵な笑みを浮かべる男は、顎に添えた親指で俺の唇を撫でた後くるっと背を向けた



何が起こったのか…その事実から逃げたかった俺も、俺に背を向けて去ろうとするチョン・ユンホに叫んだ



「おいっ!ちょっと待てよ!!これどーすんだっ!外せって」



全裸の上、両手両足を拘束されている俺
現実から目を背けたくても、自分の姿を見れば何が起こったのか一目瞭然だ



悪あがきするかの様に手足をばたつかせ、ガチャガチャと音を立てる



こんな状況下で生まれて初めて男に犯されたにもかかわらず、自分の吐き出した精が身体に飛び散っている様がひどくおぞましく思えて



この男に後ろを犯されながら、この男の手でそうされたのだという現実に吐きそうになった



俺のそうした醜態に軽く振り向いたものの
俺からはヤツの形のいい鼻梁と少しだけ厚めの下唇が見えただけだった



『初めて男に抱かれた割には元気がいいな…』



そう言い残して、チョン・ユンホは俺の前から姿を消した



ヤツと入れ替わりに入って来た背の高い男
年の頃は俺と同じ位だろうか?黙ったまま俺の手錠を外し、濡れたタオルを寄越した



《身体を拭け。服はそこだ。早くしろ》



用件だけ端的に言うと、さっさと居なくなる
何だよほんとに…少しも動じてないっていうか何だか無機質な言い方で…俺が全裸で何されてたか知ってるって事だよな、あの感じじゃ



手錠をされて赤くなっている手首をさすり、自分が吐き出した物を拭く
男にされてこんな風になるなんて…俺の人生に大きな汚点を残した感じだ



「ってぇ…」



ジーパンを履こうとして思わず固まる
ちくしょー
いきなり尻を掘るってどういうことだよ



下半身に残る痛みと、そんなことをされながらイってしまった自分の情けなさに思わず涙が出た



ついでに
自分と年も変わらなそうな男に言われるがままになっている自分にも腹が立つ



チョン・ユンホ…あいつゲイなのかな
変態だって書いてやると言った俺を嘲笑していたけど…



女しか経験のない…って俺はあくまでも普通の恋愛しか経験がないから、セックスだって女としかした事がないのに



あいつの逞しい上半身に包まれて、あいつの愛撫に身を善がらせていた自分が信じられない



痛む腰を抑えながら、扉を開けた



《自分が大事だと思うなら下手な事をしようと思うなよ》



若造のくせに…って俺が言えた義理じゃないけど
やたら偉そうに言う男に我慢も限界になった



「てめぇ!何だよっ下手な事って!こういう事か?!」



自分と同じくらいの背丈の男の胸倉を掴み、壁に押し付ける
自分の女っぽい身体つきが嫌でジムに通い、筋肉をつけた成果がこんな所で出た



《っく、離せ…ゴミのくせに…》



押し付けられながらも、俺の手を掴み返す男



「ゴミって何だっ!この野郎!年も変わらない男にゴミ呼ばわりされる筋合いはねーぞ!」



あークソッ!
自分は情けないし尻は痛いしこの男にゴミ扱いされるって、今日は今まで生きていた中で一番の厄日だ



〈セフナ、よすんだ。シムさん、失礼を申し上げました〉



そこに現れた男はそう言って俺の脇で頭を下げる



今度の男はチョン・ユンホと同じ年頃かそれより上だろうか?ヤツと同じ様にダークな色目のスーツをビシッと着ていかにもエリート然な見た目だった



セフンと呼ばれた男はしぶしぶ手を離す
俺にまだ何か言いたげにしつつも一歩下がり、男の後ろに控えた



〈シム・チャンミンさん。悪く思わないで下さい。貴方同様これくらいの年頃は血気盛んですからね〉



丁寧な物腰だけれど
何だろう…チョン・ユンホとはまたちょっと違う威圧感というか、凄味を感じた



〈しかし、申し訳ありませんが私もこれと同じ事を言わせて頂きます。今日の事をしっかり胸に留めて頂き、ご自分をどうか大事になさって下さい〉



セフンと呼ばれた男を顎で示し俺に言う
柔和そうに見える見た目とは裏腹な冷たい言い方だった



ミノを襲ったのも、事務所を荒らしたのも
この男の指示によるものだと直感した



そして最後に俺がヤツの家を探し出した事で
俺自身に決定的な脅しをかけたんだ



しかもこの男の指示に従い動いていそうな、セフンという男みたいな輩にやらせるのではなく
チョン・ユンホという頂点に立つ男自らの手によって…



〈シムさん。貴方の沈黙は了承したと見なします。身体がお辛いでしょう?車で送らせます〉



微笑みながらそう言った男は俺の鼻を変なにおいのするハンカチで覆った



そこで俺の意識は飛んだ
あの場所がどこだか見当もつかずに…



次に目覚めた時には
自分の住むマンションのゴミ捨て場に寝ていた



生意気そうな目つきで見ていたあのセフンっていうやつが俺をそう呼んだ様に、俺の姿はゴミそのものだった



酔って寝ている体を取らされ、身体からはアルコールのにおいまでしている
同じマンションに住む住人から“こんなになるまで飲んで…”という白い目で見られながら身体を起こす



アイツに言われた言葉を思い出した
悔しさにくちびるを噛みしめながら自分の部屋に戻った



『お前が知りたかった俺から受けた痛みを忘れるな』



負けるもんか
おまえが言うように…俺は忘れない



チョン・ユンホ
おまえの真実を必ず突き止めてやる






次回「渇欲13」は11/4(金)21時に更新致します

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