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渇欲 49
2017-03-30 Thu 21:00


このお話はフィクションです






〈ヒョン、珍しくセーターなんか着ちゃってどうしたんですか?〉



ヤツと共に眠り夜明けを迎えた俺は
ヤツから渡された服を着て新聞社に到着した



先に出社して資料をまとめていたミノが、俺を見るなり目敏く指摘してくる



「んあ?!これな!!母さんが送って寄越したんだよ。なんか俺って雰囲気じゃないよな?」



取材の時にはその場その場に相応しい嘘がポンポン出てきて
案外役者に向いてるかもしれない…なんて思ったもんだが



どうも最近、嘘が下手になっている気がする



〈ヒョンはいつもパーカーですからね。違う人が入って来たのかと驚きましたよ〉



いつも通りの人懐っこい笑顔を見せながら、出来上がった記事を俺に渡すミノ



彼の純粋な目からも…俺は最近逃げている気がする



ミノに対して、なんとなく後ろめたさを感じているからだと分かっているけれど



…その本音からも逃げている俺がいるんだ



パソコンを立ち上げ、国内三大新聞のウェブ版に一通り目を通す
自分も“新聞”を作っているからこそ、毎日必ず目を通したい



タブレット端末で米国の株式市場をチェックしていた翌朝は、アナログに新聞紙を広げていたチョン・ユンホ
彼なりのこだわりなんだろうか…



今日の紙面もやはり騒がしいのは青瓦台の件で
大統領は毎日自分自身の汚職への疑惑を払拭するべく、国民へ向けた会見を開いている



「あれだけクリーンなイメージだった人なのにな。こうも印象が変わるもんかね」



颯爽としたイメージで、外交の場でも常に新しい風を吹き込んでいるようだった人が
そんな姿は今や見る影もなく、汗を拭きながら何かに追われている雰囲気しかなかった



テレビで朝のニュースをチェックしていたミノも
彼の爽やかな雰囲気に似合わない舌打ちをして、そんな大統領を憐れんだ



〈任期が一年残ってますけど、世論はその期間をどれだけ我慢出来ますかねぇ〉



そう言ってコーヒーを口に運び、リモコンをテレビに向けて電源を落とした



今週号はほぼ出来上がっているから、来週に向けての紙面作りに取り掛かった
大統領の件ももちろんだけれど、俺には追わなけれはならない大事な案件があるんだ



あれからずっと、あの男の持ち物であるという会員制高級クラブを張り込んでいる



ミノから教わったデジタルカメラを手元に忍ばせて、クラブに訪れる面々を撮影したけれど
道路を挟んでの距離が邪魔をして、あまり鮮明には撮れていなかった



ミノがいつも使っている望遠レンズであれば
きっと表情も読めるくらいに映るんだろうけれど…



「そういえばミノさ、前に紫蘭で張り込んでた時があったよな。
あの時って例のスムダンの会長とか検察庁長官とかしか写真撮ってない?」



ふと思い出した事を彼に尋ねる
ミノはパソコンの画面から顔を上げた



〈やだな、ヒョン。俺はこれでもチンシルウィークリー専属カメラマンですよ?
明確なターゲットだけでなく、前後に出入りしていた人物もちゃんと撮ってます〉



購読者数四桁にようやく手が届いたような弱小の新聞社だけれど



ミノが誇らしげに胸を張り、そんな風に言ってくれたのがすごく嬉しかった



「だよな、悪りぃ。お前の事を信用してないって訳じゃ無いんだ。むしろミノの方が俺よりも…」



この新聞社を大切にしてくれていると言いかけた言葉は、彼がかかってきた電話を取った事でそのまま飲み込んだ



ミノは電話で応対しながらも、パソコンを使ってさっき言った写真のデータを俺に送ってくれる



ギプスをしているのに手際が良い彼は
やっぱり俺よりも、よっぽどここの主筆に相応しい人間の様な気がする



そう思いながら送られてきたデータを開いた



この数週間続けた【紫蘭】での張り込みで、自分の目で見た人物の記憶
その記憶を手繰りながら、ミノが撮っていた人物を照らし合わせる



あの時は
あくまでもスムダン会長とアイドルの不倫が、彼等を追っている理由だった



俺が地道な聞き込みでデータを集め、ミノはひたすら自慢のカメラでターゲットを追っていて
そして、あのクラブに辿り着いたんだ



少し前の出来事なのに、すごく前の事の様に感じるのは



俺がチョン・ユンホというとてつもなく大きな存在に出会い、濃密な日々を送っていたからかもしれない



男としての憧れみたいな気持ちから始まった



最高級のベンツに相応しい威風堂々とした圧倒的存在感
国内最大級の企業を手中に収めた時も事もなげに
多くのカメラの前で淡々と語っていたあの男



その男の腕の中で与えられる快楽を貪り
そして共に夜明けを迎えた俺は…これからどうすればいいのだろうか?



ヤツを追い詰める事は
もしかしたら自分自身も追い詰める事になるのかもしれない



だけど



俺はこれでもジャーナリストの端くれだ
ミノが胸を張ってくれた様に、俺も自分の作る物に自信を持っているんだから…



チョン・ユンホは俺の“ターゲット”だ
それ以上でもそれ以下でもない
もう一度自分にそう言い聞かせ、写真の整理に取り掛かった



……あれ?
この男、どっかで……



ミノが撮っていた写真の中で、検察庁長官が写っている前後に数回写っている人物がいた
そして俺の記憶の引き出しの中でも、数回見た顔だった



確か最大野党のスンリ党党首と一緒に居る所を見た事がある



高価そうな革のコートを着ているが、それがこの男の落ち着きのない雰囲気に馴染んでいなくて
何か良いにおいのする方を常に探っている様な、狡猾そうな表情が印象的だった



そして
紫蘭前で見た引き出しの記憶以外でも、何かでこの男を見た気がした



その時、スマホに登録してある大手新聞紙の新着ニュースを知らせるアラームが鳴った



〈ムン大統領逮捕へ!検察当局、建国史上初の現職大統領への逮捕状請求〉



そのニュース速報を見て思い出した
この男はムン大統領の義理の弟のパク・ジニョンだ



パクが運営する財団法人が施設を作る際に土地の譲渡で問題を起こした
その際、義理の兄である大統領に泣きつき一喝された事を逆恨みしているって睨んでた人物だ



何かが、繋がった気がする



ミノが昼飯の事を話しているのがちっとも耳に入らないくらい、夢中で自分の推理を文章に起こしていた



大統領は巧妙に仕組まれたシナリオに乗せられて、その座を引き摺り下ろされようとしているんだと思う



そして
その背後には…



事実状の大統領府だと揶揄された【紫蘭】の主である、あの男がいる気がした



チョン・ユンホ…



俺を抱きしめながら眠りについたあの男の“真実”に



初めて共に目覚めた今日やっと
一歩だけ近づいた様な思いがした…







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渇欲 48
2017-03-26 Sun 21:00


このお話はフィクションです






聞きなれない電子音がどこか遠くで鳴っている



何の音なのか分からないままその音が止む
そして、隣の温もりがスッと動いた



「う……ん……」



微睡から少しずつ覚醒してくる自分の頭の中で
見た事のない天井や辺りの雰囲気にクエスチョンマークが飛び交う



自分の身体に残る鈍痛に顔をしかめながら上体を起こした



「そっか…ここあいつん家だった…」



さっきの音はきっと、ヤツが仕掛けていた目覚まし時計の音で
その音に目を覚ましたチョン・ユンホが動いた事で、隣に居た俺も目が覚めたんだろう



「イッテェ…あのヤロウ、めちゃめちゃにヤりやがって」



妙な鈍痛がする腰を押さえながら、ベッドからゆっくりと這い出す



床に落ちて居た自分の着替え…といってもヤツが用意してくれたスウェットだけど、それをやっとの事で着てから部屋を出た



めちゃめちゃに…と言いながら、その悦楽に喘いだのは自分自身だ
自嘲気味に笑いながら廊下を歩く



『お前の分はないぞ』



良い匂いにつられる様にドアを開けると
テーブルで優雅に朝食を食べているあいつが居た



「開口一番がそれかよ…」



痛む腰を庇っているから何となくぎこちない歩き方になってしまう
コーヒーカップを口元に運びながらそんな俺を一瞥したチョン・ユンホが続けた



『料理は出来るか?冷蔵庫の中の物は好きに食べていい。自分でやればの話だ』



そういう自分はどうしたんだろう?
言われた通りにキッチンへと足を向け、これまたやたらデカい冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを取り出した



『俺の朝食はキーパーが作ってくれている。フレアの世話と一緒にな』



聞いてもいないのに俺の頭の中を読んだ様な事を言うチョン・ユンホ
俺ってそんなに分かりやすいんだろうか?



『…お前は俺の物だ…』



昨夜ヤツに言われたその言葉がパッと浮かび
慌てて頭を振った



「あんた不器用そうだし。料理する様には見えねーもんな」



ヤツへ精一杯の反撃をして、冷蔵庫から卵とハムのブロックを取り出す



うちの三倍はありそうな広いキッチンはキーパーの人がきちんと整理している様で
調理に使用するそれぞれが、初めて来た俺にもすぐに見つけられる様になっていた



カットボードでハムを切り卵を割り溶いていると、脇からフレアが黒い鼻を覗かせた



「うわっ、おまえ危ないぞ。デカいからキッチンに届いちゃうんだな」



俺の腰元辺りの高さがある調理台を覗き込むフレアから、カットボードと包丁を遠ざける



『卵が好きなんだ』



いわゆる三大紙の朝刊を読んでいるヤツがぽつりと言う
言われてみると確かに、彼の綺麗な茶色の瞳は俺が溶いている黄色い液体をジッと見つめていた



「じゃあフレアの分は味付けなしで先に作るから。なっ、待ってろよ」



飼い主よりも聞き分けが良いらしく、フレアは俺から離れて床に伏せた



「おー、いい子だな。俺の言う事ちゃんと聞いたよ」



床に伏せたまま今度は俺の事をジッと見上げている姿が可愛くて、ついテンションが上がった言い方をしてしまう



『俺からする匂いの相手が分かったんで、フレアも納得したのかもしれないな』



いつの間にか俺の背後に居たらしいヤツが流しに食器を下げながら言う
その距離が近くて、俺は思わず身構えた



『何だ。何かされると思ってるのか?』



俺の腰をぐっと引き寄せて耳元で囁くヤツ
自分の顔が紅潮するのがわかり、顔を伏せながら膝でヤツを押し返す



『フレアが見ている。何もしないから安心しろ』



フッと忍び笑いを見せながらキッチンを後にするヤツに、思わず包丁を振りかざしてみせた



それを振り下ろす勇気は当然ないけど…



味付けなしのスクランブルエッグを入れた皿と
ハムを入れブラックペッパーをふんだんに振りかけた、自分用のスクランブルエッグを持ってテーブルに移動する



コーヒーメーカーに出来ていたコーヒーと、余分にあったパンも勝手に貰った



白く長い尾を優雅に揺らしながら付いてくるフレアの前に皿を置いてやるが、なぜか食べない
フレアは俺の顔を見て何やら訴えかけている様だった



『彼の食事はスタンドの上に乗せてやってくれ。
背が高いから、地べたに置くと食べづらいんだ』



着替えを済ませてきたらしいヤツが、カフスを嵌めながらフレアの代弁をしてくれる
今日もまた、いつもの黒いトラウザーズをはいて対になったベストを着ていた



胸板が厚く肩幅の広いヤツは、本当にスーツが映える体型だと思う
さりげなく光るカフスは、前に見た時に黒い石がついていたっけ



「おお、そっか。ごめんな、フレア」



辺りをぐるっと見渡すと器に入った水が置かれている台があったので、その横へ皿を乗せてやる
するとフレアはすぐにやって来て、ようやく食べ始めた



『俺はもうすぐ迎えが来る。お前も新聞社へ行くんだろう?』



ちらっと腕時計の時間を見ながら言ったのへ、俺もポケットのスマホを見て返す



「飯食ったら行く。鍵は?フレアは平気なのか?」



普通の犬みたいにがつがつ食べるわけでもなく、のんびりと卵を食べているフレアを見る



『フレアは10時にキーパーの人が来た後、散歩へ連れて行ってもらうはずだ。
オートロックになっているからお前は好きな時間に出ればいい』



そう言いながら、ヤツは手に持った物を俺に寄越した



『同じ服を着ている言い訳も自分で考えられない奴だからな。これをやる、着ていけ』



ホテルで過ごした時の事をからかっているんだとわかり、出て行くヤツの背中目掛けてそれを投げつけた
あの日も確か俺は枕を投げていた気がするけど…



っていうか
あいつホントに何なんだよ…



俺の事これっぽっちも恐れていないんだろうな
この家を俺が家探しして、ネタを探す事だって想像出来るだろうに



妙に信用されてんのかな?
ほんと意味がわかんねー



ヤツ目掛けて投げつけた物をよく見ると、真新しいタートルネックのセーターだった
同じ服を着て朝帰りした状態でミノには会えないと、騒いだ事をきっちり覚えてたんだ



本当に変なヤツだ…全く



朝食を済ませて片付けた後、そのベージュ色のニットに着替えた
自分が昨夜着てきた服を持って、どこに置いたか忘れたリュックを探す



広いリビングに置かれている調度品は
きっと高い物だろうけれどすごくシンプルで



寝室もそうだったけれど、やっぱり人が生活をしている空間とは少し違う感じがした



好物の卵を食べて満足したらしく、大きな身体でゆったりとソファーに座ったフレアだけが



この家にある“生”だと感じた



寝室の入口に置かれているリュックを見つけ、そちらへと足を向ける



するとこの部屋の隅に、写真立てに入った写真が置かれているのが見えた



何の飾り気もないこの部屋
フレアだけが生きている様に感じたこの部屋



そこに置かれている写真立てもまた
思い出の一枚とは思えないほど、ひっそりと目立たない存在だった



何気なく手にして見ると、そこには



角帽を被る若き日のチョン・ユンホと
その横に座る年上の女性の姿が映っていた



この人がヤツのお姉さんなんだろうか?
大学の卒業式の様で、誇らしげに弟を見つめている様な構図に見える



ソファーに座っていた筈のフレアが側に来て、写真立てを持っている俺を見上げていた



「ごめん、戻すよ」



そう言って彼の頭を撫でた



自然と謝る言葉が出たのは
フレアの目が、その写真を持つ事を咎めている様に感じたからだ



再びソファーに座る彼の頭をもう一度撫でてから、リュックを背負う



専用のエレベーターに乗り込み、降下していく間
ヤツと出会ってからの一連の流れを思い返していた



この数週間で俺はあいつと急激に接近していた



そんなチョン・ユンホと初めて共に迎えた朝



この家の空間に漂う違和感と
ヤツの物になったという自分への違和感が
俺の胸の奥で奇妙な渦を生んでいた



その奇妙な渦を読み解く事が
チョン・ユンホという男の本当の姿を
知る手がかりになるのかもしれない



あの男の側に堕ちてゆく自分を



自分で止める術は既に無いという“真実”には
気づく事は無かった







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告知「ユノのお帰りなさいカウントダウン企画。」
2017-03-25 Sat 18:30



《企画名》

「ユノのお帰りなさいカウントダウン企画。」


《企画概要》

待ちに待ち侘びたユノの除隊日であります4月20日を迎えるにあたり。
ミンホ作品を取り扱う作家様から御協力を頂きまして「ユノのお帰りなさい」を盛大にお祝いしたいと思います。

読者様には4月20日まで、素敵なミンホ作品のアンソロジーに浸りながら一日、一日をカウトダウンして楽しんで頂きたいです。


《掲載方法》

御協力頂いたブロガー様は総勢20名となりました。
大勢の御参加に感謝申し上げます。

そしてその素敵なミンホ作品を一手に掲載させて頂くブログはこちらのバナーから飛べます。

↓↓↓

*Esperanza*チカ*presents

20170228114915d61.jpg



《掲載内容詳細》

ミンホに纏わる小説、イラスト、漫画、加工画でユノのお帰りなさいをお祝いします。

しかし、お帰りなさいの表現は作家様の自由とさせて頂いてますので「お帰りなさいにちなんだ物」に拘ってはおりません。

小説に関しましては、リアルでもパラレルでも何でも可です。


《企画始動日》

4月1日より掲載を開始致します。


《更新時間》

0時に更新されます。

※日によっては何度か更新時間が分かれる可能性もありますので、その点は御了承下さい。


《参加者様一覧》50音順

いつもココロに太陽を。(宮子様)  

*Esperanza*(チカ*)  

王様の耳はロバの耳(teftef様)  

同じあの日の夢(塩かるび様)  

With love…TVXQ(あゆ様)  

Wish upon a star☆(きらきらり☆様)  

cuteミンホ(motoko様)  

シアワセ色に染まる(NB様)  

Sweet Misery(tomato-mato様)  

SUGAR様

TIGER & CHOCOLATE(セキ様)  

TVXQは近くにありて想ふもの(マツリカ様)  

TVXQ~Vertigo~(ゆんちゃすみ様)  

ドルチェヴィータ(ひろみーな様。)  

なまらMEN恋(サスム様&ホランイ様)  

2月の虎(みく様)  

Fragaria grandiflora Ehrh(YUKA様)  

ミエナイチカラ(kazuki様)  

雪・月・花 ~From.Sweet Drops~(葉月様)  

ゆのまこのお部屋♪(ゆのまこ様)  

指先の記憶(まり様)  


※相互リンクはブログを運営されている方のみに限りました。
よってサイト様のURLは伏せさせて頂きます。





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ご報告および近況報告
2017-03-25 Sat 18:00




親愛なる皆様へ


こんにちは
当ブログ管理人のゆんちゃすみでございます


いつも変わらずのご厚情を賜り、心からの御礼を申し上げます


この度、とある企画への参加をさせて頂きました


つきましては、その告知文をこの後18時半に掲載させて頂きます


内容につきましては、参加者共通の定型文として企画者様より提供頂いた物となっております
予めご了承ください


皆様にもお話しさせて頂いた通り、愛犬の件で諸所多忙の日々を送っております


それ故この様な企画物には、今後参加をさせていただく事も無くなると思います


もしお時間がございましたら、ゆんちゃすみの最後の勇姿(そんな大それたものではない)を皆様にも見て頂ければ嬉しいです


どうぞよろしくお願い申し上げます


※私の作品は4/2(日)更新予定になります





さて
ここからは近況報告をさせて頂きますね
お手すきでしたらおつきあいくださいませ


愛犬との闘病生活が始まって、彼此二ヶ月が経ちました


おかげさまで愛犬も元気で、私自身も新しい一週間の流れにだいぶ慣れてきた所です


腎臓病の犬用に作られたフードがいたくお気に召したらしく…


健常犬用の倍の値段がする缶詰を何度もお代わりされて、私もお財布も嬉しい悲鳴をあげております(笑)


彼を迎えた時に「この犬種は食餌が厄介」と一番最初にブリーダーから言われたんです


その言葉通りに、彼の気が向かない時は何をあげても一切拒否という状況もしょっちゅうでした


フードやお肉をどれだけ無駄にしたか分かりません(泣)


腎不全という病気と彼が並行して患っているファンコニー症候群という腎臓の病気も
とにかく食餌をさせて栄養を摂らなければならないという事もあり


私が愛犬を腎不全と診断されて今後の治療についての話しを獣医からされた時、一番頭を抱えたのが食餌の件でしたから


腎臓病のフードを食べてくれた事に何よりホッとしたのは言うまでもありません


食餌療法の効果があった様で、先日した定期検査では腎臓の状態を表す数値が大幅に改善してくれて…気持ちも前向きになる事が出来ました


腎不全という病気は治る病気ではないので、その事は深く考えない様にしています


たくさんごはんを食べて、楽しそうに散歩して…


実際に元気な状態で目の前に居てくれる愛犬の姿が、一番の結果ですもんね


そして今日
彼は10歳の誕生日を迎える事が出来ました


来年の今日、再び一緒に誕生日を祝う事を
私と彼の次の目標としました





愛犬の事で頭がいっぱいになっているせいか集中力が欠除する事も増えてしまい、職場でも最近時々ミスをやらかしてしまっていて…


お話の内容にも時系列が前後してしまったり、誤字脱字や文法の誤りなども出てくるかと思いますが、平にご容赦頂ければ幸いです


不定期の更新にも関わらず、毎回私の元にお足を運んでくださっている皆様には
それだけで多くの励ましを頂いていると思っております


いつもいつも、本当にありがとうございます





最後になりますが…


東京では先日、例年より五日早くソメイヨシノの開花宣言がなされました


愛犬との散歩道にあるソメイヨシノも少しずつピンク色に染まりつつあり、もうすぐ桜の季節がやってくるんだと実感しています


東方神起の二人が居ない桜の季節は、今年でもう終わり…


そんな思いで膨らんだ蕾を愛でてきました


皆様におかれましても季節の変わり目ゆえ、どうぞご自愛くださいます様に


それでは、また…





ゆんちゃすみ







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渇欲 47
2017-03-23 Thu 21:00


このお話はフィクションです
R18要素を含みます
ご注意ください






流されてゆく…



この男によって作られる快楽の海へと



人が住む空間とは程遠いと思っていたこの無機質な部屋に、ヤツの身体が動くたびに響く水音



それは
快楽の海に揺られている俺の身体が奏でる淫靡な音色で



足を目一杯に伸ばし気持ちよく温まった身体は
この男の猛りによって、更に熱さを増していた



激しい抽挿を受ける自分の身体を支える様に
両手をシーツに這わせて力を込める俺の指が



無駄に大きなこのベッドに
愛欲の海へ打ち寄せる波に似た大きなシワを作っていた



「んっ……ん……」



自分の身体の中で、これでもかというほどの圧倒的な存在感が動くたびに
閉じている俺の口から漏れる声が妙に艶かしくて
思わず手で口を覆う



『何をしている…自分を隠すなんて、らしくない』



目を開けると
そんな俺を見下ろすチョン・ユンホと目が合った
その黒い目に浮かぶ欲情の色が、急に怖くなった



「そんなんじゃないっ!いいから…動けよっ」



自分でも何を言ってるのか分からなくて
でもヤツはそんな俺の眉間になぜか柔らかくキスをした



『そんな口が叩けない様にしてやるから覚悟しろ。
お前の身体が誰のものかしっかり記憶させるんだ』



ヤツの口元に浮かんだ笑みは
この世のものとは思えない妖しげな笑みで
その艶めいた唇が、俺の頭の中を掻き乱す



俺は誰のものか?



そう思った瞬間
チョン・ユンホに抱え上げられた俺は軽く身体を反転させられて、尻を突き出す様な体勢にさせられてしまう



『いいか?…お前は俺のものだ』



左手で俺の背中をベッドへと押し付けたヤツは
再び俺の身体へその灼熱の楔をねじ込んだ



「あーーっ!」



身体の中に入ったその充溢するものが俺の身体の最奥に達する
脈動するそれを、俺の体内の粘膜が蠢いて巻き込んでゆく



ヤツが言った言葉の通り
それはまるで、チョン・ユンホという男の事を記憶する様に絡め取っているみたいだった



『お前の中が熱い……』



背後のチョン・ユンホがふとそう言った
ベッドに押し付けられている俺は、そんなヤツの顔を見る事は出来なかったけれど



ヤツは大きく息をつくと、ゆっくり身体を揺らし始めた



激しい貫きとはまるで逆の緩やかな抽挿は、何故か愛の行為を彷彿とさせてしまう気がして
今しているそれが愛無き行為である事も、一瞬忘れてしまいそうになる



俺は恋人じゃないだろう?



何かへ反撥する思いが、押さえつけられている自分の身体を反射的に起こさせ
背後のチョン・ユンホへと腕を伸ばして、俺は自分から無理矢理口づけた



性欲を満たす関係だ
俺は、お前の“男妾”の筈だろう?



そんな思いで、ヤツの口腔内をめちゃめちゃにしてやる



「もっと動けよ…」



きっと今の俺は
快楽を貪ろうとして、色情にまみれた姿をしているだろう



そんな俺の稚拙なキスをやり直す様に
今度は逆にヤツが片手で俺の頭を掴んで、分厚い赤い舌を捻じ込んできた



激しいキスに合わせるように、後ろの繋がりでの動きも忙しい物となり
その動きからもたらされる官能の波が、俺の身体を粟立たせる



二人の熱っぽい息づかいが
無機質なこの部屋の温度を上げている気がした



事実
一面に大きくとられていて、恐らくはソウルの夜景を見渡す事が出来るであろう窓が曇り始めていた



前に回ってきたヤツの大きな手が俺の欲望を緩やかに扱く
後ろで激しく動くそれと重なり、ふたつの甘い刺激が俺の頭の中を真っ白にさせる



『お前は……俺のものだ……』



一際激しく動きながら再びそう囁いたヤツ



耳元に聞こえてくるチョン・ユンホの忙しない息づかいにも煽られて、ヤツの律動に合わせ自分の腰を揺らす



程なくして身体の奥へと迸る飛沫を感じた後
俺もチョン・ユンホの手に白濁を散らせて、そのままベッドに倒れ込んだ



俺は…チョン・ユンホのものなのか?
その答えを自分で導き出せるほどの余裕は皆無だった



精を吐き出した後の余韻を味わいながら息を整える
俺の背中へ重なってきたヤツの鼓動も少しずつ静かになってくる



頭を掴んでいた手で何故か俺の髪を梳く様にしていたヤツの動きがピタリと止まった



そっと振り返ると
チョン・ユンホは俺を背後から抱きしめる様な体勢のまま、静かな寝息を立て始めていた



「なんだよコレ…甘い恋人同士のセックスじゃねーんだぞ」



チョン・ユンホが呟いていた言葉や端はしに垣間見えた優しい動作が、俺を混乱させる



そして
俺を抱きしめた状態で、無防備な寝顔を見せるヤツにも動揺した



俺がヤツの裏の顔を探すため、家中を動き回ったりするってこれっぽっちも思ってないんだろうか



何も調べられないだろうという余裕なのか?
それとも、ヤツは俺を……



ウィスキーの酔いと
広い風呂で羽を伸ばした快適さと



そして



この男の規則正しい寝息が、快楽の余韻に浸る俺に丁度良い子守唄となってしまい



その疑問への答えが出ることは無かった







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渇欲 46
2017-03-19 Sun 21:00


このお話はフィクションです






『さて。俺はシャワーを浴びて休むとしよう』



酒に弱いと言っていたチョン・ユンホは
ウィスキーを一杯だけ嗜んだ後そう言った



「俺は…電車終わっちゃったしな。タクシー拾える所まで歩くか」



ヤツが注いでくれたウィスキーは俺を丁度良い程度に酔わせてくれて
その酔いを覚ましながら歩くのもいいって思った



『泊まっていけばいい』



ヤツはあっさりとそう言い、さっさとバスルームがあるらしい方向へ歩いて行ってしまう



「はっ?あんたんちに何で俺が」



そう言いつつも
ほろ酔い加減のままベッドにもぐり込む事が出来たら、さぞかし気持ちいいだろうって思ってしまう



『心配するな。ベッドはお前の家の物よりも大きい。お前が寝ても俺の邪魔にはならん』



見てみろ、という様にチョン・ユンホはすぐ近くにあった扉を開けた
暗がりを覗き込むとパッと明かりが点いて、ヤツが言うように馬鹿でかいベッドが見えた



シンプルな作りの部屋は、ただヤツが眠る為だけにあるという感じで
ふわふわした寝具があっても何故か冷たそうに感じてしまう



「部屋もデカいけど…何でこんなでかいベッドで寝てんのさ。さてはよっぽど寝相が悪いんだな」



したり顔で言う俺をよそに
ヤツはあっさり俺を無視して廊下の奥へと行ってしまった



「何だよ…その通りだから言い返せなかったんだな」



そう独りごちて、この無機質な部屋をぐるっと見回す



金持ちの部屋らしく、置かれている調度品は見るからに上等そうに見える
でも、やっぱりどこか寒々しいというか…人の住む空間と思えない違和感を感じた



馬鹿でかいベッドはヤツが言うように、背のデカいヤツと同じくらいデカい俺が並んで寝たとしても余裕そうに見える



っていうか



あいつとは何回か寝たけれど
それはいわゆる身体を重ねただけで、一緒に夜を明かした事は無かった



ことを終えたヤツはいつも俺を抱いた部屋を出て、どこか別の部屋で休んでいた様だったから



シャワーを浴びて出てきた所は見てるけれど
その時もすぐ黒いスーツに身を包み出て行ったっけ



性欲を満たすだけの関係…
俺の事をチョン・ユンホの愛人、男妾と言ったLuciferの言葉が浮かぶ



愛犬には俺を『知り合い』と紹介したヤツ
愛人…男妾…知り合い…俺は一体あいつの何なんだろう?



ベッドに腰掛けながらそんなことを考えていたけれど
これじゃまるっきり、夜明けを一緒に迎える特別な関係になりたいって思ってるみたいじゃないか!



ベッドサイドに置かれたデジタル時計を見る
今からでも遅くない
タクシー代は勿体ないけれど、しのごの言ってる場合じゃないぞ



やっぱり帰ろうと思い部屋を出ようとした時
逆に入ってこようとしたチョン・ユンホに思いきりぶつかってしまった



「うわっ!」



ヤツの厚い胸板に押されて無様に尻餅をつく



バスローブ姿のヤツは、開いている胸元からほんのりと湯気を上げていて
いつもは整髪剤でしっかりと後ろに流し固めている頭も、濡れたままの艶々した黒髪が顔にかかっている



見慣れないそんなヤツの姿に
自分にはない大人の男という雰囲気を感じてしまい、思わず見惚れてしまった



『トイレか?ここを出て左にあるぞ。
バスルームはその隣だ。着替えを出しておいてやった』



…何なんだよ
段取り良すぎだろ



もういいや…あれこれ考えず、この際この流れに乗ればいいだけだ



俺が考え過ぎてるだけなんだ、きっと…



“知り合い”の家に泊まらせて貰うだけだ
この心地の良い酔いの中で眠りにつき良い夢を見よう…



最近の俺は切り替えが早くなった気がする…



無駄に広すぎるパウダールームで服を脱ぎ、これまたデカい俺が寝そべる事も出来そうな広いバスルームに入った時にはもう
ちょっとした鼻歌まで出てしまう程になっていた



あの犬はお姉さんの犬だって言ってたっけ
以前チョン・ユンホの経歴や家族構成を調べた時は、ヤツに姉がいる事は全く出ていなかったけど



ヤツの年齢を考えれば姉もとうに結婚していたりすれば、別の生活を送っているのだから出ていなかったとしても不思議ではない



身体と頭を洗い終え、シンプルだけれど品のある石造りのバスタブに体を沈めた時にふと頭に浮かぶ



いつも自分の家では足を必死に折り曲げて入っているから
足が全部伸ばせる快適をちゃっかり満喫する俺



永遠の預りっ子と言われてた犬も、長い脚を器用にまとめてコンパクトに横になってた
彼の身体に合わせた大きいベッドがせっかくあるのに…犬はああやって寝る方がいいのかな



あれだけ大きい犬が狭苦しい俺の家にもし居たとしたら…さぞや大変だろうって思いちょっと笑ってしまった



身体が程よく温まり全身に心地いい酔いが回った状態で、足を伸ばし浴槽に浸かるという快適さを満喫しきった俺は



「やっぱり帰ろう」と思っていたことはとっくに忘れて
ヤツが用意してくれた着替えを素直に着て、さっきの寝室へと戻っていった



ドアを開けてそっと部屋に入ると
チョン・ユンホはバスローブのまま革張りのベッドボードにもたれかかり、タブレット端末を見ていた



『水が飲みたければ、サイドテーブルの下の冷蔵庫に入っている』



ヤツは俺の気配を察して端末から目を離さずに言う



言われた通り棚状になったサイドテーブルの下部を見てみると、そこは小さな冷蔵庫になっていてミネラルウォーターがたくさん入っていた



そこから一本取り出して、馬鹿でかいベッドの開いている方に腰をかけた



「金持ちは無駄にでかいのが好きなのかな」



聞こえるように独り言を言い、ヤツが横になっていても十分な余白があるベッドに手を広げてみる



『俺だけじゃなく、フレアのために大きいベッドにしたんだ』



相変わらず端末を見たまま言うチョン・ユンホ
何を見ているのか、ヤツの黒い瞳が上下に動いている



ミネラルウォーターを飲みながら、俺もヤツと同じようにベッドボードにもたれかかる



「でもさ、あいつリビングのベッドで寝てたじゃん。あんたフラれたんだな」



そんな風に想像すると何だか可笑しくて、同情するようにヤツの横顔を見てやった



『今までは彼もここで寝ていたんだ。
最近、俺から違う匂いを感じ取ったらしくてな。それ以来どうも敬遠されているようだ』



そう言ったヤツは、不意に手を伸ばし俺をグッと引き寄せた



『お前の匂いがするんだろう…きっと』



やめろ、と思っても
それは一瞬だけで言葉にもならず、俺はあっという間に唇を塞がれてしまう



どうして俺は…この男に流されているのだろう…



傍に放り出された端末の画面には、刻一刻と変移する米国の株式相場が映し出されていたけれど



それを見ていたチョン・ユンホの目にはもう
ヤツのキスに顔を火照らせる俺が映し出されていた



このまま俺はどこに向かうのだろうか



チョン・ユンホの家で
無表情なヤツに相応しい無機質なこの部屋で



愛人か男妾か知り合いか分からない自分を持て余しながら



俺はこの夜も、ヤツとの愛欲に溺れていった…







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渇欲 45
2017-03-16 Thu 21:00


このお話はフィクションです






考え事をしながら終電に揺られていた俺は
何故か、自宅の最寄り駅ではない駅で降りていた



無意識のまま歩いて行った場所には
以前調べたヤツのマンションがそびえ立っている



「何やってんだ…俺は…」



自分の意識と
それによって動いたらしい自分の足に
言いようのない腹立たしさを感じ、肩を落とす



この場所を調べ上げた時…俺は後ろから襲われ気を失った
次に目を覚ました時、目の前にいたのがチョン・ユンホだった



そしてヤツに抱かれて、無様にも欲を吐き出したんだったな…



さっき見たLuciferの悲哀の色を含んだ目がチョン・ユンホのそれと重なったせいで
やたらとヤツの事を考えていたから、こんなことになったんだ



自分の情けなさにイラついて足元にあった石を思い切り蹴飛ばす
その石は、大きな音を響かせて縁石にぶつかった



深夜0時をとっくに過ぎて、辺りは人影も無くひっそりとしている
蹴飛ばした石をいまいましく眺めながら、来た道を引き返そうとした



車通りも少なくなっていた道路を渡りかけたその時、眩しいヘッドライトに照らされた



『何だ。昨日の仕返しをしに来たのか?』



マンションのエントランスに横付けされた黒いメルセデスAMG
その車から降り立った黒尽くめの男は俺を見るなりそう言った



「っ…違うって…」



そうじゃない、という理由をこの男に言えるはずもなく、俺は返す声すら小さくなってしまう



『俺が帰って来るのを見計らっていた様なタイミングだな』



秘書から渡されたアタッシュケースを受け取ったチョン・ユンホが苦笑しつつ
その秘書が俺を連れて行こうとして腕を掴むのを手で制した



『構わん。ジェウン、帰っていい』



ヤツはそう言ってから、俺について来いと言わんばかりに顎で合図を送る
そして…合図された俺もいつもの様にヤツについて行ってしまう



チョン・ユンホに会うと何で俺はこうなんだろう



こいつは実は毒蛇の化身とかで、俺はその毒にやられてんのかも知れない…
こいつは実は高名な催眠術師で、俺は言う事を聞く術でもかけられてんのかも知れない…



頑丈そうな扉のロックを解除して、そのままエレベーターに乗りこむヤツの大きな背中を見ながら
どう考えても絶対にあり得ない様な理由を考えてみる



無言のままの二人を乗せたエレベーターは目的の階に到着したらしい



…っていうか、このエレベーターも専用かよ
普通のエレベーターにある、停まる階を押すボタンが付いていなくて



エレベーターのドアが開くと、案の定ひらけたホールにはたった一つのドアが有るだけだった
何もかもにいちいち目を丸くして驚く自分に、ますます腹が立つ



『面白いか?そんなにキョロキョロして』



ずっと前を向いていたくせに
そんな俺の事をちゃんと観察しているこの男にもムカついた



「そんなんじゃねーよ」



そう言い返すのがやっとだった俺
強がっても、意気がっても、この男には何も通用しないって最近ようやくわかった



生きてきた人生の長さだけじゃなくて
チョン・ユンホという男の技量に圧倒されてる
俺なんか…ヤツの足元にも及ばない



『茶ぐらい飲ませてやる。入れ』



玄関に付いているセキュリティロックもドラマや映画で見る様なハイテクの物で
この前うちに来た時は余りのアナログさにさぞかし驚いただろうと思った



行き先が一つしかないエレベーターにもフロアに一つしか玄関がない事にも驚いたけれど
ヤツの家に入るのは初めてだから、驚きだけではない緊張感も湧き出てくる



「おじゃまします」



そしてこんな相手の家に入る時もそんな風に言ってしまう自分
…挨拶をきちんとしなさいって俺を躾けた親のせいだ



「広っ!デカっ!」



書く事を仕事にしているとは思えない様な
表現力にセンスのかけらも無い自分の発言



俺ん家の寝室くらいありそうな玄関の広さにも目を白黒させられて
リビングらしき部屋に入った途端ゆっくり歩み寄って来たデカイ犬にも唖然としちゃって



単純すぎる言葉しか出てこなかったんだ



『犬は平気か聞いてやれば良かったな。
フレア、俺の知り合いだ。挨拶はほどほどにして寝ていいぞ』



…知り合い、か



Luciferに言われた“男妾”と“愛人”に比べると
それが一気に遠くなった存在と感じてしまう自分は何なのだろう



飼い主に言われた通り、軽く鼻先を寄せて俺の手に触れた後
“挨拶は済んだ” とばかりにくるりと振り返り、元にいた場所へ優雅に戻って行く犬



「デカイ犬だな。やたら優雅だし…あんたみたいな金持ちに好かれそうな犬だな」



無駄に気高い犬の見た目が、目の前の男に被る気がして…ちょっと嫌味っぽく言ってみる



俺の家に来た時『座る所が無い』とアホみたいな事を言ってたけれど
確かにこの部屋には、来客者である俺が何処に座るか明確に分かるどデカいソファーがある



俺は何か言われる前にそこへ
どかっと座ってやった



『彼は姉の犬だ』



上着を脱ぎ、ネクタイを緩めながらヤツが答える
大きな体を持て余す様に丸くして横になった犬に視線を向ける



「ふーん、どっか行ってるんだ。預りっ子か…可哀想に 」



こんな冷たそうなヤツに預けられた犬に同情心が湧く
この時間に帰ってくるほど忙しいから、散歩だって連れて行って貰えないだろう



『永遠の預りっ子っだ。姉の宝物だからな、俺なりに大切にしてるぞ』



俺が考えている事を見抜いている様にそう言ったチョン・ユンホ
何処か遠いところを見つめている様な顔と『永遠』という言葉が気になった



茶ぐらい出すと言っていたヤツの手元には、ウィスキーとグラスが用意されている



『少しつき合え』



俺の隣に腰を下ろし、グラスへウィスキーを注ぐ
予め入れられていた氷がカランと音を立てた



『今週号はもう出来上がったのか?
昨日は忙しそうに記事を書いていたが、俺の家を見にくるほど暇だったんだな』



いちいちカンに触る言い方だ
だけど…ここに来てしまった理由は絶対に言えないから、言い返す言葉も咄嗟に出てこなくて



「まあ、ぼちぼち出来上がってるよ。
今週は青瓦台が騒がしくて、記事の材料にも事欠かなかったもんでね」



上等なウィスキーは以前飲ませてもらっていたけど
今日もその品の良いモルトの香りだけで酔いそうになり、そのおかげで気分も上がりようやく答えを返せた



『この騒動についてのお前なりの見解が楽しみだ』



そんな事を言われると、なんか調子狂うな…
グラスの中に揺れる琥珀色を一気にあおる



『またそんな飲み方をする…前にも言っただろう。
お前はもう少し、全体的に余裕を持った方がいいぞ』



酒が苦手だって言ってたっけ…
大きなソファーにゆったりと腰掛けてウィスキーが入ったグラスを少しずつ口元に運ぶヤツは、確かに余裕がありそうに見える



「次からはそうする」



そう言って、空になったグラスをヤツに押しやる
チョン・ユンホは一瞬きょとんとした顔になった



『妙に素直だな』



そう言って空いたグラスへ新しく酒を注いでくれた



初めての場所なのに
緊張してるのに



ヤツの口調が心地よくて俺を素直にさせている



電車がなくなっている事も忘れて寛いでいる自分はもしかしたら
ヤツに言われた様な余裕を持てたんだろうか…



寝姿までも優雅な犬の寝顔を見つめながら
今度はヤツと同じ様にゆっくりとグラスに口をつけていった







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華筏 第2章 ~星鏡 最終話~
2017-03-13 Mon 18:00


このお話はフィクションです






あれから三月が過ぎた



人間というのは忙しくしていると
やたらと月日が経つのが早く感じる様で



気づけば一日が終わり
気づけば一週間が過ぎ去り
気づけば一ヶ月が経っていた



久しぶりの大作が仕上がった僕は何かと慌ただしい毎日だったから
きっと、いつも以上にそう感じたのだと思う



多分ユノも…
父の元に移ってから新しい仕事を覚えたりで
こんな風にあっという間に一日が終わっていたのかもしれない



僕の新作のお披露目は
父が亡き母と僕への償いという名目で建てた美術館で行われることが決まり
館長を務める次姉が、その段取りを仕切っていた



僕はというと
忙しい合間をみては“僕の家” へと帰っていた



母を亡くした時に「これからはずっと一人で生きていくんだ」と思ったけれど
僕の家には、僕の “家族” が待っていてくれるから自然と足が向くようになって



ユノの先輩であるヒチョルさんに頼んで作ってもらい、手土産で持って帰ったティラミス



それを気に入ってくれた継母は、僕の顔を見ると
〈そろそろ食べたいと思っていた所よ〉と出迎えてくれる



優しい言い方ではなかったけれど



〈ゆっくりしていきなさい。あなたが好きだというワインを用意させてあるわ〉



そう言いながら車椅子で戻って行く継母にも、僕は心から感謝していた



ユノはユノで何か新しく取り掛かっている事でもあるらしく
時折、終電に間に合わず運転手付きの父の車で帰って来ていた



『会社に泊まります、って断ったんだけど。
私がチャンミンに叱られるから、と言って俺を車に乗せた後ご自分はタクシーでお帰りになるんだよ』



出迎える僕へ、そう言って微笑むユノ



僕とユノとの関係を僕の知らないところで認めて、以来ずっと見守ってくれている父
母に会いに来なかった父を恨んだ事もあったけれど、それももう随分前の事みたいだ



父と長姉、ユノが居る会社だけは行かない様にしていた
父が母を犠牲にして守り抜いたその会社は、僕が働くことも無いし



変な意識だけれど、男の戦場という場所に
その戦いに参加しない者が足を踏み入れてはならないという気持ちがあった



亡き母も、父が会社という戦場で必死で戦っている事を知っていたからこそ
自らの存在を消す様に、この地を去ったんだと思うから



僕も
父に見込まれてユノが一人で戦っている所には行かないって決めたんだ



母と同じように
ユノを支えて、静かに待つ事を選んだ



最近、継母も長姉も
僕が行くと何かを話すわけでもなくても、自室に引き揚げずに居間に居てくれる



父と継母と二人の姉
唯一血の繋がりのない継母とも、二人の姉を通してもっと違う何かで繋がれる気がしていた



僕は、変わった



こんな風に前向きになれるタイプでは決してなかったのに



〈そろそろあの湖の氷も溶けた頃かしら?〉



この日も
いつもの様にヒチョルさんが作ってくれたティラミスを食べながら、静かに本を読んでいた継母が呟く



「あ…そろそろでしょうね。
今年は絵が完成して忙しい時が重なって、凍ってからは足が遠のいていました」



僕が父から与えられていた郊外の家は、もともと別荘にして使っていたらしいから
継母も星鏡の湖を知っているんだろう



〈昔ね。お転婆だったこの人は、あそこで舟から落ちて大騒ぎしたんですよ〉


〈お母様っ、そんな昔の事を…〉



同じように本を読んでいた長姉が驚いて顔を上げる



ユノは仕事が片付かない様で土曜日の今日も朝から出社していたけれど、長姉は遊びに来た僕を玄関で出迎えてくれた



どちらかというと
父に反発して会社には入らずに自分の好きな様に生きていた次姉の方が、そのエピソードには相応しい気がする



〈あそこの湖の奥にね、この人達が秘密基地にしていた場所があるんですよ。
…きっと、あなたにも忘れる事が出来ない場所になるでしょう〉



継母が話す事が、僕にはちんぷんかんぷんで
それを聞いていた長姉は慌てて継母を制した



〈お母様、チョンピョンの別荘と勘違いなさってるわ。
さ、そろそろお薬の時間ですからお部屋に戻りましょう〉



そう言って引き揚げた二人を見送ってから、僕も家を後にした



明日にでも、湖を見に行こう
溶けていれば夜もう一度見に行って、久しぶりの星鏡本来の姿を見たいと思った






夜遅く帰って来たユノ
疲れていても、やっぱり僕には甘くて
自分がお風呂に入る前なのに、濡れている僕の髪を乾かしている



「ユノ、明日は休めるんですか?今日ね、家で星鏡の湖の話が出て。
そろそろ溶けただろうから見に行こうと思っているんです」



『えっ?あっ、どうだろうな。今年は寒いからまだじゃないか?じゃ、俺も風呂入ってくるわ』



ユノはなぜかしどろもどろにそう言うと、ドライヤーを放り出したままさっさとバスルームに行ってしまった



???
ドライヤーを持って行けばいいのに…自分でバスルームから持って来たのにね
ユノはたまに慌てん坊の癖が出る時があるから…



そんな所も、僕は好きなんだけれど



土曜の夜は夜更かししてもいい
日曜の朝は僕らの元にゆっくり訪れてくれるから
そう思って二人でベッドに入り、久しぶりにユノの厚い胸に抱かれて目覚めたはずの僕は



朝、起きたら一人ぼっちだった



急な仕事でも入っちゃったのかもしれない…
そう思い直し、つきかけた溜め息を我慢して服を着替えた



朝食を簡単に済ませると、僕は薄手のコートを羽織り星鏡へと足を向ける
湖の氷が溶けたのかも気になったけれど、昨日継母が話していた秘密基地を探してみたかったんだ



暖かくなってもまだ朝は冷え込んでいて
コートを羽織ってきて良かった…と思いながら森の中を進んで行く



「うわっ、眩しい……」



数カ月ぶりに僕を出迎えてくれた星鏡は
冬の間硬い氷に閉ざされていた分を取り戻すかの様に、その水面目一杯に朝日を受けて輝いていた



周辺の樹々もまた春を待ち望んでいた様に
それぞれの春の色を蕾へ付け始めている



僕の次の作品には朝日を受けて眩いばかりの美しさを見せる、この星鏡自身の姿を描こう…そう思った



美しく光り輝く湖を愛でながら、辺りを見渡して昨日聞いた秘密基地の手がかりを探る
僕が来た道の反対側に小径があることに気がついた



今まで気づかなかったのはきっと、しばらく誰も通らなかったからじゃないのかな



僕が気づいたのは、最近ここに人が出入りしているから周囲が踏み固められて
道の形状がはっきりしたからだろう



細い小径を歩いてゆく
“秘密基地” と聞いていたからか、子供の頃に戻った様に何だかわくわくしていた



道を抜けるとそこには
古めかしくもきれいに手入れされている様子の小さな建物があった



金色のドアノブがついた扉に恐る恐る手をかける



『待ってたよ。チャンミン』



むせ返る様な花の匂いの向こう側には



朝日に照らされていた星鏡の湖と同じ様に
キラキラと輝くステンドグラスに照らされるユノがいた



「ユノ…どうして?ここは何?休みだったのにどうして黙って居なくなったの?」



やっぱりワガママが出てしまう僕は、矢継ぎ早に質問責めにしてしまう
せっかくの日曜、二人で一緒に目覚めたかったから…



『ごめんな。予想外の展開だったもんで、俺も慌てちゃって』



理由を話してくれているんだろうけれど
その内容も全然飲み込めなくて



ステンドグラスの光を受けて立っているユノに気を取られていて気づかなかったけど
側に近づいて初めて、ユノの奥に掛かったキリストの姿が見えたんだ



「ここ…教会だったんだ」



古めいた椅子は、よく見れば確かに教会によくある様な長椅子で
そして、僕が気づかず歩いて来た通路には匂い立つ白百合が飾られていた



『チャンミンの新しい作品が仕上がった時に、言うと決めていた事がある。
そのためにお父さんに許可を得て、ここに通って手入れをしていたんだよ』



きれいすぎるワイシャツは、ここに来た後すぐ作業着に着替えていたからだと言ったユノ
ここで作業をしてから会社に行って仕事をしていたせいで、一日中働いてる様になっていたらしい



「んもぅ…。なぜ僕に話してくれなかったんですか?ユノはいつもそうやって…」



文句を言う口は、彼の唇に止められてしまう
ユノはズルい。いつもこうやって僕の文句を聞かないんだ



『チャンミナ。叱言は後からゆっくり聞くから。
俺の晴れの日なんだからさ、ちゃんと言わせて?』



ユノはそう言って僕の両手を自分の両手で抱えた



『シム・チャンミンさん。
あなたの絵に色をつけて来た俺に…

これからは、あなたの人生へと色をつけさせてください。

俺と…永遠を誓ってください』



「ユノ…?何…どうして…僕は…」



『ああっ!もう!!俺ってば柄にもなくカッコつけるから…

チャンミナ、俺と結婚してください!って事が言いたかったんだってば!』



うふふ
カッコつけてなくても、あなたは最上級に素敵なのにね
そんな自然体のあなたも大好き







一人ぼっちでソウルへと帰ってきた僕を見守って来てくれた星鏡



今、その湖は僕を
両手を広げて受け止めてくれる



夢を見ているんじゃない
僕を包み込んでくれるこの人の温かさが、それを教えてくれた



永遠を、誓います
人生に、たくさんの色をつけていきましょう



ユノ…



これからもずっと一緒に
四季の色を、共に愛でながら生きていこうね






星鏡 −完−





最後までご覧下さりありがとうございました



Ali様

貴女が好きだと言ってくれた華筏の儚い美貌の人を、幸せに書く事が出来たでしょうか?

本来ならばもっと時間をかけてゆっくり仕上げたかったのですが、途中休止を挟んだ挙句
再開後は愛犬の件で私の余裕が無くなってしまったので、急展開になってしまったと思います

いずれまた、機会があれば書ききれなかった二人の幸せを書きたいと思います

この作品を私の今までの、精一杯の感謝として受け取って頂ければ幸いです

ゆんちゃすみ






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渇欲 44
2017-03-12 Sun 21:00


このお話はフィクションです






ドアに片手を添えて俺を見上げる男
両耳に数え切れないほどのピアスが光る



それは耳朶だけでなく、痛そうだから自分では絶対にやりたくない様な耳輪の方にまで付けられていた



ヴィンテージ物と思われる革のジャケットを着て、ダメージジーンズとは言えないほどに膝小僧が大きく覗くジーパンを履く彼



この間初めて会った時は
上品なワイン色のスーツにシルクのシャツを着て、まるで王子様の様だったLucifer



今、目の前に居る人間とは
およそ同一人には見えなかった



〈今度はちゃんと話をする気になったの?…まぁ、どうでもいいけどさ。入って〉



前髪を立ち上げたヘアスタイルで、この間よりぐんと大人びた雰囲気のLuciferはキッとした目で俺を見た



「先日は…すみませんでした」



年下にへり下るのはイヤだとか、そういう幼稚な事を言ってはいけない
すぐカッとする子供染みた性格を直さなきゃ、本当の大人にはなれない



〈ふーん。何もないけど、その辺に座ってよ〉



Luciferはそう言うと
何台もパソコンが置かれているデスクの前にどかっと座り、足を投げ出した



この寒いのにサンダル?サンダルに毛皮?変な靴履いてるな…



この靴がイタリアの有名なブランド物で今流行ってるデザインだっていうことは、俺なんかが知る訳もなくて



Luciferは俺を気にする事なく、目の前のパソコンに目を向ける
もう一台のパソコンにはやりかけのゲーム画面が映し出されていた



もう一方に置かれている二台のモニター画面には
…株価だろうか?グラフが時折動きながら表記されている



ボロっちい雑居ビルの地下室で、この男は一体何をしているんだろう?
昼間の彼とはまるで別人格の彼を見ているような気がした



〈それで、シムさんはさぁー。あいつをどれくらい調べてんの?
テソンの代表でクラブ【紫蘭】の事実上のオーナーですよ、とか言わないよねぇ〉



……喋り方もカンに触るけど、ここもぐっと我慢しよう



「俺が追ってるのは、この前死んだアイドルの本当の死の理由です。
その裏にある事実を追いたいと思ってます」



〈あの子ね。僕は好みじゃないなぁ~。
僕はね、バービー人形みたいなスタイルの子で、美人で性格は優しい子がいいな〉



……いるかよ、そんな女



「彼女は自殺ではないと思っています。
警察も大手のマスコミも、裏にいる大きな何かに怯えて自殺という事実を作り上げたと思ってます」



〈それでシムさんは黒幕の事を調べようとして、手っ取り早くベッドに潜り込んだの?〉



!!!
コイツ……



「何をおっしゃっているのか分かりません」



怒りがこみ上げるのを自分の腿を抓って耐える
俺が自分から潜り込んだことなんか一度もないっつーの



〈狎鴎亭の帝王に新しい愛人が出来たってもっぱらの評判だけどなぁ。
新しい男妾に随分とご執心だってね〉



「男妾って!愛人って何なんですか?!」



我慢してるから、殴りかかることだけは耐えた
でも、そんな事実無根の事を言われるのは耐えられない



……いや、まてよ
愛人?男妾?ホテルで会って寝てるだけの関係って、まさにそういう事なんじゃないか…



「Luciferさん、何をどうご存知なのか分かりませんけど。
俺はあの人の愛人だなんて思ってません。変な事を言わないでください」



〈テミンでいいよぉ~。じゃあさ、何?恋人とでも言いたいわけぇ?〉



Luciferは話している俺の方を見もせずに
マウスを動かし、時折キーボードをカチャカチャと叩いている



話している相手を見ないだなんて失礼な奴だ
イライラしたけれど、ここもぐっと堪えた



「男妾でも愛人でも恋人でもありません。
そういうテミンさんこそ、あの人の何なんですか?」



Luciferはそこで初めて手を休め、俺を振り返った



〈自分で調べてよ。ジャーナリストでしょ?
それか今度、ピロートークで聞いてみたらどう?〉



「テミンさんっっ!いい加減にして下さい!
今日は止めに入るメガネ執事が居ないようなので一発殴りましょうか?」



さすがに我慢も限界だった
それでも言葉にしただけで彼に掴みかかる事はしなかったから、俺も少しは成長しただろうか



〈いいよ。僕、ケンカは苦手だけど殴られるのは慣れてるから〉



…またあの顔だ
人工的な蒼い目に浮かぶ、哀しみの表情



Luciferは再びパソコンの画面に向かい、今度はゲーム用のコントローラーを手にした



〈シムさんにヒントだけあげるよ。
あいつには過去に失った大きな存在がある事。
その哀しみの反動が、全てを掌握しようとする原動力になってる事。

それから僕は。あの人とは紙切れの上でだけ近い存在って言っとく〉



それだけ言った後
パソコンのゲームに集中しているのか、一切口を開かなくなったLucifer



俺もそれを帰るタイミングと考え、頭を下げてから地下室を後にした



Luciferがくれたヒントは
漠然としているようで、核心に触れる言い方でもあった



俺が、ヤツの本性を暴く事が
Luciferにどんな影響を及ぼすのだろうか?
そこも考えなければならないと思った



…そういえば
Luciferの喋り方や文章の書き方に、どこかで接した様な記憶が突然蘇る



そうだ
あの掲示板だ



彼のもう一つの顔、それは
狎鴎亭の事を書き込む掲示板の主なんじゃないか?



チョン・ユンホが狎鴎亭の帝王ならば
Luciferは闇の番人とでも言うんだろうか



昼とはまるで別人の様な姿で、狎鴎亭の闇の部分を監視している様な感じだった



Lucifer…堕天使というハンドルネームを使うのも
帝王になる事が出来ない自分への揶揄なのかもしれない



【紫蘭】の前をいつもの様に通り過ぎ、地下鉄の駅に向かいながらそんなことを考えていた



チョン・ユンホとは…紙切れの上で近い存在と言ってたな
Luciferがくれたヒントは、これから俺が何をすればいいのかという道標になった



ホテルで会い、身体を貪り合う…
そんな関係のヤツと俺



Luciferが言ってた様に
俺はあいつの愛人なんだろうか



なぜヤツは、昨夜俺に会いに来たんだろう…



身体だけの関係ならば
性欲を満たすためいつもみたいに俺を抱くだけ抱いて、帰ればいいはずなのに



ただ
俺と噛み合わない会話をして
俺をイラつかせて
そして、抱きしめただけで帰っていった



チョン・ユンホの見せた哀しみの顔は
過去に失ったという大きな存在が理由なんだろうか?



今の俺は



今週号の校正よりもチョン・ユンホという男の事が
とにかく気になって仕方がなくなっていた








明日は「星鏡」を更新致します


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渇欲 43
2017-03-09 Thu 21:00


このお話はフィクションです






どのくらいこうしていたんだろう…



ヤツは…
チョン・ユンホはふと腕の力を緩めた



『すまない。邪魔をしたな。』



抱きしめていた俺をぐいっと押して立ち上がろうとする



「帰んのかよ」



…何言ってんだ、俺は



『何だ。子守唄でも歌って欲しいのか?それとも、俺に抱かれたいのか?』



「なっ!!違うっ!」



そう言うくせに
何故か自分の頰が熱く感じるのは、ビールを三本も飲んだからに違いない



きっと、そうだ



『お前のあのベッドでは眠れなさそうだからな。
身体が大きいのに…あんなに小さくて寝づらくないか?』



「あのね。庶民が寝てるのは普通あんなもんだよ。部屋の大きさ考えろっつーの。
人ん家に勝手に来ておいて、文句ばっかじゃん」



相手にするのは無駄だ…そう思った
ヤツの事は放っておき、小さいってケチをつけられた自分のベッドに潜り込む



「カギはオートロックだから。さっさと帰って。
もう眠いんだよ、俺は…」



記事を書くのをヤツに邪魔されたから、明日は早く行って事務所でやるとしよう



ビール三本分の酔いと
嗅ぎ慣れた匂いのする自分の布団の温もりで
あっという間にウトウトしてくる



全く…何でウチに来たんだか…
座るところが無いとか言いやがって…あの男は普段、どんな生活をしてんだよ



夢への入り口で、ヤツに散々悪態をつく
頭にきたから今度前に調べたヤツん家に突撃してやるか…
どーせセキュリティがすごくて入れないだろぅけど



『お前の顔を見る事が出来て、気持ちが落ち着いた。
チャンミン、ゆっくり休め。今週号も楽しみにしているぞ』



夢?
ふわっとした温もりが頰を撫でて
そして、少し湿った柔らかいものが触れた気がした



タバコ…やめられないのかな…



ベッドに眠る俺に再び近づき、頰に口づけたチョン・ユンホ
その彼がまとうタバコの匂いだけ、何故かはっきり記憶に残っていた






「うおー!出来たっ!
良かった、間に合わないかと思ったよ」



ひっくり返りそうになるほど椅子にもたれかかり、両手を目一杯伸ばす
いつもより一時間早く起きて事務所にきた俺は、記事作成の詰めを必死でやっていた



〈ヒョン、僕もいい感じで仕上がったと思います。韓流スターミュージアムの記事。
しかし…無駄にデカイの作りましたよね、政府も〉



ソウル郊外に作られていたそれは
K−POPや韓流スターの売り込みに精を出していた政府自らが対外政策を見誤ったせいで
皮肉にも観光客が激減している中での完成となった



メインで追っている案件とは別口に、税金の無駄遣いを追求する内容で記事を練っていたけれど
ようやく一つの記事として、今週号に掲載出来そうだ



「データ送ってくれる?そしたらミノは、もうあがっていいよ。
手が完治してないのに良くやってくれたな。ほんとサンキュ」



時折痛むのか、作業をしながら痛み止めらしき薬を飲んでるのを見ていた



無理をさせている事も、そしてそんな彼に後ろめたいような事をしている自分の事もあって
ミノに最近、ちゃんと目が合わせられなくて



〈じゃあ、そのお言葉に甘えて。
この間久しぶりに昔の友人に会ったんで、そいつとまた飯でも食いに行ってきます〉



お先に失礼します、と愛用の帽子をかぶりショルダーバッグを持ってお辞儀をするミノ



そういえば…
俺との待ち合わせを取り消させて待ちぼうけを食らっているミノの元に、律儀に埋め合わせをするかの様に友人を送り込んだヤツがいたな



黒い三揃いのスーツに深紅のマフラーを選ぶキザ野郎…



『チャンミン…』



耳元でそのキザ野郎の声が聞こえた気がして、慌てて自分の耳をバンバン叩いた



ミノを先に帰した後、今週号を一気に仕上げる



大統領に汚職の疑惑が沸き起こったせいで
例のアイドルの件を今週は書けなかったのが心残りだけれど



大統領汚職の件もきっと、大手新聞社とは違った角度で切り込めたと思う
最終校正を残すだけにして、ダウンコートに袖を通しリュックを持った



いつものように地下鉄に乗りあの場所へ向かう



狎鴎亭は今夜も多くの人が入り乱れ、賑わいを見せていた
そのくせ【紫蘭】だけは、息をしていないかの様にひっそりと佇む



この狎鴎亭の噂を書き込む掲示板のチェックも欠かしていないけれど
俺が書き込んでいないからか【紫蘭】の事を書く人間もいない



いつもの定位置に腰を下ろし、スマホを開く



クラブの入口に気を配りながら新着メールの確認をすると
“今月も広告費の振込を致しました”という、近所のピザ屋からのメールがあった



そういえば、あいつ……



受信トレイからフラグ付きのメールを開き
Luciferからのメールを探した



“夜は狎鴎亭△△番地のビルの地下に来て”
書いてあった記憶が急に蘇り、そのメールをコピーして次にマップアプリを開いた



狎鴎亭△△番地と入力すると
表記された地図は今自分の居る場所からそう遠くない位置を示していたんだ



昨夜あの男が俺に見せた哀しみの表情と
ベランダで俺を見送っていた時のLuciferの哀しみの表情とが重なる



俺はパッと立ち上がりジーンズの尻をぽんぽんと払う
スマホのマップを見ながらいつもの場所を後にした



地図が示していた場所には、うちの新聞社が入っているビルといい勝負の古めかしい雑居ビルがあった



清潭洞の屋敷からは到底結びつかないな…
そう思い、もう一度番地を確認してから地下に降りて行く



やっぱりうちの新聞社とどっこいどっこいの、ボロっちい扉をノックした



〈誰?〉



ちょっと高めのその声に聞き覚えがあった
この中に、彼が居るのは間違いなさそうだ



「チンシルウィークリーのシム・チャンミンです」



壊れそうな扉が開くとそこには
金髪に蒼い目をしたLuciferが立っていた



でも彼は
この間とはまるで別人の様な姿だったんだ







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