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情火 第2章 ~扶翼 11~
2016-06-06 Mon 18:00


このお話はフィクションです

軍隊、及び軍内部につきましては実在の物とは一切関係ありません。ご了承ください





side C



『チャンミン…愛してる…』



こんな時にそんな台詞は反則だ、チョン二等兵
貴様の背後に密着して銃剣の扱いを補助しているのだから



ここに来た時は、あくまで私は彼の上官でしかなかった



先端に諸刃の剣が付いた銃剣に不安の表情を見せて震える部下がとにかく心配だったのだ



私の恋人だから、という事より
兵役兵にも関わらず私の我儘でここに連れてきてしまった彼に対して申し訳ないという思いが強く



少しでも早くその武器に対する抵抗を取り除いてやりたかった



だがしかし
鍛錬場という名のついたこの場所は、上の許可を得ないと使用出来ない場所で



その「上」である私が使用しているわけだから、他の何者にも邪魔をされないという安堵感が
彼の上官でしかなかった立場を和らげた



彼の頬を掠めた剣先は
色白なその頬に一筋の紅い線を描く



その血の色は
私が彼を沈めたベッドに敷き詰められていた薔薇の色と同じ気がして



あの甘美な夜がフラッシュバックする



吸い寄せられるように彼の頬を舐めた
そんなことがあるわけないというのに、彼の周りには確かにあの優美な香りが漂っている気がした



チョン二等兵の目が
昨夜と同じ様に情欲の炎を灯したように見え
私は再び上官の立場に戻る



このままだと彼の情熱に流されてしまいそうだった



剣先が目に入ると恐怖を感じるのは
生きる者の当然の反応だ



刃が身体を貫けば死というものがその先にあると本能で感じるからだ



だから私は、彼の視界を奪った
それは同時に
自らが彼の瞳に灯る情火を見ない様にする為でもある



昨夜のことは、突き飛ばされた彼も鬱憤が溜まっているだろうが、何より私自身がチョン二等兵へのやり場のない想いに苦しんだ



あの頃みたいに本気で人を愛さないままでいたら
こんな不安に駆られることもなかったのに…



大好きな酒に逃げるようなやり方をしても
結局その想いを収めることは出来ず、胸を締め付けられながら眠れぬ夜を過ごした



再び彼のあの情欲の炎を見てしまったら
今度は制御出来ない気がして…私は彼に目隠しをした



それなのに
チョン二等兵は、言葉での攻撃を仕掛けてきたのだ



守らなければならない大切な存在
だが、しかし
全てを投げ打ってもこの男に溺れたい



いっそ二人で
堕ちるところまで堕ちてもいいのかも知れない



この男と共に落ちるのであれば
地獄すらも楽園になる…そんな風に思えた



「私もお前を愛している」



喉元まで出かかった言葉を必死で飲み込む



私は変わったのだ
チョン・ユンホというかけがえのない存在を得た



自分の人生そのものと言えるこの軍の神聖な場所を、汚す様な愚かな行為はもうしたくない



彼を抱くのは
恋人同士が愛を確かめ合う場所がいい



共に夜を過ごして、共に目覚めの時を迎えたい



この男は、性欲の捌け口ではない
私の命にも変え難い大切な人だから…



「愛している」



この言葉を言うのは容易い
何故ならそれは私の心を大きく占めている感情なのだから



だが、彼にこの言葉を伝える時は



言葉だけでなく、行動でも愛しているという事を伝えたい
彼の身体中に愛しているという私の想いを捧げたい



だから私はあえてその言葉を飲み込んだ



「チョン二等兵。3か月後に貴様に与えられる新兵慰労休暇を…私にくれるか?」



一番伝えたい言葉を飲み込んだ私は、彼への想いをそんな言葉で伝える



休暇の間は私も合わせて休暇を取り
私の家で、ユノとゆっくり過ごしたい



少将と二等兵ではなく
平凡な恋人同士として…



『もちろん…少将の時間を貰えるのなら、俺の時間はそれ以外に使い道はないですよ。俺が一緒に過ごしたいのは、他でもないあなたなんですから』



銃剣を持つ手を、それを支えていた私の手に絡めながらチョン二等兵は答えた



元の世界の者たちよりも…私を選んでくれた事が嬉しくて顔が紅潮するのがわかる



目隠しをしておいて良かったと、背後にいるにも関わらずほっとする自分がいて可笑しくなった



細く長い彼の美しい指が、私の指を何度も握る
指が動く度に彼の温度が伝わってくる



この男の手はどうしてこんなにも心を穏やかにさせてくれるのだろう



身体は繋ぐことが出来ずとも
こんな風に手を繋げば、心が通い合う
彼から教えてもらった愛の行為だ



チョン二等兵…
ユノ…



私が責任を持って、お前を…ユノを必ず立派な儀仗隊員にする



たった21カ月という期間だとしても、儀仗隊員としての任務を全うすれば、ユノの今後の人生に役に立つ時が来るはずだ



軍の花形である儀仗隊にいた事で
芸能人として、箔がつくかも知れない



私にはこんなことしか出来ないけれど
お前のために出来ることは全てやる



愛しい恋人よ
私はここに誓おう



お前が…チョン・ユンホという一人の男が
兵役という義務のために、人生の一番輝いている貴重な時間を費やした事を



絶対に、無駄にはさせないと…



私を信じて
ついてきて欲しい



共に前に進もう



目の前にいる愛しい人の項に口づけ
そして儀仗隊長しか持てない、歴史あるこの儀礼刀に口付けて誓いを立てた




情火 第2章 ~扶翼~
第二部へ つづく





くみちゃん様
情火第2章のシム少将は、こんな感じで書いてみました。お気に召して頂ければ幸いです



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情火 第2章 ~扶翼 10~
2016-06-05 Sun 18:00


このお話はフィクションです

軍隊、及び軍内部につきましては実在の物とは一切関係ありません。ご了承ください





side Y



シム少将はただの一度も振り向くことなく、建物の中に入って行く



道場のようなだだっ広い空間の部屋に入ると、ようやく俺の方を見た



「銃剣が怖いのだろう。貴様の手が震えていたのが私の場所からでもわかった。だが、この銃剣に慣れないことには儀仗隊の活動は務まらん」



彼はそう言って、俺が掴んでいた銃剣を手にする



するとシム少将はその銃剣をくるっと回し、胸の前で縦に突き立てた



銃床を腹に沿わせ
胸の前で銃身を掴み
その銃口は彼の顔にぴったりと付いていた



白く装飾された小銃が、彼の着ているグレーの制服に施された白い刺繍と重なって
それは武器ではなく、まるで芸術品の様な美しさを醸し出していた



彼の姿に見とれ声も出ない俺
シム少将はそんな俺を一瞥した後、目の前に垂直に立てていた銃剣をくるくる回し出す



兵舎でチェ下士に見せてもらった昨年の陸軍フェスティバルでの儀仗隊の演技



隊列を組んだ隊員が、指揮者の号令と共にぴたりと揃えながらバトンの様に銃剣を回す



俺も初めて見たその演技に思わず見入ったが、シム少将は目の前でその銃剣を回す規則的な順番をやって見せてくれている様だった



微動だにしない彼の表情
まっすぐ俺を見つめているその美しい顔の前を鈍く光る諸刃の剣が何度も通り過ぎる



一通りの動きを終えたらしいシム少将
最後に銃剣の中央部を左手で持ち、右手は銃の下部を持って俺の方にその部分を差し出す様な動きをした



「これが敬礼をする相手にする“捧げ銃”という銃を用いた敬礼だ。やってみろ」



手渡された銃剣を見様見真似で持ってみる
が、目の前にある剣が気になって動きが鈍くなってしまった



「これが小銃だけなら気にならないのだが、剣があるとどうしても腰が引けてしまう。誰しもそうなんだから気にするな」



シム少将は、少し口調を和らげた気がした
彼の手が銃剣を持つ俺の手に重なる



「銃は銃口を向けられて、銃を持つ人間の手が引鉄にかかって初めて恐怖を感じる。だが、刃はただそこにあるだけで、死への恐怖に繋がるのだ」



重なる手が、俺の震えを消してくれる
彼の温もりがこれ以上ない安心感に変わる



「どうしても怖いのならば、剣を外して練習してみることも出来るが…長さも重さも変わるので、変な癖をつけてしまう恐れがあるのだ


…私がそばにいる。まずはやってみろ」



“そばにいる”
その一言が俺に始めの一歩を踏み出させた



シム少将がやっていた様に、基本の位置に銃剣を構え、それを大きく回した



『あっ』



やはり目の前に剣が来た瞬間、自然と顔を背けようとしてしまったために剣が頬を掠めた



「大丈夫、かすり傷だ。チョン二等兵…私がそばにいると言ったろう?」



ゆっくりと近づくシム少将は
呪文をかけるようなあの低い声で囁き、舌で頬を舐めた



不謹慎だという感覚は麻痺してしまった
守らなければという思いも、彼の穏やかな口調がむしろ俺を守ってくれている様に感じて



俺の傷を舐めるシム少将に
ただひたすら為すがままになる



「私が後ろで手の動きを補助してやる。剣が見えていると恐怖に繋がる。だから、こうしよう」



シム少将はそう言いながら、自分のポケットから黒いスカーフを取り出し俺の背後に回った



「チョン二等兵。貴様の恋人は誰だ?すぐそばに私がいる。絶対にできる筈だ」



黒いスカーフが俺の視界を覆う
視覚を奪われた分、他の感覚が研ぎ澄まされるようで、耳元で囁くシム少将から漏れる吐息が聴覚を蕩けさせた



軍の中心に居て数々の実績を残している少将の言葉は何にも変え難い説得力があった



なおかつ恋人の言葉としては痺れるような台詞をさらっと言えてしまうシム少将…
俺はどうにかなってしまいそうだった



そのおかげで余計な力が入らず、少将の腕に導かれるように俺は銃剣を回した



「そうだ…その感じだ。位置はそのままでいい。後は銃剣を回す指にも気を配れ。儀仗隊では指や爪先までもが揃わなければならないぞ」



…ああ
あの日、俺は今みたいに銃の撃ち方を教えてもらった



あの夜知ってしまった禁断の快楽が蘇る



この男によって植えつけられたその官能は、今もなお俺の全身を彼の身体によって支配されている感覚にさせる



支配されるがゆえに
視覚以外の五感に入ってくる少将の体温や息づかい、そして匂いというありとあらゆる全てが



俺にはその官能に結びついてしまう



シム少将が欲しい
チャンミンを抱きしめたい



別荘で過ごした夜
薔薇の花びらとと同じように赤く染まった少将の頬が、スカーフで隠されている俺の目に映る



「名前を呼んでくれないか?」



そう消え入る様な声で言ったあの夜の彼



『チャンミン…愛してる…』



銃剣の扱いを教わっている場には場違いな言葉
でもその言葉を言わずには居られなかったんだ






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情火 第2章 ~扶翼 9~
2016-06-04 Sat 18:00


このお話はフィクションです

軍隊、及び軍内部につきましては実在の物とは一切関係ありません。ご了承ください





side Y



目を潤ませて俺の名前を呼んだと思えば
最終的には厳しい軍人の顔に戻り突き放される



恋人同士に成り切れていないという寂しさと同時に
時と場所を考えずに突き進む自分に驚いたりする



どうしたらいいのか
俺もあの人もわかっていないのかもしれない



バレたらマズイ
そんな生半可な物ではないと頭ではわかっている
あの人との恋愛は、人生を破滅させる危険すら伴っているのだから



俺は軍を追放され国の義務を果たせないばかりか、挙句の果てに同性愛に溺れたとして芸能界からも姿を消す事になるだろう



いや、俺はそれでもいい
シム少将に惹かれ…危険だという事を本能で察知していたにも関わらず、その恋に足を踏み入れたのは自分自身なのだから



だが、シム少将は違う



彼は、俺たちの国軍の重要人物だ
彼の父や祖父同様にいずれ軍のトップに立つのだろう



平和慣れしてしまっている今の世の中だけれど、俺たちの国はまだ戦争中だ
万が一の事があれば、彼は先頭に立って軍を率いる存在なのだから



その彼が兵役で入ってきた芸能人との同性愛に堕ちたともなれば、彼の名誉や今まで築き上げてきた実績が音を立てて崩れさるだろう



シム少将を愛している
だからこそ、俺はあの人を守らなければならない
今更ながら一番重大な事に気づく



優美な恋人を持ち、その人の愛を独り占めしている事に悦に浸っている場合じゃなかった



愛しているからその人に触れたい
そんな安直な思いから、シム少将に口づけてしまい、突き飛ばされた事で不機嫌になった自分を恥じなければいけない



……それでも彼への募る想いは抑えられない



昨夜はあの人の唇の感触がいつまでも残り、その彼の唇が俺の身体を這った記憶までもが蘇り眠れなかった



翌日の俺の顔は散々だったらしい
〈ユノヒョン!夢の中でも訓練してた?一晩でそんなやつれちゃって…〉
朝食の時間、チェ・ミンホ下士からそう笑われた



食べる事が大好きなやつなのに、そんな俺を心配してか朝食についていたデザートを俺に寄越す
〈甘いものは頭にも心にもいいんだよ〉そんな風に笑ってくれた



洗面所で顔を洗い、ついでに頭からも水をかぶる
こんな時に坊主頭は便利だななんて思ったりして



しっかりしなくちゃいけない…



新人の俺が足を引っ張ることは初めのうちは仕方ない部分もあるだろうけど



シム少将が俺を伴って移ってきたのは周知の事実だから、少なからず彼に結びつく可能性もある



俺のせいでシム少将に難が降りかかることだけは避けなければ…



そう気合を入れ直して制服に着替えた



昨日少将が言っていた通り
今朝は訓練の最初からシム少将が来ていた



金の細縄で装飾された白い鞘に納まる長い儀礼刀



その儀礼刀をステッキのようにして右手に持っている彼の姿は、撮影で行ったパリの美術館で見た王の肖像画にも見える



目深く被る制帽の庇に美しい瞳は隠されてしまっているが、その眼は俺を見ている気がした



今日は今にも雨が降り出しそうな曇天で、暑さも和らいでいて寝不足の俺には有難かった



そんな中で、今日から始まる練習に使う銃剣を手渡される



ズシリと重い銃身
弾は込められていないものの、基礎訓練で握った小銃を思い出す



この銃剣を初めて間近で見たのは、彼の元に呼び出されて部屋に入った瞬間、シム少将に銃を突きつけられ後手を捉えられた時だった



そこに弾倉がついていないとは知るわけも無く、凄みのある低い声と肌に触れる銃の冷たさに鳥肌がたった記憶が蘇る



怯えもあったのだろうが
あの時の俺はシム少将の低い声が呪文のように頭に入り込み、抗う気持ちすら芽生える事なく彼の毒牙にかかったのだったが…



この銃剣をうまく扱えるだろうか
先端で鈍く光る諸刃の剣に震えが走った



兵役で軍に入るものの半数が、武器に対して抵抗を感じるという



俺も諸刃の剣という物を見たのが時代劇で使った偽の刀くらいだったから、正直言って恐怖を感じずにはいられなかった



俺に銃剣の持ち方を丁寧に説明してくれていたチェ下士の言葉も、聞いているのに頭に入ってこない



ただこの銃剣を震える手で握りしめていた



気がつくと目の前にいたチェ下士は消えていて
「ついて来い」とあの低い声で言い放ち踵を返す愛しい男が代わりに立っていた



そう俺は
あの時と同じように



彼の声に操られながら
黙ったまま後ろに続いた






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情火 第2章 ~扶翼 8~
2016-06-03 Fri 18:00


このお話はフィクションです

軍隊、及び軍内部につきましては実在の物とは一切関係ありません。ご了承ください

性的な表現を含みます
ご注意ください





side C



私にしては珍しく二日酔いによる頭痛で目が覚めた



酔っているのに酔った気分になれない
そんな奇妙な感覚だった昨夜は、どんな風に眠りについたのか全く記憶にない



唸る頭を持ち上げてシャワー室に何とか入り
熱いシャワーを浴びて怠い体を目覚めさせる



記憶に残っていたのは
サイバー知識情報房で私の手に口づけただけでなく、唇まで奪ったあの男



恋しいユノの顔だけだ



私に突き飛ばされて、恨めしそうに見ていたあの顔が忘れられない



そして誰が入ってくるかわからない場所での
熱い口づけも…



私を全身で求めていたチョン二等兵
その思いがこもった口づけはそれだけで頭が真っ白になる程だった



彼の舌が
私の口腔内を自由に動き回った感触がまだ残っているようで



私の指は、そんな記憶に追いすがるよう自分の口の中へ入り込む



そして
彼の舌が動いた痕跡をゆっくりと自分の指が辿ってゆく



もう片方の指は
彼の中を求めて主張を激しくする私自身に伸び



愛しい男の、その身体の記憶を思い出しながら忙しなく動いた



「……っ……はぁっ……」



吐き出した白濁の流れはシャワーの水流にのまれ
私の心に虚しさだけを残して消えた



愛するという気持ちなどわからなければ良かった



恋しい気持ちなど気づかなければ良かった



今までの捌け口同様に
何度か抱いた後、さっさと目につかない所へとやってしまえばよかったんだ



そんな悲観的な思いばかりが脳裏をよぎる



私らしくない…
こんな私は、私ではない



軍人である私こそが
シム・チャンミンの人生そのもののはずだ



思い人への慕情の念ばかりに心を埋め尽くされて
抱いた男のその身体の記憶を指で探し求めるなど…



私らしくないではないか…



頭ではそんな自分を否定しながら
心の中はキリキリと想いを募らせるばかりで



シャワーの流れの中
私の目から溢れていた雫の存在をも気づかないふりをしていた






どんよりとした重い雲がたれ込める中、今日も訓練が始まっていた



曇天のせいか暑さも和らいでいる気がして、二日酔いとそれ以上の苦しい気持ちを抱えたままグラウンドに足を運んだ私には幸いだった



敬礼で迎えるパク大尉とトン中尉に挟まれて、隊員たちの動きに目をやる



すぐに飛び込んでくる愛しい男の姿
私に気づいていないのか、それとも昨日のことで拗ねているのか、口を真一文字に結んでいた



そんな恋人からあえて目を逸らし手元のカリキュラムに目を落とす



繰り返し行われる行進の練習の後、今日は銃剣(17世紀頃開発された小銃の先端に剣を差し戦えるようにした武器)を取り扱った練習が組み込まれていた




現在では機関銃やアサルトライフルなどの銃の進化によって、実際の戦闘では使われることが減った銃剣



儀仗隊では装飾が施された小銃の先端に諸刃の剣が付いた物を使っていて、実際のものほど鋭利にはなっていないものの当たれば当然怪我をする



小休憩を挟み、隊員をまとめている2名の上士が銃剣をそれぞれに手渡す



チョン二等兵は手にした銃剣を興味深く見ているようだった



あの日…
訓練所でこの銃剣を司令官室に準備させてチョン二等兵を呼び出した



同期の訓練兵と仲良くしている様子を見てしまった私はあろう事か、おそらくは初めて間近で見るであろう銃剣でヤツを脅そうとした



子供じみていたと後から猛省したものの結局思い通りにチョン二等兵をねじ伏せ、チョン二等兵の首筋に噛みつきながら精を吐き出したのだったが…



〈シム准将のお心にも嫉妬心という感情がおありだったんですね。それにしても銃剣で脅すなど趣味のお悪い…〉とパク大尉から指摘され最もだと思った



今にして思えば
チョン二等兵に対してはその時からすでに「私らしくない」行動をしていたのだと気づく



そんなことを思い出しながら、小休憩を終えて各自散らばっていく隊員に目を向ける



トン中尉が精査して彼と同室にしたチェ・ミンホ下士が、銃剣の扱い方を教えてやっているようだ



儀仗隊は軍事パレードや軍のイベントなどでこの銃剣をバトンの様にして、回したり垂直に立てたりしながら演技を見せる事がある



また、海外からの要人を出迎える儀礼でも銃剣を使っての動作が多いため、銃剣の扱いは行進同様に重要な訓練になる



この小銃に弾倉は付いていないが、先端には鋭利な諸刃の剣が付いているため、初めはこれを回したりする動作に躊躇いを見せる者も多い



諸刃の剣の位置がちょうど、顔の付近を通過する事になるからだ



兵役ではなく職業軍人として儀仗隊に配属された者でも、銃剣の扱いには慣れるのに時間がかかる
チョン二等兵も見るからに腰が引けている感じがした



私はパク大尉に耳打ちし、チョン二等兵の元に歩き始める



その間にパク大尉が〈新兵を残し集合!〉と号令をかけ、隊員をまとめた



チェ下士もチョン二等兵の元から仲間の元に走って行く



近づく私をジッと見つめるチョン二等兵
昨日のことをやはり恨んでいるのか、その目には情欲を中途半端に置き去りにされた怒りが見てとれた



「ついて来い」



彼にただそれだけ言って踵を返した






昨日の回にコメントを入れようとしてくださった皆様、サーバー側のエラーでコメントが出来なかった様です

申し訳ございませんでした

ゆんちゃすみ


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情火 第2章 ~扶翼 7~
2016-06-02 Thu 18:00


このお話はフィクションです

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side C



少しでも触れられればいい
だがしかし、少しでも触れてしまえば欲という物はどんどん深くなってしまう



そんな単純な事にも気付いたりする



…というより
私にとって彼との恋は初恋だと言っても過言ではないから



チョン二等兵との何もかもが
私にとって初めての事なのだ



重なる手がこんなにも温かいものだという事も
彼に教わった



熱を出してうなされていた時
ずっと私の手を握り、看病してくれた彼



朦朧とする意識が、その温もりに安らぎを覚えた
そして気がついた時、彼が側に居てくれたのだった



『シム少将…』



パソコンの画面に目を向けながら呟く恋人の声に我に帰る



「すまない、考え事をしていた。明日はようやく私も練習にも立ち合えると思う。しっかりやるようにな」



努めて冷静を装いながら立ち上がる
改めて見渡すと幸い情報房に他の人影は見当たらなかった



用心深い私が、ふと見つけた恋人の姿に思わず辺りを確認もせず吸い寄せられてしまった
…反省せねばならない



『来た時からずっと、俺以外誰もいませんでした。お会いしたかったですシム少将…


少将も俺に会いたかった、ですよね?』



私がうっかりしていた事をわかって言っているような優位に立った物言いに、ちょっとした意地の悪さを感じつつも、その言葉通りだから言い返せない



するとチョン二等兵は、私が振りほどいた手を再び握り、そして手の甲に唇を寄せる



駄目だ
私が私でなくなる…そんな恐怖を感じた



ここは陸軍省第25師団の建物、公然の場所だ
そして私はこの師団の準責任者でもある



それなのに私は
この場所でこの男を抱き寄せたい感情にかられ
…すんでのところで堪えた



理性が壊れていく
この男の愛は、そんな魔力があるのではないか
そんな馬鹿げた事も現実的に思えた



「よせ…私をどうしたいと言うんだ。ここは師団の誰もが来る場所だぞ?」



ギリギリのところで自分の立場をわきまえて彼をたしなめた



『その師団の訓練所で俺を抱いたのは誰です?』



チョン二等兵はそう言って、いきなり私の腕を引っ張った



入り口から死角になる壁際に押し込まれ、チョン二等兵は私を壁に押し付ける



『少将…あなたのその眼がいけないんだ…』



耳元に顔を寄せ、彼が振り絞るように言った言葉が私の頭の中を沸騰させた



「…ユノ…」



思わず口にしてしまった彼の名
チョン二等兵は満足そうに笑みを浮かべ、そして私の顎に指を添えてゆっくり口づけた



誰かに見られてしまうかも知れない…
そんな背徳感が妙に心地よく、彼の口づけに溺れた



いつもはパク大尉たちが私の影となって動いてくれているが、今頃は二人とも自室に居るだろう



一瞬にして現実に引き戻され、チョン二等兵を突き飛ばした



「…すまない。どうかしていた…」



恨めしそうな眼をして見上げる彼…
そんな彼に後ろ髪を引かれながら、自室へ走る
本来行く予定にしていた遊興室になどもう今更行く気になれなかった



チョン二等兵を守らなくてはならない私が
なぜあんなことをしてしまったのだろう



私の眼がいけない
彼はそう言った



そのまま彼に返したい
チョン二等兵の美しい黒曜石のような瞳がいけないのだ



私を見つめ、私を欲してその眼に情火を灯す
その炎は…私たちを燃え尽きさせてしまう業火になるのではなかろうか?



いや…私はいっそ、チョン二等兵の炎に焼き尽くされてしまっても構わない



彼を愛している
その男に滅ぼされるのなら本望だ



だが私は…
彼を無事に元の世界に戻してやらなければならない



そんな思いが
再びサイドボードの酒に手を伸ばさせた



美味い酒を飲みたいのではなく
酒の力でそんな思いを払拭したかった



さっき使ってそのままになっていたロックグラスではなく
伏せてあったショットグラスで立て続けにウイスキーを呷った



普通の恋人のように
人目を気にせずに会えればいいのに



そんな女々しい事を一瞬でも思い浮かべてしまった自分が悔しい



軍人シム・チャンミンが
あの美しい恋人に翻弄されている



このまま二人で
愛に堕ちて行くのだろうか
愛に狂わされて行くのだろうか



ユノ…あなたが欲しい



狂おしいほどの彼への想いが
私の胸を締め付け続けた





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