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ご報告
2017-01-28 Sat 22:00




親愛なる皆様へ


いつも私の様な者に温かい応援を賜り
どうもありがとうございます


今日は皆様へご報告させて頂きたい事があり、この様な記事を書こうと思った次第です


私事の内容になりますのでご了承下さい






以前お話しさせて頂きました体調を崩していた愛犬の件でございます


私の方が風邪をひいて、いかにもひどい病人の体になっている状態で
見た目は超ハイテンションなパーリィピーポー状態の愛犬を連れて病院に行きました


先月から継続して検査をした結果、愛犬の病状が腎不全に進行したという最終判断を受けて参りました


慢性腎不全。
犬猫を飼われている方はご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、治る事のない病です


今後はどれだけ腎臓の破壊を食い止めることが出来るかという内容で
点滴や食事療法、サプリメントでの腎臓のケアが主体の闘病をして行くことになりました


職場にも同じ病気で、長きに渡り愛犬との闘病をされていた方がいらっしゃって…


先頃その闘いに終止符を打ちましたが、仕事に来ている時の方が忘れられるからと言いながら今も毎日出勤されています


「慢性腎不全は彼等も辛かったと思うけれど
飼い主とっても治らない病と分かっていての闘いになるから、精神的にも経済的にも辛い闘いだった」


その方がそうおっしゃっていたのがついこの間だったので
私も正直、目の前が真っ暗になりました


やたらと元気そうに飼い主を見上げている愛犬の顔が切なくて…





少し話は遡りますが…


私は両親から勘当同然で今の主人と一緒になりました


何かの折に触れたかと思いますが
主人は死別で二人の連れ子があったため
すでに家族として構築されている中へ、私は単独で乗り込んだ訳です


意気込んでいたのも束の間で
目の当たりにした理想と現実との大きなギャップや、右も左も分からない状況に


私が夢みていた結婚生活はあえなく打ち砕かれた感じでした


どこへ行っても◯◯さん所の後妻さんよ、という好奇の目で見られているような錯覚にとらわれ


また、ある程度は教えてもらっていたものの
家の近所で本気で迷子になった事で、家から出る事すら体が拒絶する様な状況になったんです


そんな私を見かねたのと、愛犬達を実家に泣く泣く置いてきたという事も合わせて、主人が犬を飼うと言い始めました


次に迎えるとしたらこの犬種、とずっと憧れていた超大型犬
今の愛犬を迎えたのは、結婚して半年が過ぎた頃でした


連れ子との差別をしてしまいそうな自分が怖くて、実子を生むことを断念した臆病者の私にとって彼は我が子の様な存在になりました


すでに出来上がっていた家族というコミュニティの中で唯一、自分サイドの存在という感じがして…すごく心強い存在を得た思いでした


彼を迎えて以来、私の生活が一変したのは言うまでもありません


彼との散歩に行く度に、それまで迷っていた近所の道に明るくなる事が出来て
そして、行く先々で同じ愛犬家の方達と話したりする事で、この地域に馴染む事が出来たんです


それからはどんな辛い事があっても、彼の存在のおかげで乗り越える事が出来ました


彼のおかげで少しずつ自分に生じてきた余裕から
翌年には動画で見たユノがきっかけで、東方神起という新たな楽しみにも出会う事も出来たんです


そんな経緯もあり
私にとって愛犬は、非常に大きな存在であります





超大型犬は寿命が短いという事は百も承知です
この種類の犬を迎えた時から、それは覚悟していた事でした


この病気になった事を受け止めて
そして少しでも腎臓の破壊を遅らせる事が出来るように、出来る限りの事をしていきたいと思っています


彼が私の人生に大きな光をくれた事への感謝のためにも、悔いのない闘病生活を送りたいと考えています


その様な事から、来週にはお話の更新を再開させて頂く予定でおりますが
更新がスローペースになると思われます


しかしながら
愛犬同様に私の人生に楽しみを与えてくれた東方神起によって
もたらされた縁も私の大切な宝物です


このブログを通して繋がらせて頂いている皆様には、開設当初よりお付き合いさせて頂いている方も多く居られると思います


そんな大切な宝物である皆様には、嘘偽りのない私自身をご理解賜りたく
この様な記事を書かせて頂いた次第です





最後まで私事の長文にお付き合いくださり
本当にありがとうございました


ふと思い出した時にまたお立ち寄り頂ければ
この上ない幸せでございます


一層寒さが厳しくなっておりますが、どうぞお健やかにお過ごしくださいませ





ゆんちゃすみ







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渇欲 34
2017-01-25 Wed 21:00


このお話はフィクションです
性的な描写を含みます
ご注意ください






「おい!ちょっと待てってばっ!」



この部屋の天井を見るのは三度目で
でも
眠りにつく前にこうして見あげるのは初めてだ



そんなどうでもいい事を思ったのは一瞬で
ネクタイを緩めながら俺に馬乗りになるチョン・ユンホに、その視界を遮られた



『何だ。シャワーを浴びたいとでも言うのか?女みたいだな』


「…っ!!そうじゃなくって!卑怯だろっ、離せっ!」



もがいてみたところで、ガタイの良いヤツの力にかなうわけもなく



俺の手はあっという間に
頭の上で一まとめにされてしまった



こんな事になるとは思ってなかったのに…
数時間前の自分が恨めしい







初めて見るような美味いご馳走と、後味の良いワインにすっかり踊らされた馬鹿な俺は
目の前の男が誰かということをも忘れ、やたらご機嫌だったらしい



ワインには縁がない、と言った俺も
ワインリストからヤツがチョイスしたワインがやたらと美味しくて



せいぜい二杯くらいしか飲んでいないヤツの分まで、ゴクゴクと飲んでしまった
こんな飲み方はマナーとしてなって無いんだろうけど…



二度とこんな高価そうなレストランに来る事もないだろうし
このワインがアホみたいな金額だったとしても、この男にとっては痛くもかゆくもないだろうし



気にしてたって仕方ない、どーせだったら思う存分食べて飲んでやる!
という貧乏人根性が働いてしまった自分が情けない



「あんたが選ぶ様な物だからさ。
このワインも年代物とかで、超高いんだろ?」



同じワインを二本空にした所で、もう一度同じ事を言ってしまう俺



『シム・チャンミン。賭けをしようか。このワイン、いくらだと思う?』



チョン・ユンホも俺のそんなテンションにつられているのか、急にそんな事を言った



「はぁ?自分の得にもならない賭けなんかするかよ。さっきも言ったろ?俺はワインには縁がないって」



どう考えたって、俺の答えは真っ当だと思う
そもそもここにメシを食いに来てるのだって、自分から進んで来たわけじゃねーし



『人生で大きな賭けに出たお前とは思えない答えだな。一流企業にも勤められただろうに』



さも興ざめした、と言わんばかりに
大きく肩を竦ませたチョン・ユンホ



……俺が大学を卒業して就職せず、自分で新聞社を始めた事を言ってるんだな



テソンの社長ともあれば、俺の過去を調べるなんて朝飯前って事か
ミノの友人を見つけ出し会いに行かせ、俺のスマホに成りすます事も出来るんだから



「その賭けに乗ってさ。俺が勝ったらどうすんの?」



馬鹿にされたというか
何となく、見損なったと思われるのが嫌だった



『お前の聞きたい事に答えてやろう。例えば…
そう、なぜスムダン電子がテソンの物になったのか…とかな』



ベッドに転がされてしまった事自体
ここであっさり引っかかった自分の所為だって分かってるんだけど



「俺が負けたら?」


『そうだな。俺の言う事を一つ聞いてもらうか』



そもそもここにメシを食いに来たのだって、あんたの言う事を聞いたんだけど……
そう言い返すだけの判断力も、きっと無かったんだろうな



俺が答えたワインの金額は、正解とは一桁以上の差だった
“高価そう”と思っていたワインは
実は51000ウォン(約5000円)という意外な金額だった



『シム・チャンミン。
思い込みだけで判断している様では、まだまだお前の知りたい“真実”には程遠いな


高ければ美味い、高価であれば良い物だという考えでは、俺の事を知る事は出来ないぞ』



勝ち誇る素振りなどは皆無だった
チョン・ユンホはただ、いつもの様に無感動な表情に戻って俺に言い、席を立った



俺は……
何かの暗示にかかったかの様にヤツの後を追う



石造りのエントランスを出て車へと歩くチョン・ユンホ
ヤツの後姿は、どこか言い様のない影を感じる



何故だろう…
ヤツの歩いた道筋に
黒い霧が立ち込めている様な気がした



それはまるで
出口のない迷宮に迷い込んだ様な…



そして俺も
その黒い霧にすでに巻かれてしまったのかもしれない



ヤツの残してゆく霧に操られる様にして
黙って後ろに続いた






『卑怯だ、と言われる覚えは無い。
むしろ賭けを反故にしたらお前の方が卑怯者だぞ』



至極真っ当な事を言いながら
チョン・ユンホは、自分のシャツを脱ぎ捨てる



ヤツの細い指が俺の首に添えられて
俺に沈黙という麻酔をかける様にゆっくりと口を塞いだ



51000ウォンのワインは
あの日飲んだ上等のウィスキーと同じ様に、俺に作用しているんだろうか



それとも



強引にねじ込まれたヤツの舌に絡めとられた時点で
俺はこの悪魔の様な男の毒気に当てられたんだろうか



三度目に見る天井の白さをぼんやりと眺めながら
チョン・ユンホの熱い舌を
今度は、自らの舌で出迎えていた







親愛なる皆様へ


いつもお運び下さりありがとうございます。
また、温かい励ましのお言葉や応援を頂戴しております事を重ねて御礼申し上げます。


以前からお伝えしております様に、愛犬の病気との闘いに日々追われております。
そんな中で今度は私自身も風邪をひいてしまい、二進も三進もいかなくなりました…


「渇欲」並びに「星鏡」を楽しみにして下さっている皆様には、大変恐縮ではございますが
しばらくの間、更新をお休みさせて頂きます。


再開の時まで今しばらくお待ち頂けます様、よろしくお願い申し上げます。


皆様におかれましても、インフルエンザ等も流行しておりますので、くれぐれもご自愛下さいませ。


ゆんちゃすみ




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渇欲 33
2017-01-21 Sat 21:00


このお話はフィクションです






「静かだな。この店まだやってないんじゃないか?俺ら以外に誰もいないんだけど」



店の構え同様にシンプルな造りの内装を見ながら
店員に案内され、中を進む



控えめに配置されたオブジェが品の良さを醸し出し
計算され尽くした配置の間接照明が、更に上品さを演出していた



こういう店に縁のない俺でも
その洗練された雰囲気で、ここが上流階級御用達という事を感じとる



『まぁそんなところだ。
シム・チャンミン、酒が好きだと言っていたが、
ワインはどうだ?』



真っ白なテーブルクロスが敷かれたテーブル
向かい側に座るヤツは今日も
クロスの白さとは正反対の、黒い三つ揃いのスーツを着ている



ワインリストを持つ手元から、キラリと光るカフスが覗いた



何だろう…黒い宝石なのか?
ヤツが手を動かす度、そのカフスの石に照明の光を反射する線が浮かんで見える



「ワイン…あんまり縁が無いかな」



店員が俺にもワインリストを渡してくれたけれど、見ても正直ちんぷんかんぷんだった



さっさと閉じてテーブルに放り出し、素直に答える



この男に嘘を言ってみたところで、俺には何のメリットも無いわけで



『じゃあ、文句を言わず俺に付き合え』



チョン・ユンホはリストをウェイターに返し、ワインを頼んだ様だった



しかし…またとない機会と腹を括ったものの
この男と何を話していいのか全く分からない



いっそストレートに
答えの返ってくるわけのない疑問をぶつけてみようか…
なんてバカな事を考える



表情が読めないというか…この男は何を考えているんだろう



シンプルに整った顔つきは
一切の感情を表に出さない様に出来てるんだろうか?



『何だ?俺の顔に何か付いてるか?』


「……はぁ?心配しなくても目も鼻も口もちゃんと付いてるよ」



チョン・ユンホは眉一つ動かさずに問い
問われた俺は、反対に動揺を隠せず憎まれ口を叩いてしまう



ちくしょー
何でこいつはこうも、全てに余裕があるんだよ…



無表情に見えるヤツの顔が
少しだけ柔らかくなった気がして…慌てて頭を振る



顔を見れば、また何を言われるかわからない
俺は自然と目を伏せる様になり
その下げた目線の先には、テーブルの上でメニューを持つヤツの指があった



俺は背だけはやたら高いのに手が小さい
身体つきが妙に女っぽい事も合わせて、俺の大きなコンプレックスになってる



ヤツの指も
俺とは違う意味で女みたいだと感じた



細く長いその指は
どんな指輪も似合いそうに見えたけれど
節張った関節が
男だという事をきちんと主張している様に思えた



この指が…俺に与えた数々の記憶が急に蘇る
顔が……熱くなってくる……



『ワインを飲む前からもう酔ったか?』



そんな言葉と、頰に触れる冷たい感触で
ふと我に返った



「触んなって!」



頰を撫でるヤツの指を振り払い、目の前に置かれていた水を一気に飲んだ



チョン・ユンホは
俺の心を読む様にジッと見つめてくる



感情が無いように見えるヤツの黒い瞳に、俺が映っていた



ターゲットはチョン・ユンホである筈だった
それなのに
まるで俺の方が獲物であると言わんばかりに



ヤツの目を見ていると、その中に吸い込まれてしまう様な錯覚に陥り
俺は言い様のない恐怖を感じた



目の前の男がフッと笑った気がした
年の差だけではない、ヤツの余裕がそうさせているんだろうか



『さあ、食事の前に先ずは乾杯だ』



タイミング良く運ばれてきたワインが注がれて
チョン・ユンホは濃紫色の揺れるグラスを傾ける



ヤツの瞳に吸い込まれる寸前に引き戻された俺は
またもチョン・ユンホの流れに乗って、グラスを合わせてしまった



「へぇ、美味いなこのワイン」



率直に感想を述べてしまうのも、また
ヤツの作る雰囲気に流されているからだろうか…



何度か飲んだ事はあるけれど、あまり美味しいという印象が無かったワインという酒
今口に運ぶそれは、鼻を掠める香りだけでもその葡萄の味を感じさせた



「ってかさ、きっとあんたの選ぶやつだから。
これもバカみたいに高いんだろーな。そりゃあ美味い筈だよ」



恐らくはワインに合わせて作られた料理を店員が運んできて
俺はその目新しい料理も遠慮なくフォークで口に運ぶ



あっという間に空になったワイングラスを見て
ヤツはなぜか満足そうに笑った



そんなヤツの顔を見ると、それだけで身体の奥に潜む何かを煽られる



チョン・ユンホの美しい笑みは
ワインよりも俺を濃厚に酔わせる妖しげな何かを
含んでいるみたいだった







次回「渇欲34」は1/25(水)21時に更新致します

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華筏 第2章 ~星鏡 10~
2017-01-20 Fri 18:00


このお話はフィクションです





この人の全てに
僕は狂わされているんだ



僕は何故か、急に怖くなった



仕事が忙しいユノの久しぶりの休み
彼と夜中まで抱き合い、ユノの愛を独り占めして



なんだかんだ文句を言いながらもこうして
僕が希望した通りに、ユノの先輩の店で昼食を食べている



彼と思いを通わせて以来、僕は毎日が幸せだ



朝起きて隣にいるユノの寝顔を覗く事も
僕の作った食事を美味しそうに食べてくれるユノを見る事も



僕が好きなワインを楽しむ時、ワインの香りだけで顔を赤くしてしまうユノも…



彼と過ごす一分一秒が、全部幸せなんだ



何故、怖くなったんだろう…
目の前でヒチョルさんの料理を頬張りニコニコしているユノの顔を見つめる



『どうした?食欲ない?』



僕のフォークが動かない事を心配するユノ
慌てて顔を振るけれど、僕の些細な変化に敏感なユノに隠し事は出来ない



『食事を済ませて外に出ようか。少し顔色が悪いな』



ユノ…
どうしてあなたは僕の事を全部分かってしまうの?



僕は…まだあなたの事を分からない時もあるのに
何だか悔しい



フォークを持つユノの指を絡め取る
その指を口に運び、噛み付いた



突然の事にびっくりするユノ
こういう時の彼は、捨てられた子犬の様に困った顔をするんだ



「ユノ…僕は幸せです」



こんな訳のわからない僕の行動は
ユノでも理解出来ないと思う
それでも彼は、噛まれた指で僕の頰を撫でて言う



『俺も、幸せだよ。怖くなるくらいにね』



僕の心までも見えてしまうの?
怖い、と思っていた事までもお見通し?



ユノが、好き…
噛んでしまった指に今度は、そっと口づけた



その後は
ただ黙って料理を口に運び、時に見つめ合う



側から見たらこんな僕らはどう見えるんだろう



僕の周囲の人間は皆、僕らの関係を知っている
父、腹違いの姉、従兄弟…



僕は生まれた時からずっと海外で暮らしてきたから、周囲にいる人間はたったこれだけだ
父もつい最近、言葉を交わすようになっただけの気薄な親子関係だし



ユノは…



そういえば僕は
ユノの周囲の人物を全然知らない…



唯一ユノが前にいた会社の先輩で脱サラして、ここにレストランを開いているヒチョルさんだけだ



ユノと一緒に暮らし始めてもう随分経つのに…



一度不安を覚えた僕の心は
それまで気づくことがなかった事実も、急に気になり始めてしまう



ヒチョルさんのレストランを出た僕達
いつもの様にユノのエスコートの元、車の助手席に座る



運転席に乗り込んだユノは僕の方に手を伸ばし、僕のシートベルトを締める



これも
僕を過保護過ぎるくらい大切にしてくれる
ユノのいつもの流れだ



その腕を取り、ぎゅっと抱え込む
不安な気持ちが僕にそうさせた



いつもと違う僕に、ユノは再び困った顔を見せる
僕の事を全部お見通しの筈のユノも…時々こんな顔を見せる



『チャンミナ…今日は何だか甘えん坊さんだな』



真昼間の繁華街に停められた車の中で
それでもユノは、僕の事を抱き締めてくれる



同性愛という大きな偏見さえ
気にも留めないユノの、そんな堂々とした抱擁だった



「甘えん坊な僕は嫌いですか?」



僕もまた
堂々としたユノに応える様に彼の耳に口づける



同性愛という括りに拘る方がむしろダメなんだ
僕は、ユノという人間を愛しているんだから…
性別に拘る方が間違ってると感じていた



『甘えん坊のチャンミンは、ちょっと困るかな』



えっ?



ユノ……
僕は、あなたに迷惑をかけているの?



きっと僕は
ユノの予想外の答えに動揺して、目が泳いでしまったと思う



そんな僕を抱き締めているユノの鼓動が
どんどん大きくなっていくのが伝わってくる



『甘えん坊のチャンミンはさ……
いつも以上に魅力的過ぎるんだってば。
さすがの俺でも白昼堂々襲えないよ』



耳元でそう打ち明けてくれるユノ
自分でも正直に言い過ぎたと思ったのか、ちょっと顔を赤らめて車のエンジンをかけた



ねえ、ユノ…
あなたはどれだけ僕を夢中にさせれば気が済むの?



甘えん坊の僕を…魅力的過ぎると評したあなた



僕にとってあなたは…
ただ、僕の隣で息づいているだけで魅力的過ぎるんだよ



それを知らないあなたは
照れている事も隠さないまま、運転をし続けている



あなたのその整いすぎた横顔が
僕をすっぽりと包み込んでしまう広い胸が



僕を虜にして、どんどん深みに沈めてゆくんだ



この車は、僕たちの家へと向かっているけれど
僕たちはこれから、どこへ進んで行くんだろう



一度芽生えた小さな不安は
本当だったら幸せだと感じる事でさえも不安に変えていく



隣にいる愛しい人を
自分で勝手に、遠くへと追いやっている錯覚に囚われていた







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渇欲 32
2017-01-18 Wed 21:00


このお話はフィクションです






全てにおいてちぐはぐな男が、妙に気に入った



今まで接点のなかったタイプが目新しいからか?
脅されても尚、向かって来る意気込みを買っているのか?



それとも
抱き心地が良かったからか…?



始末する筈だった男を抱えて
自分のホテルに連れ帰る



いつもは、人当たりの良い穏やかな表情を浮かべているジェウンも
俺のそんな珍しい行動に少々戸惑いの顔を見せた



〈たまにそんな遊びも良いのではないでしょうか〉



当たり障りなくそんな事を言って
正体のないシム・チャンミンを車に乗せた



俺の持ち物であるこのホテルには
いつ俺が来ても良いように専用の部屋を設けてある
プライベートエレベーターのキーを挿し、その部屋に向かった



アルコール度数の高いウィスキーを勢いよく呷り
酒を飲む事は楽しいから好きだと饒舌に喋っていたこの男は



俺に愛撫されながら、ちぐはぐさを象徴する細い身体をくねらせ
俺から与えられる快楽の全てを享受しようと言わんばかりに、身体の奥を締め付けた



目の縁を朱に染めながら精を吐き出した妖艶さとは裏腹に
今はあどけない顔で寝息を立てている



珍しい玩具を見つけた…そう思えばいい
自分の中にある理解出来ない感情をそう置き換えた



『ジェウン、しばらくはあの玩具で楽しもうと思ってる。丁重に扱え。壊すんじゃないぞ』



入口に控えていたジェウンにそう告げて、別の部屋に向かった



質の良いアルコールを程よく飲み
抱き心地の良い玩具で愉しんだ後は
熱めのシャワーが丁度良い



スムダン電子を手に入れるという
大きな仕事をやり遂げた後の安堵感も合わさって
いつになくすんなりと眠りについた



翌日
ホテルからテソン本社に出社する



〈シム・チャンミンはセフンが無事送り届けました〉



運転するジェウンが言う
セフンはジェウンが私的な仕事をさせるのに使っている男だ



『同じ年頃で二人とも血気盛んなタイプだからな。セフンに十分言い聞かせろよ』



事実、初めて俺の元に連れてこられたシム・チャンミンは
ジェウンに後始末を言いつけられたセフンと言い合いになったと聞いていた



〈大丈夫です。代表のお気に入りだと言い聞かせてあります

あいつは代表に憧れていますから、代表の大事な物を壊す様な事はしないでしょう

シム・チャンミンの挑発にもきっと歯を食いしばって堪える筈です〉



意思の強そうな目つきが気に入って、俺が孤児院から連れ帰ったセフン
ジェウンは常に冷静沈着な自分にはない、がむしゃらなセフンを可愛がっている



元々頭がいいセフンはジェウンが与える仕事で
少しずつ成長を遂げていた



本社に着くと今日は
ジェウンが作った嫌がらせの様な過密スケジュールはやや解消された様で
代表室でゆっくりと書類を片付ける事が出来た



その合間に、あの男の作るウェブ新聞を開く



彼の作った小さな新聞社は大学の後輩と二人でやっていると聞く
その片割れはジェウンの指示で痛めつけられ
先週はずっと病院のベッドの上にいた筈だった



あの男一人で、ここまで内容の濃い物を作り上げたんだと感服する
俺の店に目をつけている事も、例のつまらない女の死を追う記事で見てとれた



惜しい男だ…



ジェウンが調べてきたところによると
この国でも有数の名門大学を出ているのに
大手の企業に就職する道を選ばず、なぜ自分で新聞を作ろうと思ったのだろうか



知れば知る程、興味をそそられる



『ジェウン、来てくれ』



インターフォンで隣の部屋にいるジェウンを呼んだ



〈お呼びでしょうか〉


『例の玩具と今夜は夕食を食べようと思う。非常に面白い記事を書いている。お前も読んだか?』



ジェウンは穏やかな表情を崩さず、頷いた



〈よく一人で作り上げたと感心しておりました。
どうにも、私の処理が甘かったと言われている様で良い気は致しませんが〉



自分が指示した脅迫にシム・チャンミンがめげていないのが面白くないのか
ジェウンは珍しく苦虫を噛み潰したような顔をしていた



『ジェウンに文句を言ってる訳ではないぞ。あれの性根を褒めているだけだ。
新聞を書く事を止めさせるのは、いささか惜しい気がするな』



シム・チャンミンが追っているのは
間違いなく俺だ



彼が追い求める答えに近づけば近づく程
それは俺の破滅を意味する事にもなり兼ねない



だが、それを力づくでやめさせようという気は
もはや無くなっていた
それよりも、シム・チャンミンという男の全てを見てみたい気になった



〈では夕食に向けて然るべき準備を致します。
代表もここでお茶をひいていないで、それなりの仕事をしてください〉



俺が怒らないのを分かっていて、そんな言い方をして部屋を出て行くジェウン
全く…人が遊んでる様な言い方をしやがって



スムダン買収の後処理も滞りなく進んでいるし
俺もジェウンが言う通りお茶をひいていないで、次の目標を立てていかねばならない



あらゆる分野を、自分の支配下に置く
テソンを自分の物にしてから、今までやっていなかった分野の事業を次々と配下に入れてきた



この国を手に入れるという
完璧主義者の俺にしてはざっくばらんな目標



それは、既に達成してそうでもあり
まだゴールが見えていない気もする



俺をしきりに政界へ押し込めようとする類いの連中もいる
だがしかし、大統領になる事がこの国を手に入れるという意味にはならないと、俺は思っている



俺は政治にはまるで興味がない
政界や法曹界…
それぞれに相応しい人物が、その方面を束ねてくれればいい



俺は
その人間を支配できれば、それでいいんだ



いい仕事をしてくれた検察庁長官の大統領選の準備もあるし
その後釜も考えなくてはならなかった



検察庁のトップに立たせる人間は、俺の息がかかった人物でなくてはならない
ありとあらゆる俺の仕事を円滑に遂行させる為に
検察の協力がなくてはならないからだ



やる事は次から次へと出てくる
それが出てこなくなったら、俺も終いだろう



今夜もう一度あのちぐはぐな男と会う…
それを小さく楽しみにして、仕事をし始めた







次回「渇欲33」は1/21(土)21時に更新致します

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華筏 第2章 ~星鏡 9~
2017-01-16 Mon 18:00


このお話はフィクションです





〈よぉ~!久しぶりだなチャンミニ!ユノ、忙しそうだな〉



仕切り直しに揃って二度寝していた僕とユノは
遅すぎるランチを食べにユノの先輩の店に来ていた



ユノが僕との恋に悩んでいた時、背中を押してくれたヒチョルさん



ワインが好きだという僕に色々と合わせた料理を作ってくれて
チャンミニというあだ名で呼ばれるまで仲良くなれた



ユノがこうして
自分の世界を僕に共有させてくれた事が嬉しかった



〈ヤキモチ焼きのユノのせいで、チャンミニと会えなくて寂しいよ〉



茶化すヒチョルさんをシッシと追い払いながら
僕の背中を抱いてユノがお気に入りの席に向かう



『先輩、そのチャンミニと俺に美味しいの食わせて』



ユノに追い払われつつも、嬉しそうなヒチョルさんは
〈任せろぉ~〉と大きく手を振り厨房へと消えた



『喋らなければいい男なんだけどな、先輩は』



僕を椅子に座らせてから向かいの椅子に腰掛けるユノが笑う
自分は優しくない、紳士的な振る舞いとは遠くかけ離れてるんだって彼は言うけれど



実は僕には優しすぎるくらいなんだ



車に乗る時もドアを開け僕を助手席に乗せた後
運転席に乗り込むユノはシートベルトすらも僕につけさせない



いつも当たり前の様に手を伸ばし
僕の鼻の頭に軽く口付けてシートベルトを締める
そんなキザな仕草も、僕の自慢の恋人にはすごく似合ってしまうんだ



どこに行くにも、ユノは僕の背中を抱く
そんな仕草から僕はユノの愛を一身に受けているっていう充実感を味わえる



過保護すぎるくらいのユノの愛に
僕はどっぷり浸かってしまっている気がする



『チャンミン、ワイン開けるか?運転してきてるから俺は付き合えないけど』



そう言いながらワインリストを見せてくれるところも
小さなことだけどやけに優しくて



僕は、そんなユノの手をそっと握る



「今日はこの後…湖に舟を出しましょう。だからワインはやめておきます」



昨日ユノが言っていた事をしたいと思ってた
ユノは僕の作品にも描いた白い小舟に揺られてうたた寝をするのが
一番の気分転換になるって前に言ってた



仕事が詰まっていて疲れているユノに駄々をこねてしまった昨夜の僕
お詫びにあの舟に揺られ、僕の膝枕で疲れを癒してあげたい



『何だよ、チャンミン…嬉しいな』



そう言ってキュッと目を細めて笑うユノ
僕の大好きな星鏡の瞳は、三日月みたいに細めたまぶたの合間からもきれいに見える



ユノは僕が握った手に指を絡めて『楽しみだな』と呟いた



〈店が空いた途端に今度は愛で満席になってるんですけどー〉



詩人のような事を言いながらヒチョルさんが美味しそうな料理を運んでくる



〈根菜のサラダに、これはクリームチーズの生ハム包み。昼だからワインは要らないかと思ったけど、やっぱりチャンミニが好きだから気づいたらつまみ作ってたぜ〉



『ちょっと、ヒョン!!』



僕を好きだと言うヒチョルさんにゲンコツを見せながら立ち上がるユノ
ヒチョルさんも笑いながら逃げていく



こんな他愛のない時間さえも、僕にとっては
ユノの知らない面に新しく気づいたり出来て、すごく新鮮なんだ



ユノって
意外にヤキモチ焼きなのかな、ってね



だから僕もついつい顔が綻んでしまうんだ



『旨そうだな!早速食べようか。チャンミン取ってあげる』



ユノは取り皿にさつまいもやカボチャ、レンコンを取ってくれる
でもちょっと不器用だから、ミックスビーンズはぽろぽろと周りにこぼれてしまって



『あぁ、んもぅ!』



そんな風に口を尖らせて、慌ててビーンズを拾い集める



細面な顔立ちにシャープな目、スゥッと通った鼻筋になぜか下唇だけは主張が激しくて
それを尖らせるもんだから、余計に唇の赤さが目立つ



僕はクリームチーズを取って
赤い唇にギュッと押し込んだ



キョトンとするユノ
僕は手に残るソースを自らの舌で舐めとってから、ユノの口についてしまったソースも同じようにする



ユノの赤い唇が、やけに官能的で



昼間なのに
ユノの先輩の店なのに



吸い付いてしまいたくなる衝動を
クリームチーズの生ハム包みに助けてもらった



僕は
ユノに狂わされているんだろうか…



自分の身体の中で疼くものが
一瞬だけ怖くなった






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渇欲 31
2017-01-15 Sun 21:00


このお話はフィクションです






「あのさ。ほんとに何の用?俺これから出かけるんだけど」



目の前まで距離を詰めるヤツに再び聞く



俺の仕事が終わる時間を予想して、ミノもそろそろ屋台に着く頃だと思う
こんなヤツの相手をしてる場合じゃないっていうのに



『チェ・ミンホの退院祝いか?』


「はぁ?!何でそれをっ?!」



チョン・ユンホに間合いを詰められた俺
デスクに乗っかる様になってしまい、上の書類が音を立てて散らばった



『シム・チャンミン。俺の事ばかり知られているのは不公平だと思わないか?俺も、お前の事を知りたいと思ってな』



細く節張っている指を俺の顎に添えたチョン・ユンホは、そう言って俺の目を見つめる



何の感情も持たない様なヤツの黒い瞳
何を考え何を映しているのか、全く読めない



この目に見つめられると…
俺は身体が硬直して動けなくなるんだ…



『チェ・ミンホは今頃、久しぶりに会う旧友と屋台で再会を喜んでいるだろう。
シム・チャンミンから“外せない用事が出来た”というメールが彼のスマートフォンに届いた後にな』



?!?!
はっ?!何言ってんだコイツ



「意味わかんないんだけど?」



相変わらず距離が近いヤツを遠ざけるべく膝を立て、防御体制をとってヤツに聞き返す



『いい大学を出ている割に理解力が無いな。その言葉の通りだよ。お前と夕食を摂ろうと思ってな、段取りをつけたんだ』



ますます意味がわからない



「何で俺があんたと飯を食うんだよ?その為にミノの友人をお膳立てして、俺のスマホを乗っ取ったとでも言いたいのか?」



馬鹿馬鹿しい
無表情のままくだらない事を言うチョン・ユンホに腹が立ってきた



「そこを退いてくれよ。出かけるんだってば」



腹が立って来ると俄然勢いがつく
そう言ってチョン・ユンホの胸元を手で押した



『その通りだ、シム・チャンミン。

チェ・ミンホの友人を探し出して会いに行かせ、
お前のスマートフォンに成りすましてメールを送らせた。

出かけるのは俺と一緒だ。さあ、行くぞ』



胸元にあった俺の腕を掴んでヤツは体を翻す



背格好は似てるけどがっしりとしているチョン・ユンホの力は案外強くて
俺は強引に引きずられてしまう



「おいっ!ほんとバカな事はよしてくれよ!
なんでお前なんかと飯を食わなきゃいけないんだって!」



足がもつれながら、かろうじて転ばずついて行く
チョン・ユンホは俺に何を言われても意に介せず、知らん顔だ



「待てって!戸締まりすんだってば!!」



俺ってやつは…どうしてこうなんだ
でも一度荒らされてるし、戸締まりは欠かせない
…って事務所を荒らさせたのはきっと、目の前でキョトンとしているこの男だっていうのに



無表情だったチョン・ユンホがキョトンとしたと思えば
今度はあろうことか、可笑しそうに肩を震わせて笑うんだ



『面白い男だな、お前は…』



引っ張る手を離し、事務所の鍵をかける俺を見ながら愉快そうに笑う



「うるせーな。俺に関するあんたの感想なんかどうでもいいわ」



なぜか恥ずかしくて
つっけんどんな言い方をする俺
チョン・ユンホはフッと鼻を鳴らした



ゴミや荷物が散乱した薄暗い廊下を進む
前を歩くヤツの背中は、本当にこのボロい雑居ビルとは似つかわしくない雰囲気だ



見るからに高価そうなコートはカシミアだろうか
シンプルな作りが、ヤツのスタイルの良さを引き立てている気がした



ビルを出ると
すぐそこにあのメルセデスAMGが停まっていた
この車自体もまた安っぽい店が立ち並ぶこの界隈には不釣り合いで、すごく奇妙な光景だった



あの男だ…
チョン・ユンホの秘書か何かに見えるエリート風の男が、ベンツのドアを開ける



『さっさと乗れ』



俺がエリート風の男を睨んでいる後ろから
チョン・ユンホに背中を押され車に押し込められる
っていうか、本当に何で俺はこんな事になってんだ…



革張りのシートはその物自体が熱くなる仕様みたいで、この寒さにもホッとする座り心地だった
俺…ベンツなんて生まれて初めて乗るけれど
それは車のシートとは思えない程の快適な空間だった



いけね…
初めて乗るからって子供みたいにシートを叩いたり
ベルベットの様な肌触りの内装を触ったりしてる場合じゃない



腕を組み、踏ん反り返る様に座り直した



車中では会話は全く無く
車は程なくしてどこかの静かな建物に入って行く
運転していたエリート風の男が再びドアを開け
ヤツに続いて俺もベンツを降りる



「ひぇー、どこだ、ここ?」



重厚感のある造りの建物は、レストランだろうか?
車窓から見えた景色を考えると、ヤツの家がある近辺だと思われた



自分で悲しくなるくらいにキョロキョロと辺りを見渡しながら、ヤツの後ろをついて歩く
こんな場所に来ることなんか今後一切無いだろうし、こうなったら気持ちを入れ替えるしかない



最大のターゲットである男が目の前に居るんだ
またとない機会だ…そう思おう



何人ものスタッフが入口で勢揃いし、大げさに頭を下げてヤツを出迎える光景に驚きつつも



持ち前の記者魂で
このあり得ない状況を乗り切ろうと思っていた







次回「渇欲32」は1/18(水)21時に更新致します

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渇欲 30
2017-01-12 Thu 21:00


このお話はフィクションです






〈ヒョン!ただいま戻りました!!〉



まるで犬が尻尾をブンブンと振り回すかの様に
満面の笑みを浮かべて俺の元に駆け寄るミノ



「ミノヤー!!よく戻ってきてくれたなぁ!」



そして俺も
自分でも照れてしまうくらい大袈裟に両手を広げて彼を出迎える



俺がウェブ新聞社をやりたいと言った時
大学のサークル内で唯一ミノだけがついてきてくれた



彼が独学で学んだカメラ技術は、小さいコンクールだけれど賞を取るほど優秀だった
もっと良い進路があったはずなのに、俺と一緒に様々な“真実”を追う事を選択してくれたんだ



俺がチョン・ユンホをターゲットにしたばかりに
彼に怪我をさせてしまったという負い目は拭えない



今できること全てで、ミノを歓迎したかった



〈先週のチンシルウィークリー、じっくり読みましたよ!ヒョン一人でよくあれだけのものが作れましたね〉



いつもの様にカフェで買ったラテを書類の隙間に置いて座るミノ
事務所を荒らされた時に散らかったミノのデスクの上は、まだ元通りになっていない



「ありがとう。デスクの上…ごめんな、散らかしちゃって」



余計な心配をかけたくなくて、事務所を荒らされた事は彼に言っていない
探し物をしていてミノの机の物を落としちゃったと病室で伝えてある



〈いやー、前よりキレイになってますよ。もっと散らかってましたって。これなら仕事も捗りそうです!〉



痛々しいギプス姿のミノはそう言って笑う



〈まだギプスはしてますけどカメラは持てるように昨日練習しておきましたから。ヒョン、早速始めましょう〉



ミノの屈託のない明るさのおかげで
彼がいない間に起きた悪夢も忘れられそうな気がした



いつもの様にミノに調べて貰いたい案件をピックアップした物を渡し、俺もパソコンを起動する



昨日の…
あの莫大な額の広告費を振り込んで来た相手と
接触しなければならないと思ってた
メールを送ってきたアドレスへ返信を書きはじめる



“何とお呼びすればよいでしょうか?
振込人Lucifer様、チンシルウィークリー代表のシム・チャンミンです。

貴殿から振り込まれた金額は、我が社の広告費としてはありえない額で困惑しております。

また、貴殿のおっしゃる“アイツ”につきまして
我が社が現在ターゲットとしている人物は数名おります。
貴殿とは、もう少し込み入った話をさせていただきたく思います。

まずはご挨拶まで

チンシルウィークリー代表
シム・チャンミン”



これでよし、と
メールの送信ボタンを押す
さて
今週号の大まかな構成を考えなくちゃな…



ミノが帰ってきた今日は
いつもの月曜日と同じような流れで自分の仕事を始める事が出来た



午後
ミノは今週号の記事に予定している件で取材に出て行った



いつもの屋台で退院祝いをやるから、と伝えて送り出した俺も
本腰を入れて資料を作り出す



ゴシップ誌の様な事をするのは心が痛むけど
亡くなったアイドルの事をほじくり返さなければならない
以前調べた資料を取り出してもう一度見直す



スムダン電子…今はもうその名を残していない
元会長は行方不明になってしまったらしい
ヤツの持ち物になった現テソン電子は、大幅な役員人事が行われたみたいだ



上層部はテソン本体からの異動組で占められた
スムダン電子の人間は閑職に追いやられ、出世街道から大きく外れてしまうんだろう
買収された側の人間の宿命みたいなもんか



テソンに買収された経緯は大手の新聞社も調べて記事にしているけれど
どの理由も取って付けた様なありきたりの理由が書かれていて、それが妙に引っかかった



スムダン電子の経営状況は決して悪いものではなかった
インサイダー取引ギリギリの事をやってしまい、例の検察トップに助けてもらう事はあったけど



我が国の企業として他国にも名の通っていたスムダン電子は、ここ数年株価も安定した動きだったし
身売りする様な切迫した状況であったとは到底思えない



何かある
そう思わざるをえなかった



ミノにも見せた事のない取材用の手帳を取り出す
真っ白いページに“スムダン買収の真実”と認めた



検察庁長官の存在…
そして、スムダン電子の買収の裏…
一連の動きの中で、俺が感じたキナ臭い部分



そこにはきっと
俺が目指す“真実”が隠されているはずだ



そしてきっと、ヤツの…
チョン・ユンホの“真実”もそこにあるに違いない



こんな風に閃きがあった時は
資料を作るスピードも上がり、時間もあっという間に過ぎて行く



気づくともう、窓の外は真っ暗だった
ミノに連絡して屋台で落ち合おうと思い、帰り支度を始める



パソコンをシャットダウンしてデスクの引き出しにしまい席を立つ



そこへ、事務所のドアを叩く音が聞こえた



こんな時間に誰だろう?
ウチみたいな小さな新聞社に訪ねてくる客などほとんどないから、瞬間に身構えてしまった
こんな時に自分の小心な部分が垣間見えて何だか嫌になる



「どなたですか?」



小心な俺は、そう言いながらドアを小さく開けた



俺がドアを閉めようと思うよりも早く
隙間に高価そうな靴の先端を差し込んだのは
このボロい雑居ビルには到底似つかわしくない、仕立ての良いコートを羽織ったあの男だった



『やあ、シム・チャンミン。そろそろ帰る頃かと思って来たんだ』



はぁ?何言ってんだこいつ
スムダン電子を買収した時に見た記者会見の時の様に、ヤツは事も無げに涼やかな表情で言う



「何の用だよ。っていうか、どうしてここに来たんだ?」



チョン・ユンホは俺の問いかけには答えず
俺が油断した隙にドアを開けて勝手に中へ入って来た



『狭い事務所だな、こんな所で一生を終えるつもりか?シム・チャンミン』



無遠慮に見渡したヤツは
言う事にも遠慮のかけらもない



「余計なお世話だ。人の職場の文句を言う為にわざわざこんな所に来たのか?あんたもヒマだな」



俺も負けじと嫌味を言い返す



『バカを言うな。これでも一応それなりの企業のトップだぞ』



苦笑したチョン・ユンホの口元が上がり、涼やかな表情が崩れる
ヤツの唇が動くと、その艶めいた下唇に目がいってしまう



気づくと俺は



事務所の入口からジリジリと自分のデスクに追いやられて
不意の訪問者チョン・ユンホとの距離がどんどん縮まっていた






次回「渇欲31」は1/15(日)21時に更新致します

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華筏 第2章 ~星鏡 8~
2017-01-11 Wed 18:00


このお話はフィクションです





いつも居てくれる人が隣にいない
自らがそんな状況を作り出したにもかかわらず
そのせいでこんなにも眠れないなんて



馬鹿だなって
あっさり後悔してみたり



僕が思っている以上にユノは僕の中で息づいている
そんなことに今更気付いたり



頭を冷やそう…冷静になろう…
そう思ってこの部屋に来たというのに
それどころか睡眠すらも僕に訪れてくれなかった



ようやくうとうとし始めたのは
いつもは起きて動き始める時間だった



ドタドタという音が
入眠中の脳を再び覚醒させる



その音を立てる主は、僕のいるこの部屋を通り越しアトリエのドアを開けた
そして再びこの部屋を通り越して階段を降りていく



色を失ってから
その代償を神が与えてくれたからなのか、その他の感覚が研ぎ澄まされたようで



足音だけでその主がどこに向かい、何をしているのか
そんなことが分かるようになった



次はきっと
僕の名前を呼ぶだろう



『チャンミナっ?!』



ふふ…正解…



僕を寂しがらせた罰だよ、ユノ
僕はね、案外根に持つタイプなんだ



そう思い、ワザと頭からすっぽりと布団をかぶる
最後にきっと、この部屋のドアを開ける…



『よかった…ここに居たんだ…』



きっと今ユノは
外国のドラマみたいに大きく肩をすくめて、ホッとしているだろう
あのきれいな目を閉じて…



『チャンミナ…ごめんな』



ふふふ
悪いのは勝手にこの部屋で寝た僕なのにね
それでも謝ってくれるあなたが好き



前にまるっきり逆の状況だった事があった



あの時は
僕がユノの休みの日に朝一人で起き出し、アトリエでキャンバスに向かっていて



そんな僕のためにコーヒーを淹れて来てくれたユノがパジャマ姿だった事に小さく文句を言い
それをきっかけにユノがむくれてしまった



きっとユノは
僕がパジャマ姿でうろうろしないでと言った事よりも



せっかくの休みの日なのに
朝一緒に目覚めずおはようのキスもせず居なくなった事が、嫌だったんだと思う



今度は僕が
忙しいユノと一緒に過ごす時間が減ったということに怒って、子供じみた反抗をしているみたい



僕たちって
似た者同士なのかな?
あの日のユノも、今僕がやっているように布団を頭からかぶってた



『チャンミナ。お昼はさ、先輩の店に食べに行こう。それから…久しぶりに映画でも見に行くか?
星鏡の湖はまた今度でいいから』



僕が寝てないのを分かってて話しかけているユノ
それにちゃんと昨日僕が言ってたことも覚えてる
僕がユノの先輩に会いたいって言ったらヤキモチ妬いたくせにね



僕は黙って布団をめくる
ユノがちょっと困った子犬のような顔で僕を見ていた



「ユノ…」



ユノの誘いには答えず
ただ名前を呟いて彼の首に腕を伸ばす



恋に落ちたばかりの頃と全然変わらずに
どこかへ出かけるよりも、この人をここにずっと閉じ込めていたいって思ってしまう僕



そんな思いが僕の腕に乗り移るんだ



ユノは黙って身体を寄せて、僕に口付ける
彼の指が僕の髪を梳くようにゆっくりと往復する



『もう一回一緒に寝ようか。それとも…』



ユノはそう言ってもう一度キスをしてくる
今度のキスは、朝のそれには相応しくないくらい熱くて



僕は自然と閉じていた口を開けて
ユノの舌を誘い入れてしまうんだ



昨夜久しぶりに愛し合ったばかりなのに、それでも尚貪欲に彼を貪ろうとする自分がひどくあさましい



僕をこんなにしてしまったユノに…少しだけ腹がたつ



「ユノ…ごめんなさい。いつまで経っても僕はだめだよね。
あなたはもう僕のものなのに…もっともっと、僕だけのものにしたくなっちゃうんだ」



ユノの熱い舌を味わいつくしてから、彼の肩に頭を乗せた
僕だけの、ちょっと硬めの枕だ



『何言ってんだ。チャンミンだけじゃないよ。俺だって同じさ』



そう言ってユノは僕を抱き寄せる



似た者同士の僕たちが再び眠りに落ちて
もう一度仕切り直しで一緒に目覚めたのは、昼近くだった





-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


親愛なる皆様へ


ご記憶の方もいらっしゃるかと思いますが、愛犬の体調が芳しくありません


夜も数時間おきに起きて世話をしているので、私も疲労困憊の状況ではありますが
自分自身の気分転換にもなりますので、不定期更新ですが「星鏡」を再開させて頂きます


もしよろしければ、お付き合いください


ゆんちゃすみ


-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*





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渇欲 29
2017-01-08 Sun 21:00


このお話はフィクションです
性的な描写を含みます
ご注意ください







マンションの前で車を止めたセフンは
またも俺がギョッとする様な行動をとった



素早く車を降り、俺の乗る後部座席のドアを開ける



今時タクシーの運転手だって
こんな丁寧に客を降ろすことをしないよな



こんなことに慣れてるのは
せいぜい大会社の社長や財閥の会長くらいだ



…そう、例えばチョン・ユンホの様な



あの夜
俺の目の前に停まった漆黒のメルセデスAMG
ドアを開けた運転手に軽く手を上げて降り立ったあの男…



多くの人や車が行き交う雑踏の中で
ヤツの威風堂々とした雰囲気が、その場所だけを静寂で包んだ様な錯覚に陥らせた



バカな…
なんだって俺はこうも
あいつの事をいちいち思い浮かべるんだよ



そんな自分の事が気持ち悪くって
ドアを開けてくれたセフンに対し
「最後までご丁寧にどーも!!」と乱暴に言い捨て、走ってその場を後にした



どーなってんだ、ほんとに
あんな男に頭を下げられる筋合いなんかないっていうのに



何かにつけてヤツの顔を思い浮かべている事実から逃れようとして
セフンの妙な行動の方に思考を向けていた



自分の部屋に入って鍵を閉め、ホッとして玄関座り込む俺
ってか、何にホッとしているのかも自分ではよく分かってないんだけど



ベランダに出る窓のカーテンを開けて
閉め切っていた窓を全開にする
寒さより、どこか澱んでいるような自分の部屋の空気が嫌だった



それに自分の身体もまた
チョン・ユンホのせいで澱んでいるような気がして
部屋の空気を入れ替えた後、風呂に直行した



それほど大きくはない洗面台の鏡
そこに映される俺の身体
鏡の中の全裸の自分を見つめる



女みたいな細い腰と柔らかい肩のラインが嫌で
ジムで無理矢理作り上げた筋肉



俺は…
シム・チャンミンという虚像を作っているんだろうか



身体中に散らばるヤツの遺した紅い刻印が
そんな俺の虚像を嘲笑うかの様に見えてくる



『お前は何に渇いているんだ…』



膝に乗せた俺の身体
その中央を貫いたチョン・ユンホが俺に問うた言葉



その答えを見つけること、それは
ヤツの“真実”を知る事に繋がるんだろうか…



少し熱めのシャワーを頭から浴びる
ボディシャンプーで洗っても消えない紅い刻印は
【紫蘭】での時間を鮮明に蘇らせる



ヤツの艶やかな唇が俺の身体を這う
時にチリっとした刺激が身体に与えられ、その都度あの男の膝の上で身体をよじらせた俺…



悪魔の様な艶美な笑みを見せながら俺を突き上げたチョン・ユンホは
俺が〈何に〉渇いているのか気づいているんだろうか…



昨夜の記憶が蘇るだけで、俺の身体の奥が何かを探す様に疼いてくる
俺の身体が…自分のものじゃなくなってしまった気がした



あの男は…チョン・ユンホは俺が邪魔な筈だ
それなのに
なぜ再び俺を抱き、ホテルで眠らせるなんて事をしたんだろうか



シャワーを浴びさっぱりした筈なのに、頭の中は澱んだ感じが残る
昼間から…って思ったけれど、俺は冷蔵庫を開けビールを一気に呷った



2本目のビールを持ってテーブルの上のパソコンを開く
週末に更新したウェブニュースへの反応を確認しなければならない



ミノが居なかったから、今回は先週号と違い目ぼしい記事は書けなかったけど…



それでもあのアイドルの死に関する記事には、それなりにコメントが残されていた



今回の件の主要人物が最後に勢揃いしていた【紫蘭】にも少しだけ触れた
クラブの名前こそ出さなかったけれど、読む人が読めば何処の事か分かるだろう



今週はミノが帰ってくるから…
【紫蘭】の張り込みも、もっとしっかり出来そうだな



そんな事を考えながら、新聞社に寄せられたメールにも目を通す



意味の無いダイレクトメールばかりの中で
一つだけ、件名なしのメールに目が止まる



〈本気でアイツを追う気があるならば、あんたへ支援をしたいと思ってる
イタズラだと思われない為に、広告費として貴社の口座に金を振り込んだよ〉



何だ、これは…?
俺を支援をするだって?



“あんた”と“貴社”という言葉の統一性の無さが
かえってこのメールの信憑性の高さを感じた



〈アイツ〉と言うのはチョン・ユンホの事か?
記事にはヤツの名前を一切出していないけれど
なんとなくそう感じたんだ



スマホを開き、ネットバンクにログインする



そこには
広告費としては今まで見たことがない金額が振り込まれていて
振込元には“Lucifer”とだけ書かれていた



Lucifer…堕天使、サタンの意味だ



その名はまるで
俺の身体を弄んだ忌まわしきあの悪魔を象徴している様な気がした







次回「渇欲30」は1/12(木)21時に更新致します

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