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情火 第2章 ~扶翼 5~
2016-05-31 Tue 18:00


このお話はフィクションです

軍隊、及び軍内部につきましては実在の物とは一切関係ありません。ご了承ください





side Y



美貌の人という言葉が相応しい俺の恋人



背が高く、手足が長く、顔が小さい
恐ろしいくらい頭身バランスが良いので、少しの欠点すらも薄れてしまうほどだ



男にしては撫で肩だし首筋のラインも華奢で
腰回りもびっくりするほど細い
そんな彼は男なのに〈麗人〉という雰囲気を漂わせている



今日また一つ階級を上げて少将になった彼は、新しい任地である儀仗隊の制服に数々の勲章をつけて壇上に立っていた



ただそれだけで、そこに一輪の花が咲いている様な…そんな美しい姿に見とれてしまう自分がいる



海外の仕事でいわゆる男前っていう存在を散々見てきたけれど、制服を纏う彼の凛とした雰囲気はどんな一流モデルでも及ばないだろう



淡いグレーの制服は、美しい刺繍が施されていて
俺たち隊員のそれよりも豪華な金糸の装飾が施されている



今まで被っていた濃緑の軍帽とは一変して
黒いつばに白地の制帽を被るシム少将は、猛烈な暑さの中で一人だけ清涼感のある佇まいだった



儀仗隊の隊長が持つと言われる杖のように長い指揮棒を中央に立て、その指揮棒に両の拳を添えて辺りを睥睨としている様は



ゾクッとさせられる美しさだった



シム少将の気まぐれなのか
それとも彼の愛なのか



もちろん俺は後者だと思っているが…



兵役につく多くの芸能人が配属される軍の音楽隊ではなく、彼が新しく任務に就いた儀仗隊に本配属が決まった俺は



彼が責任者を務めていた新兵訓練所から、一緒に儀仗隊の建物に移ってきた



小一時間前
炎天下の中訓練所から移動をしてきたばかりで
俺同様汗だくになっていたはずのシム少将が



今は涼しい顔をして壇上に立っているのが、なんだか不思議な気分だ



照り返す太陽の下で、何やら考え事をして歩いていたシム少将の表情がくるくる動いていた気がして



もしかしたら俺のことでも考えてくれてるのかな、なんて自分に都合良く考えてみたり



ちょっとだけ顔を近づけて問いかけてみると、口調はいつも通りでも少し顔を赤らめてい様子の少将に、子供みたいにドキドキしたり…



ノーマルだった俺を絶対的権力の下、無理矢理抱いた男とは思えないくらいに
その相手を愛おしく思っている自分が不思議だった



訓練兵から正式に二等兵になり、僅かな額だけれど給料も貰える



訓練修了の祝いもしてもらったし俺も昇進祝いにせめて、凛とした彼の象徴のような百合の花束でも贈りたいと思った



欲を吐き出す時に俺の首にしっかりと咬みついて、自分のものだという刻印をつけるほど情熱的な男だから



真紅のバラの花束でもいいかな…



昇進式でお偉いさん達が訓示を述べている中、俺はそんなことばかり考える



シム少将とは、たとえ想いが通じ合っていても
普通の恋人のような事は出来ないとわかっている



けれど頭の中でそんなことを考えるくらいはいいだろうと前向きに捉えた



初めて会った時は、まさかこんなことになるとは思ってもみなかった



正直言って、その見た目に目を奪われたのは間違いない



圧倒的な階級の開きは、同時に恐れにもなって
彼に目の前に立たれジッと見つめられた時
背筋が凍ったことを昨日の事のように覚えている



予め決まっていた挨拶をいきなり俺にしろと言ったり、儀仗用の小銃を部下に用意させ司令官室で突きつけられた事もある



後から儀仗用の小銃には弾倉が入っていないと知ったけれど、初めて間近に見る銃は恐怖以外の何物でもなかった



それがトラウマになってしまい、小銃の訓練でまともに触ることすら出来なかった俺を射撃場に呼び出したシム少将



銃の大会で幾度となく優秀な成績をおさめているシム少将の的確な指導のもと、俺はあっという間に標的の中心を射る事が出来て、そんな達成感を胸に残したまま彼に抱かれたのだったが…



「今思えば、貴様の事が気になって仕方なかったんだろうな」



シム少将がその時のことを
ベッドの中でふと漏らしたことがある



俺も同じだった
上官である彼を、事あるごとに見つめていた



芸能人である俺よりも美しい彼に嫉妬したのもあるだろうけど、今思えば一目惚れってやつだったのかな…なんて思えたりもする



俺とシム少将の恋
それは上官と部下という禁断のものでもあり
男同士という禁忌のものでもある



でも俺は彼を愛してしまった



これから始まる21ヶ月の義務は
兵役という名の蜜月だと思っていこう



彼のために…そして何よりも自分自身のために
儀仗隊での任務をしっかりこなしていきたいと思った






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情火 第2章 ~扶翼 4~
2016-05-30 Mon 18:00


このお話はフィクションです

軍隊、及び軍内部につきましては実在の物とは一切関係ありません。ご了承ください




side C



訓練が終わった後、私は自分の兵舎に戻る
准尉以上の独身者が寝起きするこの兵舎とは、かれこれ五年の付き合いだ



階級が上がるたびに部屋のグレードも上がり、准将に昇進した時にこの部屋に入った



最奥の角部屋で、小さいがキッチンもついておりチェス以外にこれといって趣味もない私には使い勝手が良い



私が熱を出して倒れた際
トン中尉が余計な気をまわして、この部屋にチョン二等兵を送り込んだ事があった



その時彼に、私への想いを告げられたのだったが…



隣室はパク大尉が入っており、そういった面でも気が休まる



シャワー浴びた後、冷蔵庫からビールを取り出してお気に入りの椅子に腰かける



祖父から贈られたアンティークの一品はベルベット仕立ての生地が滑らかで、深い背もたれが包み込んでくれるような安らぎを得られる



私や父同様に軍を第一に考え家庭を顧みなかった祖父



そのせいで名家の出でお嬢様育ちだった祖母が、心を病んでしまった



“お姫様になりたい”
幼児返りしてしまってそんな願望ばかり口にしていた祖母を憐れんだ祖父は、家の家具を全てロココ調に変えた



そして祖母のために、白い大きなバルコニーが付いた一軒のロココスタイルの別荘も建てる
それが私に譲られて、私が恋人の訓練修了を祝った時に連れて行った別荘なのだが



祖母は祖父に贈られた豪奢な天蓋付きのベッドを喜び、永遠の眠りにつくまでその別荘を愛した



唯一の孫である私が産まれた時は



《目がぱっちりして、こんなに睫毛が長くて…この子は天が私に遣わしてくれた天使だわ》と喜んで
男なのにお姫様の様な格好をさせていたという



私の幼少期の写真は全て、豪華なレースの施された女の子用の服を着させられている
生れながらの軍人であった筈の私の、唯一見せられない過去なのだが…



ビールを飲み干して、ロココ調のサイドボードから最近気に入っているウィスキーを取り出し、今日はダブルでそれを楽しむ



そんな祖母のことを、晩年の祖父はこの椅子に腰かけて見守っていたと母から聞いた



少将になり、また一歩敬愛する祖父に近づいた
金の装飾が施された椅子の手すりを撫でながら、祖父に想いを馳せる



肉親の情が薄かったものの
私を可愛がってくれた祖母への慕情は強い



軍に入って以来がむしゃらに突き進んできた私が
忘れかけていた祖母への想いをこうして思い出すのも



あの男に凍てついた心を溶かされたからであろうか



普通の恋人の様に
電話で声を聞いたり、昨今の若いカップルの様にSNSで繋がることもできない私の想い人



今頃は兵舎で束の間の休息をとっているだろうか…



儀仗隊員が入る兵舎とは大きなホールを通してつながっているが、私の入る兵舎への来訪は出来ない。入り口に一人必ず見張りがいるからだ



トン中尉を呼び出し頼めば、彼女はあっさりとチョン二等兵を連れてくるだろう
が、しかしまだこの場所に来て一週間足らずで自室に恋人を連れ込む真似はしたくない



彼女のことだ
《恋人に会いたくてたまらないというそんな情熱的な少将もいいですね》と冷やかされる事が目に見えている



会いたくてたまらない…それは正直な気持ちだ
恋というのは、想いが通じた後の方がこんな切ない感情を生れさせるものなのだろうか



ウィスキーを置き、私服に着替えた私は気分転換に遊興室に向かうことにした
この時間なら誰かしらいるだろう。久しぶりにビリヤードでもするか



そう思い、施錠して下に降りていった



遊興室に向かう途中で、サイバー知識情報房を通りがかった



ここは兵士たちがパソコンを使って情報等を手にする事が出来る場所だ
チャットなどは出来ないが、比較的自由にインターネットを閲覧出来るようになっている



そこに
パソコンに向かう恋人を見つけた



同じような坊主頭でも分かる愛しい男の横顔
支給されているTシャツを着て、下は通常勤務服姿のチョン二等兵だ



私の足が向かわないはずがない
遊興室へ向かう足を方向変換させた



2台ずつ並べられたパソコン
空いていた隣の席に腰をかける
チョン二等兵は気づいていない様だった



パソコンの画面を見ながら、何やらブツブツ言っている



「何を見ている」



急に声をかけられ驚いた様子のチョン二等兵
少し顔を伏せた後、小声で『芸能界の情報を見ておりました』と答えた



やはり元の居場所が恋しいのだろうか…
少し寂しい気持ちがした



そんな私にはお構い無しにチョン二等兵はパソコンに目を向けたまま続ける



『少将にお会いできて嬉しいです…ここに来て以来なかなかお顔さえ見られませんでしたから。会えずに悲しんでいる私を神が憐れんだのでしょう』



…トン中尉が言っていた
付き合いたての二人にはクサいくらいの台詞が丁度良いと



この男の台詞もそんな感じだ
でも…確かに同じように思っていた私にとってはたまらなく嬉しい言葉だった



私が動く時、影となって私を守ってくれるパク大尉もトン中尉も居ないけれど
私の手は躊躇わずにチョン二等兵のもとに伸びる



どの方向からも死角になる位置で
愛しい男の手を握った



チョン二等兵の…ユノの温もりが伝わってくる
今すぐにでも抱きしめて、その唇を食みたい



いくら願っても、それは叶わない願望だ



分かっていながらも、ほんの少しだけこの愛しい男の温もりを満喫するのだった






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情火 第2章 ~扶翼 3~
2016-05-29 Sun 18:00


このお話はフィクションです

軍隊、及び軍内部につきましては実在の物とは一切関係ありません。ご了承ください




side C



儀仗隊長に着任した私は本来なら隊員の指導にも携わるが、1日のほとんどを執務室での事務仕事に費やした



訓練所の責任者の時同様、責任者というものは結局こんな感じなんだろう



相変わらず几帳面なパク大尉が、ほとんどの作業に段取りをつけてくれるおかげで仕事は捗るものの、前任者との引き継ぎの作業も多く、着任後の数日はほとんど隊員の訓練は視察できなかった



ともなれば
私は恋人の顔を見ることが出来ないという事で
せっかく自分の手元に置いたのに…というジレンマを感じる



顔が見られないだけで、こんな風に寂しい思いをするなどと自分でも想像すら出来ず



日に日に今迄の自分が消えてゆく感じがしたが
そんな自分も嫌ではなかった



一週間経って、ようやく私は隊員の元に足を運ぶことが出来た



グラウンドでグレーの練習用の制服を着た隊員が整列していた



今日は行進の訓練を行う予定だ
軍事パレード等で、我が儀仗隊が装飾の施された銃剣を持って行進する機会も多い



〈シム少将に敬礼〉



パク大尉の号令のもと、一斉に隊員が私に敬礼をする



容姿端麗なものが集められているせいで背が高い者も多く、私は恋人の姿を捉えるまでに今まで以上時間を要した



チョン二等兵は新人なので最後列に立っていた
彼の小さな顔が制帽の影で見えづらくなっていて、見つけるのを更に遅らせた



でもやつは…
制帽のつばの下から熱い視線を送っていた
相変わらず恋人に送るそれとは思えないような、射抜くような眼差しで私を見つめる



チョン二等兵を抱きしめたい
ただひたすらにそんな思いにかられてしまう
愛という感情は、理性をも破壊させる魔力を持っているのだと感じた



簡単な訓示を述べた後、隊員達は訓練へと戻っていった



足を揃えて隊列を乱さず行進してゆく隊員達
本番のパレード等では、行進をしながら銃剣をバトンのように回転させて演技を見せる



足を揃え、なおかつ手元では皆と合わせて銃剣を回したりする動作というのは簡単そうに見えて非常に難しい



全ての基礎となる行進は、毎日行われる重大な訓練だ



儀仗隊にも通常の陸軍兵に課せられた、戦争や危機状態を想定した厳しい軍事訓練が課せられている



が、しかし軍のイベントでの演技や国賓への儀礼に参加することが主な職務であるため、その訓練は少ない



そういった意味でも私なりにチョン二等兵を守り、助けているつもりなのだが…本人には伝わらないだろう



当のチョン二等兵は
元々はランウェイを歩くショーモデルだっただけあり、行進する際の姿勢も素晴らしかった



《行進の訓練には初日は随分苦労していた様子ですが、自室で練習に取り組んだ様で翌日から抜群の適応力を見せました》



まるで私の心を読んだかのように、横に立つトン中尉がそう言った



彼女は私に指示されて、チョン二等兵の監視を続けている



……こう言うと穏やかではないな
監視、ではなく見守ってもらっているというのが正しい言い方だろうか



《兵舎では年近い者と同部屋に致しました。性格や軍歴等、精査しておりますのでチョン二等兵を害するような者は居ないと思います》



私が彼を愛しているという事を知っているパク大尉とトン中尉は、今でもずっと影ながら支えてくれている



二人とも共通しているのは、聞いてもいない事をこうやって報告してくる事だ



パク大尉が穏やかな笑みを浮かべながら余計な事まで報告してくるのに対して、この女は無表情で淡々と言ってくる



彼女が唯一笑顔になった時は私が恋人の二等兵昇進を祝うため別荘に連れ出そうとして、彼女に言伝を頼んだ時くらいだろうか



《付き合いたての時は、少しくらいクサい台詞の方が喜ばれるものですよ》



そんな余計なアドバイスを寄越し、怒った私の組手を逃れながら嬉しそうに笑っていた



軍の内部では、未だに悪しき慣習が残る師団もある
芸能人のように目立つ存在は一層そのような輩の標的になる事も多い



それを見越し、尚且つ私の胸中を察し早々に手を打ったトン中尉に感謝した



私の大切な恋人に何かあってからでは遅いのだから



そんな心配をしている自分の変わり様に
苦笑せざるを得なかった



目の前を何度も通り過ぎる恋人は
きちんと前を見据えて、美しい姿勢をキープしている



ただ…
後で呼びつけ、叱らなければならない
私の前を通るたびに口元だけを綻ばせている様に見えた



そう思いつつも
私だけに送ってくれる、そんな恋人の甘さが嬉しい



パク大尉とトン中尉がいるとはいえ
まだまだ油断は出来ない新天地だ
万一の事もあるから、後でトン中尉にでも伝えさせよう



もし私たちの関係が表立ってしまえば大変な事になる



私は軍法会議にかけられ、残れたとしても軍の名誉を傷つけたという事で一生汚名を着ていくことになるだろう



チョン二等兵は即刻軍を追放、そして彼は芸能界からも姿を消すことになるやも知れない



私は…もはやそうなれば自分の身などどうなっても構わない



でも…
この男は自分の身に変えてでも絶対に守らねばならない



私が彼に手を出してさえいなければ
彼はそんな思いをしなくて済んだのだから



私がこの身を滅ぼそうとも
絶対にチョン二等兵を…ユノを守る






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情火 第2章 ~扶翼 2~
2016-05-28 Sat 18:00


このお話はフィクションです

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CPはミンホです
ご注意ください




side C



軍の花形である儀仗隊は
多くいる軍人の中でも容姿に優れた者しかなれない隊だ



規律に厳しく、寸分違わずに列をなし
海外の要人を出迎える式典などでその姿を披露する



私の恋人は、整形が当たり前だという芸能界でも珍しく自然な美形の持ち主だという記事を、以前彼の事を調べようとしてネットで見た



その記事に書かれた通り、初めて目の前で彼を見た時には息を飲んだ事を覚えている



私に男の味を教えた昔の恋人も、男と思えない様な透き通る白い肌を持っていたが、彼もまたハリがある美しい肌をしていた



この男の肌に
自らの指と舌を滑らせてみたいと思ったものだ



そんなことを思い出しながら
着慣れていた軍服から儀仗隊の制服に着替える



陸軍のそれは濃緑の重厚なものだが儀仗隊の制服は見た目からして明るい色をしていて、華やかな金糸の装飾が施されている



それを纏った自分よりも
これを纏った恋人を見たいと思った



あのスタイルだ…
そして、元々が人に注目される仕事をしていた男だから、さぞかし見事な姿になるだろう



そう思いながら支度を終えた






陸軍所有のホールで行われた着任式に居並ぶ面々
さすがにスタイルも良く、見栄えが良い隊員ばかりだった



その中でも私の目は、愛しい男を真っ先に捉える



思った通りだ…
淡いグレーの制服を着て、制帽を被るチョン二等兵



儀仗隊に兵役の人間が配属される例はあまり無い
しかしパク大尉が事前にこちらに赴き下準備を整えた筈だから、チョン二等兵が軍特有の洗礼を浴びる事は無いだろう



隊員の兵舎にはトン中尉を責任者として送り込んである



彼女もまた男勝りの勝ち気さで、自分の意に従わない部下には情け容赦なく平手打ちを食らわすほどの女だ



チョン二等兵を陰ながら守ってくれるだろう



ふっ……私も甘い
恋人が苦労しないようにこうやって方々に手を回しているのだから



私は彼を愛している
彼が受けるであろう苦労がわかっているのであればそれを助けたい



彼を守らなければならない



軍内部の厳しさを知っているからという事もあるが、国の義務で来た場所に苦い思い出を作ってほしくなかった



何よりも
軍は私が生きている場所だ
我が軍は私の人生そのものだから、彼の記憶に嫌なものとして残したくなかった



チョン二等兵との恋は…
彼の一年九ヶ月という兵役が終わったと同時に終焉を迎えるかもしれない



だから、私と過ごすこの期間を
良い記憶として刻んで欲しい



…こんな事を思う自分に驚いているのだが
少しずつ自分の変化を受け入れられるようにもなってきた



そして私はこの日
准将から少将に昇進した



軍の順列でいえば、上から4番目になる
私の年齢で少将に昇進する事は前例がない



私の昇進に口を出すような輩を抑え込むために私は実績を黙々と積んできたから、軍事定例会でも異議は出なかったと聞いた



あと一つで、私に嫌な思いを散々させたあの上司に追いつく



軍トップの元帥である父親の威光を借りずとも
シム・チャンミンという一人の軍人して、必ず上り詰めてみせる



屈折した感情を持て余して、手当たり次第訓練兵に手をつけていた愚かな私はもう居ない
最愛の人を得た私はそういった面でも大きな自信を得た



遠くからも、私をジッと見つめているのがわかる
チョン二等兵…貴様のその熱い目は何かと厄介だ



私の体の奥から情欲の焔を引き出すその目…



私が抱いている側だというのに
チョン・ユンホという大きな存在に抱かれているような…そんな錯覚を起こす愛の行為



彼に愛していると告げられた時、私を自由にして良いという賭けをしてあえなく完敗を喫し、私はあの男に初めて抱かれたのだ



本来なら私が抱く方だというのに…



チェスでの敗北に加えて、初めて抱かれてしまったという屈辱的な事でも、あの男との夜は甘美なものだった



その時点で私は
チョン・ユンホという一人の男に染められたのかもしれない



彼が私を見つめる鋭い眼差しは、その甘い記憶を蘇らせる



基礎訓練を終えて晴れて二等兵に昇進した時は、私の別荘で二人だけで祝ったのだが



あの夜は、恋人として初めて一晩を共にした記念すべき日だった



チェスで勝った時は私を抱きたいと言ったものの
彼はその晩も、今までと同じく私の下で喘いだ



端正な顔を赤らめて
美しい漆黒の瞳を潤ませて私に身を任せる



ただ
私が今まで抱いた男たちと大きく違ったのは
私に抱かれている立場でも、主導権は彼が握っている錯覚に囚われた



『俺という存在で、チャンミンの全てを包みたい』



そう耳元で囁いた後、自分の身体の中を使って私を限界まで追いつめたのだった



あの夜は
少将と二等兵という階級の開き以上の大きな彼の愛で私が満たされた



そんな思い出のひと夜だった






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情火 第2章 ~扶翼 1~
2016-05-27 Fri 18:00


このお話はフィクションです

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side C



今月一日付を以って
長らく務めていた新兵教育訓練所での任務を終えて新しい場所に赴く



この場所で…色々な経験をした
私らしくないそんな感傷めいた思いを胸にして訓練所の建物を後にする



正直な思い、素人の教育など私に合う任務ではないと思った
こんなことをするために私は血の滲むような努力をしたわけではなかったから



私は…生まれながらの軍人だ
祖父や父以上の軍人になるために猛烈な努力をした



士官学校をトップの成績で卒業し、その後も銃の大会で優勝するなど着々と実績を積んだ



ただ
軍のトップである元帥の息子である私は、羨望だけでなく妬みや僻みの対象にもなり



上官から嫌味を言われながら訓練所勤務を任命された時…この男よりとにかく早く上位に付き、軍から追い出そうと胸に誓ったものだ



しかし
今は、そんな上官に感謝をしている



かけがえのない存在をこの場所で手に入れた



私の後に続いて歩くこの男
チョン・ユンホ二等兵……
彼は国を代表するトップ俳優だ



入隊義務を課せられた年齢ギリギリで兵役に就いた彼は、複雑な運命の歯車に乗せられて私の最愛の人になった



彼は5週に及ぶ基礎訓練を終え、二等兵として私が新しく着任する儀仗隊に配属されている



希望していたのは軍の音楽隊…といっても本人の希望ではなく、彼を飯の種にしている事務所の強い意向だが



私は訓練所最高位の権限を最大限に使い変更させた



彼は2年近くの兵役義務を終えれば、軍から去っていく人だから…せめて兵役の間だけでも私のそばに置いておきたかったのだ



私は変わった



訓練兵に思いのまま手をつけ、弄んでいた私が
一人の男と出会い彼を愛し、そして愛された事で感情を大きく動かすようになった



儀仗隊に彼を連れて行くのもそのせいだ



見慣れてきた迷彩柄の勤務服
性欲の赴くままに気に入った訓練兵に手をつけていた時と同じように、この男のこの服を脱がせて抱いたのはたった数週間前だ



今はただ…
このまま振り返って抱きしめてしまいたいくらいに愛おしい



溜まった欲望を吐き出す道具ではなく
愛している事を伝えるために抱きしめたいのだ



……今までの自分とはかけ離れたそんな思いに、思わず苦笑した



『准将…何かおかしいですか?』



一人で顔をあれこれ変えている事に気付いたチョン二等兵が私の顔を覗き込む



彼の端正な顔が間近に迫り、思わず心臓が音を早めた



「何でもない。そうやって顔を近付けるな。人が見るぞ」



儀仗隊の建物は訓練所からは真逆の位置にあり、同じ師団内を歩くだけで汗が噴き出す
顔を伝う汗を拭いながらやつにそう言った



真横に並んだチョン二等兵は
目の前で人が害められようとも眉ひとつ動かさなかった以前の私のように、顔色を変えずに続ける



『准将がそうやって笑みを浮かべている顔が好きです』



誰が見ているか分からない状況下で耳元に艶めいたその唇を寄せ、こんな危険な事を言うこの男が憎たらしい



私らしくもなく顔が赤くなってしまった気がして俯いた



どうもいけない
私が思いのままにこの男を支配する筈だった
それなのにどうだ



今はこの男が囁く甘い言葉で顔を染めてしまう
付き合いたての恋人同士というのはこういうものなのだろうか…



顔が緩む自分に喝を入れるように胸を二度叩き
恋人である部下を引き連れ儀仗隊の建物に入っていった



〈お待ちしておりました、シム准将…いえ、シム少将〉



今日の着任式と同時に私は少将に昇進することになっている



本来はこの儀仗隊での服務を終えた後に昇進するはずだったが、先だっての銃の世界大会で優秀な成績を収めた事で早まった



昇進前に先走って私をそう呼んだのはパク大尉
私の父に可愛がられその恩義から軍に入った私の影となって今日まで支えてくれている人物だ



訓練所で私がしていた愚行を表に出さないように
彼の直属の部下であるトン中尉と共に密かに後始末をしていたのも彼で



そんな私がチョン二等兵に少しずつ変えられていると気づいて、二人の橋渡し的に動いたのもパク大尉だった



私が自分の意にそぐわない訓練所への配置に憤慨して直訴したた時には〈色々な経験を積む事も軍人には必要だ〉とピシャリとはね退けた父



私の異動と共に元帥である立場を使ってパク大尉達をそこに配属させた



過保護なのか監視するつもりなのかよく分からないが…



チョン二等兵は、パク大尉と一緒に出迎えに出ていたトン中尉に今日から生活を送る兵舎へ連れていかれた



それを見送った後、パク大尉に案内されて儀仗隊長室に入る



チョン二等兵を兵舎に送り届けたトン中尉が戻ってきて冷たい水と冷えたタオルを持ってきた
まずはありがたく喉を潤す



これからこの部屋で軍務に就くことが多くなる…
〔第25歩兵師団 儀仗隊長 シム・チャンミン〕
きれいに磨かれた机に置かれたプレートを指でなぞり、軍帽を置く



これから予定されている着任式に向け
私は汗で濡れたシャツを脱ぎトン中尉が持ってきた冷たいタオルで身体を拭いた



今日が新しいスタートだ



少将に昇進し、儀仗隊長という新しい任務を受け
そして私の恋人との兵役という名の蜜月の始まりだ…





タイトルは今回もAli様の作品で飾らさせて頂いております

私にはもったいないくらい素敵な作品を作っていらっしゃいますので、ぜひお運びください

ホミンを愛でるAliの小部屋


〈拍手コメントの御礼〉

〇みちゃん様
お待たせ致しました!〇みちゃん様の好みに合うか不安ですが...今日からまたお付き合いをよろしくお願いします♡

オ***様
ご期待に添えるよう頑張ります♡月日を追う事に少しずつ変化する二人を書けたらと思っております



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今後の更新につきまして
2016-05-26 Thu 16:00



親愛なる皆様


こんにちは
お変わりございませんでしょうか?


「密事」最終回にたくさんの拍手や温かいお言葉を賜りまして、本当にありがとうございました


悩んでいたという弱音を吐露してしまったにも関わらず、たくさんの方に励ましのお言葉をいただき、とても嬉しかったです


このような顔の見えない空間でのやり取りでも、気持ちというのは伝わるものなんだと改めて実感した次第です


応援して下さったたくさんの皆様に今一度心よりお礼を申し上げます




〈今後の更新につきまして〉


「密事」あとがきでも触れました通り、以前連載させて頂いておりましたお話の続編をスタートさせていただきます





「情火」全36話


こちらは〔ミンホ〕のお話になります
また、舞台を軍隊とさせて頂いておりますので、ご覧になる際はご注意願います


「華筏」全37話


こちらは〔ホミン〕のお話となっております





上記2作品の続編を更新いたします


なお、私事で大変恐縮ございますが勤務しております職場が繁忙期になっており、通常の勤務形態より勤務日数等が増えております


そのため非常に心苦しいのですが、お話の連載は一日置き又は以前のように数日間お休み期間を設けさせて頂くようになるかと思います


勝手ばかり申して大変恐縮でございますが、何卒ご理解を賜りますようにお願いいたします





それでは…
今後ともどうぞよろしくお願いいたします


ゆんちゃすみ





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眷恋 (後篇)
2016-05-22 Sun 18:00



拍手50000回記念に作りました
よろしければお付き合いください

あくまで個人の妄想で
実在の人物とは一切関係ありません

五人時代に触れています
ご注意ください





side Y



『チャンミナ…じゃあ明日から俺が“おはようのキス”をしてあげる』



・・・・・俺は今何を言ったんだ?



正直言って俺は酒にはめっぽう弱い
こんな子供騙しのカクテルを二本程度飲んだだけで、自分で何を言ってるかわかんないほど酔ったのか?



目の前で俺に手を握られうつむいていたチャンミンは急に顔を上げた



「いいの?ヒョン…うれしい…じゃあ僕、寝るね」



チャンミンは聞き取るのもやっとなくらいの小さな声でボソボソ言って、自分のベッドに潜り込んだ



えーっと…
って事はだ。
俺は明日の朝、チャンミンにキスをすればいいんだな?



・・・・・



オォイ!!ちょっと待て!!
どうして俺はこんなに胸がドキドキしてるんだよっ!



チャンミンは男だぞ?!
ドキドキしてる場合じゃないし、そもそも男にキスって俺は何を言っちゃってるんだよ



チャンミンもチャンミンだ!!



「いいの?」じゃねぇだろっ!!
「何言ってんの?」だろっ、そこは!!



俺はすっかり酔いも醒め(と言いつつ、酔ってたかどうかも微妙だけどさ)隣のベッドで丸くなっているチャンミンを見やる



チャンミンはあっという間に夢の世界に入っていったようで、酔ってた割に静かな寝息を立てていた



いや、確かにこいつは可愛い
マンネだし、目をかけてきたっていうのも正直な気持ちだ



気づくと隣に居て俺の世話を焼いてくれるし
俺の話すことをすぐ隣にいるというのにジッと見つめながら熱心に聞いてくれるし…



かといって、それは男同士でキスする理由にはならない



頭ではそう思いつつも



さっきの潤んだ目とか
ちょっと半開きになってた口とか
男のくせに妙に細いうなじとかが



目に焼き付いてしまって消えてくれないんだ
どうしたんだろ…俺は



ゆっくりと寝ているチャンミンに近づいた



細くて大きな身体を器用に丸めて
胸の前で手を揃えて布団にくるまっていた



スースーと規則正しく寝息が聞こえて
ちょっと大きめの口はぎゅっと真一文字に閉じられている



睫毛が長い…
大きな目を閉じていても、可愛い顔だってわかる



なぜだろう
俺の手は見えない何かに操られるように
彼の頭を撫でた



チャンミナ…
まだまだ親に甘えたい頃からおまえは俺のそばに居てくれたよな



「ヒョン!はいっどうぞ」



そう言いながらレッスンの合間に飲み物を持ってきてくれたり



可愛らしい顔で俺を見上げていたおまえは
いつの間にか俺よりも大きくなって



なぜかそれを気にして、猫背になってさ



年下だから時に甘える事もあったけれど
大勢の兄達に気を配るのは大変だったと思う



“おはようのキス”をしてくれなくて
っていう感情なんかわかんない
そんな風に真剣に悩むのも、おまえが根は真面目だからだ



チャンミンの丸い後頭部を撫でながら、そんなことを思う



愛おしい
可愛い



この気持ちは間違いない
自分でもよくわかってる



その上のよくわからない感情は
今はまだわかんなくてもいいか…



俺はチャンミンのベッドに潜り込んで彼の背の方に自分の身体を横たえた



そして自分の意図もよくわからないまま目の前の後頭部に口づけて、目を閉じた






腕の中の温かい存在が
俺の心を穏やかにしてくれる



自分の頭の中でどう認識しているのかわからないのに、俺の腕はその温かい存在を抱え込むんだ



夢と現を行ったり来たりしながら
モソモソと動くその存在がチャンミンだと認識した



目を開けると
背を向けていたはずのチャンミンが俺の腕の中で身体を反転させて、大きなその目でジッと見ていた



意識して、した事じゃない
昨日の一件が頭に残っていたのは事実だけれど



俺を上目遣いで見つめるチャンミンの頬を親指で撫で…俺はその唇に吸い寄せられた



『おはよ、チャンミン』


「…ユノヒョン…おはよ…」



唇が離れて互いに挨拶を交わす
チャンミンは少し顔を赤らめて、俺の胸元に顔を埋めた



「ヒョン…起きる時間にはまだ30分ありますから」



チャンミンはそう言って、もう一度目を閉じた
俺も『そっか…じゃあいいか』と彼に続けて目を瞑った



あまりにも自然に“おはようのキス”は交わされた
そしてその日から、後から風呂に入った方がもう片方の寝ているベッドに潜り込むのが普通になった



翌朝のキスも自然に交わされ
そのまた翌朝のキスもどちらからともなく交わされる



そのあとは、二人とも何事もなかったように普通にリビングに顔を出しみんなで飯を食い、支度をして仕事に行った



そんな風にして
俺とチャンミンの“おはようのキス”は日常化していった






この日は、俺
疲れが溜まってたのかな
それとも、どうかしてたのかな



それとも…それとも訳のわからなかった感情が、チャンミンの事が好きだと言う事だと気づいてしまったからだったのかな



いつものように寝ているチャンミンの横に身体を滑り込ませて、腕を回す
俺が来た事を夢の中でも気づいたのか、モゾモゾと動くチャンミン



「……っんっ……ユノ…ヒョ……」



彼が寝ぼけて言った言葉がなぜか色っぽく聞こえた俺は、下半身に血が集まっていくことに気づき慌てた



やべっ…俺ってば何で勃ってるんだよっ!



色々な事情と自然な流れでキスを交わすようになって、俺はチャンミンが好きだという自分の感情にも気づいたけれど



同性の、ましてや自分のグループのメンバー相手にソコを勃ててるなんて、本当にどうしちゃったんだよ…



俺は逃げるように自分のベッドに潜り込んで、ただひたすらソコが落ち着いてくれる事を待った



翌朝
そのまま寝てしまった俺は久しぶりに一人で目覚めた



いつも自分の側に居た温かい存在は当然なくて
隣のベッドを見てもチャンミンは居なかった



たった数日で
チャンミンの温もりがすぐそばにある事が当たり前になってたと実感する



でもさ…
これ以上一緒に寝て
“おはようのキス”を続けたら




もう、なんかダメな気がする



自分が自分じゃなくなってきてる気がして
チャンミンの事を…本当に好きになっちゃったみたいで、なんかこわいんだ



あいつを抱きしめて
アレがああなっちゃっただなんて…ヤバイだろ



チャンミンの事を…
抱きたいって身体が言ってるようなもんだから



頭をガシガシかきながらリビングに入ると
他のメンバーは誰も居なくて、チャンミンだけがソファーに座り、ゲームをしていた



足音に気づき振り返るチャンミン
俺だと認識した途端、今まで見た事が無いような大人びた表情をした



切ないような
苦しそうな顔



ああ…
きっとこんな気持ちなのかな
あの歌詞にこめられた心情っていうのは



あの曲は、他の女の子といたという噂を聞いた彼女が怒ってキスをしてくれなかったっていう意味だけど



俺たちはもっと複雑な気持ちなんじゃないか?



チャンミンのそんな苦しそうな表情が堪らなくて
俺はソファーの後ろから彼を抱きしめた



『ごめんな、チャンミン』


「ユノヒョン…僕、なんだかどうしよう…』



ついこの間と同じようなセリフを言うチャンミン
そして俺は上ずってしまったこの間よりも落ち着いて聞いた



『どうした?チャンミナ…ヒョンに言って?』



毎朝嗅いでいたチャンミンのシャンプーの香りが鼻をくすぐって、抱きしめる腕に思わず力がこもる



「ヒョンが…僕…ユノヒョンが好きだ」



チャンミンは抱きしめた俺の腕に自分の手を重ねた



チャンミナ…
なんか、俺たち
一気に両思いになっちゃったぞ



でもさ
恋なんて始まるときのルールなんかないんだから
これでいいんだ



大人になったおまえで
この曲を歌ってくれ



抱きしめていたい5分だけでも
感じ合ったその続きは …tonight




今夜
俺のものになってくれ






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眷恋 (前篇)
2016-05-21 Sat 18:00



拍手50000回記念に作りました
よろしければお付き合いください

あくまで個人の妄想で
実在の人物とは一切関係ありません

五人時代に触れています
ご注意ください





side Y



いよいよだ…



今年は俺たちにとって大きな転換期となる
そう、この国に生まれた男子にとって重大な責務に臨む



俺はもう残された時間は余りなかった
今までがむしゃら突っ走ってきたから、結局ぎりぎりの年齢になってしまったんだ



このグループは俺ともう一人
目の前で黙々とスマートフォンのゲームに興じているチャンミンと二人だけだから…俺が行けば、こいつは一人になる



こいつにはまだまだ猶予があったから、本来だったら俺と同じようにそこまで伸ばすという案もあったけれど



チャンミンは自らそれを拒否した
「僕はユノと一緒に行きたい」と言った



だから今年
時期は4カ月ずれるけれど、二人で課せられた義務に臨む事にしたんだ



この国での最後のライブツアー



大きなドーム会場全てで、俺たちの今の姿をファンの目に焼き付けてもらいたいと思っていたから、いつも以上に選曲に時間がかかった



二年間の空白の時間があっても俺たちの事を覚えていて欲しいという思いで、俺は自分の考える曲を推したしチャンミンもそれを譲らなかった



「僕〈NO〉を歌いたい」



突然チャンミンが言い出す
〈NO〉か……懐かしいけれど同時に辛い記憶も蘇る時期の曲だ



〈NO〉と同じ時期の曲は当然これまでも選曲してきたけれど



この曲は俺とおまえにとっては、何だかくすぐったい記憶が蘇ってきて…俺は思わず会議中の机の下でチャンミンの手を握った



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*



ソウル市内の宿舎
五人いたメンバーは二人と三人という組み合わせになって同じ部屋で寝起きをしていた



俺はチャンミンと同室だった
親友のキュヒョン共々毒舌のブラックマンネとも言われていた彼は、実はすごく気配りが出来て宿舎に帰れば甲斐甲斐しく世話をやかれた



チャンミンは他の兄達へも何かと世話をしていたけれど、俺はリーダーからか余計に気を遣われていた気がする



黙っていても気づけば隣にいて
俺のために動いてくれるチャンミンが可愛くて仕方なかった



とある日
韓国での活動中、この後予定されている日本でのアルバム曲の歌詞が配られた



マネージャーが運転する車で宿舎に戻った俺たちは食事を済ませた後
各自思い思いにその内容に目を通していた



俺は一番乗りでシャワーを済ませ、日本で飲んで以来ハマっているカクテルドリンクの缶を持って部屋に戻った



自分のパートの歌詞以外も、曲そのものの意味を理解するために韓国語の訳を読みながら意味を頭に入れていく



アルコールが少し入るとテンションが上がり、歌詞にに込められた思いがスゥっと入ってくる気がして、最近よくやっていた



ご機嫌ななめlady
おはようのKissもしてくれなくて
このゲームをクリアするには...?




なんか、いいな
今までにない大人の雰囲気で…
歌詞を読んでいきながら、ちょっと違う俺たちを見せられる気がした



何度も繰り返して読んでいるうちに曲の雰囲気に入り込んでしまったようで
俺の真後ろにぴったり寄り添って覗き込むチャンミンに気づかなかった



『うわぁぁぁ!!いつからいたんだよっ!』



耳元にかかるチャンミンの息がくすぐったくて急に現実に引き戻される



「10分くらい前から居ますって。歌詞を一通り読んだ後シャワー浴びてリビングでビール飲んでから来ました」



こいつは酒呑みだから、多分ビール飲んだイコール数本飲んだが正確なところで
案の定俺の肩に乗せる顎が熱っぽくなっていて
どうも、だいぶ酔ってるみたいだった



「ユノヒョン…僕どうしましょう」



チャンミンは顎を肩に乗せるだけでなく、おぶさるように俺に身体をもたれさせてくる



アルコールのせい?
それともさっきまで読んでいたsexyな雰囲気の歌詞にのめり込んでいたせい?



チャンミンの息が耳にかかるたびにゾクゾクして
背中に伝わるチャンミンの心臓の音が俺の鼓動を速める気がして



『っ…チャンミナ?どっ、どうかしたのか?』



彼に答えた言葉が上ずってしまう



「ユノヒョン…僕…この曲の出だしを歌う自信がありません」



ビールは酔いが醒めるのも早いし酔いが回るのも早い



チャンミンは数本のビールのせいで呂律が回らず、低めの声でやけに早口気味にそう言った



『どうして?おまえがAメロだなんて、歌唱力がどんどんアップしてるっていう証拠だろ?』



事実
双璧のメインボーカルがいるグループ内でチャンミンのパートはそんなに多くはなかった
だけど俺は、こいつの伸びのある声が好きだった



普段の喋る声とは結びつかない美しいハイトーンボイスは、その実力で合格を勝ち取った実績に相応しいもので初めて聴いたときは鳥肌が立ったっけ



「自信が無い」という発言はリーダーとして聞き捨てならない。これはしっかり理由を聞かなければならないと思った



『チャンミナ。俺にちゃんと理由を聞かせて?』



自分の身体を捻って背中にもたれるチャンミンを自分の方に向かせ、手を握る



俺はリーダーだ
グループのマンネで、どちらかというとネガティヴ傾向があるこいつのことは守ってやらなければならない



チャンミンは、大きな瞳でジッと俺を見つめた



「僕、女の子と付き合った事があってもそういう経験も乏しいのに…こんな雰囲気のある歌詞はどうやって表現したらいいかわかんない…」



・・・・・



どうしたんだろ、俺
チャンミンの瞳が潤んでいるように見えて
胸がドキドキしたんだ



可愛い女の子に上目遣いで何かを強請られているような錯覚に陥った



「ヒョン…僕、“おはようのキス”なんてした事ないから、“してくれなくて”っていう気持ちがわかんない」



・・・・・



わかんない…としょんぼりうな垂れた
チャンミンの細くてきれいなうなじ



少しだけ赤く染まって見えた



同じようにシャワーを浴びた自分からもしているはずの、同じボディソープの香りがほんのり俺の鼻をくすぐって



俺の中で
何かよくわかんない感情が芽生えたんだ






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耽溺 第2章 ~密事 特別篇 後~
2016-05-20 Fri 18:00


このお話はフィクションです
BL表現を含みます
ご注意ください





side MAX



僕の足は自然にユノの元に向かった



シンプルな黒のピンストライプ地のスーツを身に纏い、華やかな場所に合わせたようにシルバーのラメが入ったネクタイを締めているユノ



その前に座るACEはユノと対照的な真っ赤なロングジャケットを着ていて



黒と赤との美しい色のコントラストが、このカウンターバーを一枚の絵のようにさせていた



キュヒョンに散々釘を刺されたけど
もう僕も我慢の限界だ



僕よりずっと年下のACEにヤキモチやくのもみっともないって思うけど…ユノの隣に居ていいのは僕だけだから



ユノの腕を掴んで嬉しそうにぶんぶん振るACEの背後から近づいて、じっとユノを見つめる



ユノが僕を見た
最初僕ににこっとした後、ふと考えるような表情になって…最後は何だか一人で納得したように大きく頷いた



ユノのそんな表情の移り変わりが何だったのか、僕にはちっともわからなかったけれど



とにかく「ACEよ、僕のユノの腕を離せ」と言うために近づいたその瞬間、僕はいきなりユノにグッと引き寄せられた



『ごめんな、ACE。俺は…こいつのものだから』



ユノから発せられた一言に飛び上がった
これじゃACEに僕たちの仲を宣言したみたいじゃないか…バレたらどうするんだよ



ACEは普段は天然っぽい雰囲気だけれど、咄嗟に自分のキャラを生かしてユノをかばうような鋭さを持ってるから絶対に気づくと思った



案の定、大きな蒼い瞳をクルクル動かして何やら答えに行き着いたらしく、僕に向かってにっこり微笑む



〈チャンミン先輩!僕まだまだあなたの背中は遠くて、でももっとモデル頑張って背中が見えたらもう一度ユノヒョンにチャレンジ!〉



やっぱり気づいたし……
それに!!やっぱりユノにアタックする気だったんじゃないか!!!うわぁぁぁ!



僕の頭は急な事にパニックになる
バレた!ユノのこと好きだったんだ!ヤバイ!
同じ言葉が頭の中で駆け巡る



それなのに当のユノは
なぜか余裕めいてドンと構えている
挙げ句の果てには



『俺は自然体で行きたい。これからもずっとおまえのそばにいるんだから。だからさ…おまえも、もう無理はすんじゃねーぞ』



なんて、僕が乙女じゃなくてもクラクラするくらいカッコいい事をサラッと言って…もうほんと、この人のズルさにやられっぱなしだ



僕たちの恋は密事だけれど
決して悪い事をしているわけじゃない
そうだね、ユノ…僕も自然体であなたに全てを任せるよ



そんな決意をして、愛しい人の首に腕を絡めた






一階のレストランから僕の泊まるセミスイートまでの距離が、ソウルから済州島までのそれよりもずっと遠く思える



カードキーでドアを開け
扉が閉まる寸前から抱き合う僕たち



ユノからの性急なキスは、初めから蕩けるくらいの熱さで



僕は彼の勢いのまま廊下の壁に押し付けられた



両手をしっかり掴まれたまま壁に拘束された僕は
熱すぎるユノの舌で口腔内をも支配される



彼の逞しい太ももが
僕の中心で彼を求め始めていたそれを下から撫でるように刺激してきて



僕の目の前がチカチカした



最後の衣装を着た直後と同じように
ユノは自らが着せたジャケットのボタンを外し、僕のネクタイを強引に引っ張る



引っ張られたことで緩まっているのに
そのネクタイはまるで彼の意思が乗り移ったように僕を縛り上げてくるんだ



はだけた僕の胸を這う彼の指
すごくそばにいたのに、触れられるのは衣装を着せてくれる時のこの指だけだった



今はその指が嫌というくらいに
胸だけでなく僕の頬や首筋、そして腰を撫で上げてくる



たったそれだけで
それだけで愛しい人を待ち構える僕の場所が疼くんだ



互いの体を愛撫しながら廊下の壁を伝い動き
僕はようやく辿り着いたリビングのテーブルに押し倒される



『チャンミン…』



ユノが僕を呼んでくれるその声もまた
僕の身体の中心と奥をじわじわと熱くしてきて



ユノのそれが欲しいんだ
そうせがんでしまう様に腰を揺らした



『悪りぃ…俺…もう余裕ねぇ…』



ユノが呻くように言った後
僕はテーブルに片足を乗せられて貫かれた



彼の頭を抱えて僕はその激しい熱さに耐える



「…あぁ…ユノ…」



僕自身も余裕なんか全然なくて
やっとの思いで愛しい人の名を呼ぶ



僕の中で愛を伝えるそれが、ぐっと強さを増した気がした



テーブルに乗せられた足はいつの間にかユノの手に抱え込まれて今度は僕自身がテーブルに乗せられる



ユノの全てが熱いから
硬くて痛いはずのテーブルがむしろ冷たくて心地よい



僕の嫉妬も
ユノの嫉妬も全て
この済州島で捨てていこう



僕はあなたを絶対に離さない
そんな気持ちを込めて、彼の腰を両足で拘束した



僕のそれから溢れる雫が
お互いの身体の間で溶け出している感じがする



抽挿のスピードが緩やかになり、ユノの美しい指が互いの身体の隙間に侵入して僕のそれをしなやかに包み込む



彼の愛が指から伝わってきて
程なく僕を高みまで追いつめた…






息が整うまでの時間
ユノは僕の顔を何度も何度も撫でてくれて
この人に愛された余韻を満喫する



「…ユノ、僕たちさ…余裕ないね」



撫でてもらったお礼代わりのキスを彼の鼻に贈る



『ごめんな…ほんと余裕ねぇ…』



そこが硬いテーブルだった事に今更気付いたユノが慌てて僕を抱き起こし、そのまま抱えてソファーに移動する



『こんな広い部屋だってのに…何も一番痛そうなとこでさ…ほんとゴメン』



「…ふふ…僕も我慢出来なかったから。いいんだ」



そう言ってユノに抱きついた



ユノは僕を抱きとめた後、心配そうに背中をさすってくれる



窓に映る僕を見たユノが、僕の身体の向きを変えた



『チャンミン、背中赤くなってるよ…ごめんな。俺のせいだから俺が治してあげなきゃ…』



ごめん、って言ってたくせに…



ユノは僕の背中に舌を這わせて
さっきよりはまだマシなソファーで、再び僕を抱いた



ねぇ…ユノ…
僕たちさ



いったいいつになったらベッドに辿り着けるんだろうね



でもいいんだ
僕も
そんな余裕がないから



余裕が出来るのはいつになるかな
ねぇユノ
ずっと余裕がなくてもいいかな?



それくらいあなたを愛してるよ…






MAXとユノさんの済州島の夜でした



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*



拍手コメントの御礼

ち***様
最後までお付き合い下さり本当にありがとうございました♡そしていつも嬉しいお言葉も頂戴し、とても励みになりました
更には...テ〇ンもといACEのファンになって下さって最高に嬉しいです٩(>ω<*)و
お母様と一緒に祝っていただけて、すごく光栄でした。これからもどうぞよろしくお願い致します


クー**様
はじめまして♡
最後までお付き合い下さりどうもありがとうございました
クー**様の素直なお気持ちが伝わって、目の奥が熱くなりました...すごく嬉しいです
これからもお時間がございましたら遊びにいらしてくださいね(∩´∀`∩)*゜




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耽溺 第2章 ~密事 特別篇 前~
2016-05-19 Thu 18:00


このお話はフィクションです





side MAX



写真集の撮影が無事に終了した



撮影隊が宿舎として泊まり込んでいた済州島のホテル



その中にあるレストランを貸し切っての打ち上げパーティーがこの後開催される



僕は自分の部屋でグミさんにヘアメイクを施された後、入れ替わりで今度はユノの手によって衣装を身に纏った



スーツの襟にファーがあしらわれてる…珍しいな



前もってグミさんとユノの間で打ち合わせが出来ていたようで、僕のヘアスタイルもゴージャスなスーツに合わせカールを付け華やかにセットされていた



『……額を見せてスッキリ纏めてるのもいいけど、こんな感じもいいな』



僕に対しての評価をしてくれたであろうユノは
そう言ってからなぜか視線を逸らす



ふふふ
ユノ…僕のこと好きでしょ?
僕を褒めて、それで照れるなんてさ…もう僕をどうしたいって言うんだよ



グミさんは撮影ではないからといって、今日はいつも僕の唇につけるグロスをつけなかった



だから僕は、自分の恋人を褒めて照れている
そんなピュア過ぎる愛しい人の頬を挟み込んで強引にキスをしたんだ



昨日まで…っていうか正確にいうとついさっきまで
気持ちのすれ違いというか
お互いの感情に、ちょっとしたズレが生じていた



それを解決してくれたのはユノからの強引なキスだった



それまで僕の中に燻っていた嫉妬の感情や、自分でもわからないモヤモヤした複雑な感情を全て消し去ってくれる魔法のようなキス



この人は色んな所に無自覚だけれど
僕を翻弄し夢中にさせ虜にさせる…そんなズルさがある



ユノとベッドを共にした後朝は
大抵が二人で微睡みながら、朝から再びお互いを求めあっていたのに



僕が冷静さを失って吐いた憎まれ口のような言い方に、顔色を変えて飛び出して行ったあの日のユノ



僕が謝りたくてもそんな隙すら見せず
そして、あのタイミングでの強引なキスだった



ユノはよく僕の事を小悪魔みたいだって言う



彼に夢中になって、追いかけまわしていた時から『俺はおまえに振り回されっぱなしだ』って言われるけれど、実は僕があなたに翻弄されてるんだよ



あなたの、そんな無自覚なカッコよさにね



そんな事を考えながらのキスは当然深いものになって、僕もユノも互いの舌をそれぞれに求め合い絡め合う



『っ…やべっ……ヤメロって、MAX』



ユノは急にそう言うと、僕の身体を遠ざける
そして『腹痛いから!!後でな!!』と腰を引かせて、慌てて部屋を出て行った



ふふふ
ユノ…僕のキスでシたくなっちゃったんでしょ?



だから嘘吐いて逃げてったんだね
カッコいいのにさ、そういうところはお茶目なんだよな



そんなあなたに僕は翻弄されてるんだよ



ユノの唇で濡らされた僕の唇は
グロスよりもなんだか艶めいた赤い色になった気がした



そんな自分の唇の色がユノがスーツの胸元に挿してくれたポケットチーフの赤と合っていて
鏡を見ながらついニヤけてしまう



ポケットチーフを指で弾きニヤけた頬を叩いて引き締めてから、迎えに来たキュヒョンと共に会場に向かった



〈チャンミナ~~!!!こっちだこっち!〉



今回の撮影を企画したミレ出版社の方々や関係者の面々との挨拶を一通り終えた後、バカでかい声でダニエルさんに呼ばれる



ソウルから駆けつけて、それまでダニエルさんの隣で飲んでいたトゥギヒョンが入れ違いに僕の肩をポンと叩く



〈本当にお疲れ様。チャンミンは全てを極めたのかな…出来上がりが楽しみだ〉



トゥギヒョンは、そう言ってくれた
ダニエルさんから話を聞いて、ある程度写真もチェックしたんだろうな



とりあえず、合格を貰えたと思っていいんだろう



〈いやぁ、驚いたのなんのって〉



隣に座った僕にグラスを重ねてから、早速ダニエルさんが話し始める



〈香水プロモーションの仕事を受けた時、久しぶりにお前に会えると思って引き受けたんだけど。たった一年でこんなにも人間って変われるのかって思ったよ〉



ダニエルさんはいかにも外国人、というふうに大きく肩を竦める



〈チャンミナ…いい人捕まえたな。彼はお前の恋人だろう?〉



……ダニエルさんに隠せるとは最初から思ってはいなかった



彼は世界でも有数のトップカメラマンだ
彼がファインダー越しに見つめる世界には偽りというものは写らない…それほどの腕前の人を騙せるはずがない



ユノのことは、ダニエルさんにはお見通しだってことだ



「ダニエルさんには隠し事は出来ませんね…その通り、彼は僕の大切な人です」



そう言って、ビールを呷った



〈香水のプロモーションでさ。俺がおまえさんと並ぶモデルに違和感感じて、何気なく辺りを見渡した時彼が目に飛び込んできたけど…


実際おまえと並ぶ姿をファインダー越しに見たときに、コレだ!って直感したんだよね〉



ダニエルさんは続ける



〈おまえが彼の肩に手をかけ、辺りを睥睨とした後に俺のカメラに向けた表情がさ。美しい肉食獣がこの獲物は俺のモノだと睨みをきかせている顔そのもので…堪んなかったよ〉



面と向かって褒められると何か照れる
ビールを空にしてから、思わず顔を伏せた



〈MAXにこんな顔を作らせる様になったのは彼なんだと直感してさ。2人の恋は密事だけど、自分たちは隠さずそれをあえて誇示したっていう一枚に仕上がった。


俺が今まで仕事してきた中で最高にお気に入りの一枚になったよ


それとさ、並ぶくらいに最高な一枚が別に撮れたから。おまえにも記念に額に入れて贈るわ〉



そう言って自分のタブレット端末を手に取り、何やら写真をスクロールしている
そして一枚の写真を僕に見せた



そこに写っていたのは
鮮やかな夕日に浮き出るユノの背中
そしてその彼の腕に抱かれる僕の姿だった



あの写真と同じユノの広い背中
あの写真と同じユノの綺麗な横顔



あの時は
彼の目は僕の妬心に満ちて立てた爪を見つめていたけれど



この写真では
彼の目は抱き上げた僕を愛おしむような表情に見えた



〈MAX…彼に愛されてるんだな。愛の海に、すべての嫉妬を捨てて2人は真の愛を手に入れるってか…ロマンチックだな〉



ダニエルさんらしくないそんな情感めいたセリフを言い残して〈またな〉と席を立った



ユノ……



僕たちは愛の海に「嫉妬」を捨てられたのかな
控室でされた強引なキスであなたの思いは知ることが出来たけれど…



そんなことを思い浮かべながら、この会場にいる筈であろう彼を探す



会場の隅に設けられたカウンターバー
長い足を投げ出したように座り、ACEと二人きりで楽しそうに話している



その人を見つけた







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