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艶麗 (前篇)
2016-04-19 Tue 18:00


このお話はフィクションです





『はぁ~くたびれたぁ~!』



夜勤明けの朝
そんな独り言を言いながら大きく伸びをして勤務する発電所の敷地を歩く



〈ユノー!!明日こそ合コン出てくれよー!!おまえみたいなイケメンはいい駒になんだからっ!〉



背後から飛んでくる同僚の声に俺は頭上で大きなバツを作って答え、門をくぐった



付き合い悪いなって
きっと舌打ちされてるだろう



途中のカフェで大好きな甘いラテを買って、いつもの公園に足を向ける



アパートまでの帰り道の途中にあるこの公園



火力発電所しかない殺風景な近隣の景色を改善するために市が管理に力を入れており、たくさんの樹木が植えられて市民の憩いの場になっている



厳しい冬が過ぎ去り、樹木が競うように花を咲かせて



目に入ってくる景色が色鮮やかに変化し、春の訪れを否応なしに感じさせられた



ちょっと前まで日本の姉妹都市から送られた何十本ものソメイヨシノに彩られていた道は



薄ピンク色の花弁の欠片すらなく小豆色をした顎が埋め尽くしていた



その道を抜けていつものベンチに腰をかける



神経が張り詰めた状況で夜勤を終えた後は
ただこうしてこの公園でぼんやりする事が一番の息抜きになるんだ



日勤シフトでこの公園に寄ることが出来なかった一週間の間に、ベンチの周囲は雰囲気が一変していた







殺風景だった樹木が緑色の小さな葉とともに、ソメイヨシノの色よりも濃いピンク色の花をたくさん咲かせていて



咲く順番を待つ様に並んで垂れ下がっている蕾達は、サクランボのように丸々としていて何だか可愛らしい



今までこんな風に意識した事はなかったけれど、花の雰囲気からしてソメイヨシノと同じ桜の一種なんだろうか?



一晩中計器とにらめっこをしていた俺にとって
花と蕾が織りなす優しいピンク色のグラデーションが疲れを癒してくれる感じだった



サクランボのような蕾が気になって、木のそばまで行ってその丸みのあるピンク色の蕾を指で撫でてみる



ふんわりと柔らかい蕾
まるで俺を受け入れるかのように花弁が指を包み込んだ時



「花海棠は蕾が愛らしいんですよね」



そんな声とともに
何処からともなく現れた一人の男



無数に咲き乱れるピンク色の花の中から現れた彼は、まるでこの花の精の様に感じた



躊躇いもなくそう思ったのは
彼が何の気配もなく急にそばにいたから



ふわふわしたとした茶色の髪が風になびき
俺を見つめる大きな丸い瞳が、俺がさっき撫でていた蕾みたいだった



『ハナカイドウ……』



「そうです。鮮やかに咲いているこの花の名前ですよ。ご存知ではなかったですか?」



『俺なんか花の名前が分かるのなんて、せいぜいチューリップとバラくらいですよ」



少し低めの声で穏やかに話す彼の口調が
夜勤明けで淀んだ脳にすぅっと入ってきて、彼に自然と答えを返してしまった



「ふふ……」



手を口元に寄せて笑う男
本当だったら急に笑われてムッときてもおかしくない状況なのに、彼の優雅な雰囲気にすっかり飲み込まれる



「そうですよね。女性はともかく、男性で花の種類に詳しい人はあまり居ませんね…」



『そうでしょ?桜だってここに来て覚えたくらいだし。花なんか全然分かんない』



事実、この公園に通うようになって初めて色々な花を意識するようになった



地元の大学を出た後、そのまま地元にある原子力発電所に勤務していて、一昨年この火力発電所に異動になった俺は



訛りがなかなか消えず同僚とも話すのがまだちょっと恥ずかしくて、飯に誘われても断ってこの公園で一人パンを食べたりした



この公園に植えられたたくさんの樹木が、何となく緑の多い地元に似ていて気持ちが安らぐから



ここで過ごすことが多くなって必然的に四季折々の花を咲かせる樹々に目が行くことが増えた



『わかんない』と言って話を切ってしまった感じになったが、彼は気にした様子もなく俺の隣に腰をおろす



立っていた時は180ちょっとある俺よりも更に背が大きく見えたけど、座ってみるとやけに線が細く猫背気味で俺よりも小さく感じた



「花にはそれぞれに、花言葉というものがあるんですよ」



『…うん、聞いた事ある』



彼の口調がやけに心地よくて
歌うように話す彼に合わせちゃんと会話を成立させている俺



「花海棠の花言葉は〔美人の眠り〕です。ほろ酔い加減で眠たそうにしていた楊貴妃を見た唐の玄宗皇帝が〈海棠の眠り未だ足らず〉と詠んだ事に由来しているそうで…」



楊貴妃はともかく、玄宗?誰だよ…それ



難しい話をしているというのに
隣にいる彼の語り口が



深夜の電力を管理するという至極重大な夜勤を終え緊張で強張っていた俺の筋肉を少しずつ解してくれている…



そんな不思議な感触に陥る



「中国でこの花は〔眠花〕と呼ばれ、美人の象徴とされています。眠たそうにしている楊貴妃はどんな雰囲気だったんでしょうかね…


…そう、今のあなたのようだったのかな…?」





この男は
何か妖しげな力を持っているんだろうか…



花海棠の花言葉を説明してくれながら
その穏やかな口調が俺に催眠術でもかけているかのようで



俺は
彼の手が俺の身体を引き寄せるのに身を任せ
彼の胸元に倒れこんだ





タイトル画はいつものようにAli様に提供して頂きました。いつも本当にありがとうございます

ホミンを愛でるAliの小部屋



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心酔 (後篇)
2016-04-03 Sun 18:00
このお話はフィクションです





医大の卒業式を終えた俺は
墓に眠る父と実家の母に別れを告げ、上京した


シム・チョルマン院長の懇意で、苦学生だった俺のために家具一式の揃った寮の一室が与えられて


医大の寮から頑丈なボール紙の筒に入れて大切に持ってきた俺のチャンミも、新しいベッドの上に貼られる


『チャンミ、おはよう。今日からおまえの病院での生活が始まるよ。おまえが俺の人生を決めてくれたんだ。頑張るからな』


いつもの様に絵の中のチャンミに挨拶をしてから起きて、朝の支度をする


苦学生だということをキム教授から聞いているのか、家具だけでなくスーツ等の洋服までサイズに合わせ揃えられていて、破格の扱いに驚くもありがたく受け取った


この病院で一生懸命頑張って、チャンミに恩返しをするのと合わせ、それ以上にシム院長に恩返しをしなければならない…


そんな決意を固めて、シム美容形成外科医院研修医としての俺の人生がスタートを切った


俺は入局10年目のチェ・ウンソク医師の元につけられて、日々の指導を受けた
チェ医師はシム院長の絶大な信頼を受けている医師だと看護師長から教わった


《チェ・ウンソク先生につけられたなら、あなたも院長に期待されてるってことだわ》と看護師長は笑顔で言う


シム院長は今でもモテるだとか口腔外科のパク先生はバツ2だとか、聞いてもいない事を顔を合わす度に教えてくれるその看護師長の事を


〔あなたがハンサムだから気に入ったみたいよ〕と同じ独身寮に住む看護師に聞かされて苦笑した


チェ・ウンソク医師は俺を始め院内の人間には無愛想で口数も少ない人だったけれど


悩みを持って訪れる患者に対しての親身なカウンセリングや丁寧な説明がすごく勉強になったし、手術内容を出来る限り最小に留めて最大限の効果を求めるという姿勢にも感銘を受けた


そんな先輩を得て俺の研修医としての毎日は充実し、毎晩絵の中のチャンミに話す事も増えていった


忙しく充実した日々を送って、入局以来3カ月が経とうとしたある日の休日
シム院長から突然の連絡をもらい、寮の前に横付けされた車に乗り込んだ


〈休みに突然、すまなかったね〉
『いえ、とんでもないです』


車の中では最小限の会話しかなく、車がどこに向かうのかも全く分からなかった


かれこれ30分は走っただろうか
静かな森に囲まれた白亜の建物の前で車は止まる
シム院長に促され、一緒にその建物の庭に足を進めた


〈私がチョン君の言った運命を信じた理由を今日、君に見せよう〉
そう言ってシム院長が顔を向けた先には


美しく手入れされたイングリッシュガーデンに咲き乱れる無数の薔薇に囲まれ、白いベンチに座っている人の頭が見えた


なぜなんだろう
俺は背を向けて座っているその人に吸い寄せられる様に足が動いたんだ


俺の気配を感じたのか
その人が立ち上がってゆっくりと振り返る


『……チャンミ……』


俺のチャンミが
絵の中のチャンミが、そこに居た


「ふふ…僕は薔薇じゃないよ?」


穏やかに微笑む俺のチャンミが、絵の中から出てきて喋っている錯覚に陥る
まさか、こんなことって………


〈私のたった一人の孫のチャンミンだ。君のことは話してある。仲良くしてやってくれ〉


シム院長が言っている言葉も、耳では聞こえているのに頭に入ってこない感じがする。チャンミがチャンミン?俺は夢を見ているんだろうか?


固まってしまい全く動かない俺の肩をポンと叩いて、シム院長は車へと戻って行く
俺のチャンミが俺の手を引いてベンチに座らせた


「お祖父様にあなたのことを聞いてから…早く会いたかったよ。やっと逢えたね、ユノ」


そう言って俺の手を握りしめる
彼の手から伝わる体温が、この人は生きている実在の人物だったんだと思い知らされて…俺の目からはなぜかポロポロと涙が溢れた


「ふふ…僕だよ、チャンミ。でも僕は薔薇じゃないから、チャンミンって呼んでね。薔薇って呼ばれると…ちょっと照れるから」


ポロポロと頬を伝う涙を指で拭ってくれる彼
俺はその手に自分の手をゆっくりと重ねた


『チャンミ…チャンミン…俺は夢を見てるんだろうか?』


「お祖父様はあなたに何も話していないんだね。ユノ…僕はお祖父様からあなたのことを聞かされた時から、あなたのことを知りたくて胸がドキドキしたんだよ」


チャンミンはそう言って、重ねた俺の手を握り返して話し始めた


シム院長の一人娘であるヒョリムは売れない絵描きと恋に落ちた
病院の跡を継ぐ彼女のその恋は院長から猛反対され、あの手この手を使われ強引に壊された


彼女のお腹には、すでにチャンミンが宿っていて
堕ろせという院長や周囲の人に、この子を産めないならば自分が死ぬと病院の屋上で自分の命を賭して説得したそうだ


あの絵は…
強引に別れさせられ細々と生きていた父親が、病に侵され余命幾ばくもないとわかった後


最後だからと遠くから我が子に会うことを許されて、描いたものだった


「僕がお気に入りのこのベンチで、うたた寝している時にあそこからデッサンしていたそうだよ」


チャンミンはそう言って、遠くのパーゴラを指差す。その周りには彼の絵に描かれていた色の薔薇が見事に咲いていた


「僕は生まれつき身体が弱くてね…高校も行けずにこの家で家庭教師から勉強を教わって通信制の大学を出たけれど…お祖父様や母さんみたいに医者になるのは無理なんだ」


絵の中のチャンミから感じた透明感は、もしかしたらそういう儚さを彼の父親が表したのかもしれないと思った


「僕が好き?」


チャンミンが唐突に言い出す
絵の中の彼に一目惚れしたという事実は院長に話したから…彼にも伝わっているんだろう


ならば、男の俺に好かれて気持ち悪いと感じているかもしれない


でもたとえそう思われていたとしても、俺の気持ちは変わらない。あの絵に出逢ってからの自分の気持ちに嘘なんかつけない


彼の目を、きちんと見つめて答えた


『ああ、好きだよ。俺はチャンミ…いや、チャンミンが好きだ』


次の瞬間
俺はチャンミンに抱き締められていた


「お祖父様はね…僕が身体が弱いのは自分が母さんの恋を認めなかった罰だって思ってる。だから僕にはすごく優しいんだ。ある日、運命っていうたとえ話をしてくれて」


抱き締められているから
チャンミンの声が、身体に直に振動してくる


「その話は、ユノ…あなたの話だった。僕はね、こういう生活をしているから、異性と触れ合うこともなかったし、恋っていうものをした事が無かったんだ。でもね、お祖父様の話を聞いてから…」


ふとチャンミンの身体が離れてゆく
そのかわりに、絵の中のチャンミが唯一見せてくれなかったその美しい瞳を、間近で俺に見せてくれる


「同性だとか異性とか全く考えもなしに、そんなロマンチックな恋をしたというあなたに逢いたかった。夜眠るときも見たこともないあなたを思い浮かべたんだ…


ユノ、僕はあなたに恋をしたんだ。生まれて初めての感情で、僕自身戸惑ってるんだけど…でもね、こうしてあなたが目の前に居て、それが本物だってわかった」


俺は…
夢にまで見た、ずっと見る事が出来なかった
彼の瞳を見つめる


「ユノ…あなたが実際に目の前に居て、僕はあなたに触れたくなった。これはたぶん…ユノが好きだからだよね」


そうだよ…チャンミン
俺も…ずっとこうしたかったんだ


チャンミンの顔を手で包み込んで、俺にずっと見せていた瞼を親指で撫ぜる


そう


俺たちは
あの日地下鉄の構内で出会った時から
恋に落ちていたんだ…


俺の唇が彼の唇に重なった時


チャンミンは
あの絵と同じように、幸せそうな顔を浮かべた





be fascinated by…




心酔 -完-






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心酔 (前篇)
2016-04-02 Sat 18:00

このお話はフィクションです




〈なんかさ…最近あいつおかしくない?〉

《おまえもそう思う?知ってるか?あいつさ、今…》


ヒソヒソ話をする友達に聞こえるように、咳払いをする


慌ててノートをとり始めるやつら
全く…キム教授が怒らないから、あいつらもつまらない噂話に興じるんだ


俺のことなんて、どうでもいいだろうに
…いや、面白おかしく話す内容としては、これ以上ないネタなのかもしれないけどさ


俺は今、恋をしている
それも普通じゃない、報われない恋なんだ……




今年の夏休み
ソウルの病院に研修医として勤務し始めた先輩が、苦学生の俺に割のいいバイトを紹介してくれて


夏休みの間だけ先輩のアパートに居候させてもらいバイトに通っていたが、その途中で俺は運命の出逢いをした


地方の医大に通う俺でもその名を知っている、国内最大手の美容整形医院


エステやスパを併設したサロンのような巨大な病院を経営していて、青瓦台に勤める旦那を持つマダムや、財閥の奥方や令嬢が足繁く通っている事で有名だ


地下鉄の駅構内に貼られている様々な広告の一つに、その病院の広告があった


有名な女優や人気のアイドルが微笑んでいる他の美容整形クリニックの広告と違って


一枚の絵画の中に、シンプルなキャッチコピーと病院名が入ったその広告は異質だった


〔be fascinated by…〕


夢中になる…
そんなキャッチコピーの入った広告に描かれていたのは、美しい薔薇の花と一人の美しい男





描かれた薔薇と同じ、ピンク色をした透き通る様な肌が…それが絵だという事を忘れさせるくらい生き生きとしていて


幸せに浸る様に目を瞑っているその男の、穏やかな笑みがキャッチコピーと重なって


俺の心を一瞬で奪った


俺の初恋は、優しかった幼稚園のヒジン先生だし
ファーストキスは高校の同級生のミニョンちゃんで、初エッチも…去年ようやく彼女のヨニと済ませたけれど


当然、全員女が対象だ
それなのに、いくら絵だとはいえ男に一目惚れをするなんて自分でも信じられなかった


毎日その広告を見るために10分早くアパートを出て、帰りは疲れていても広告の前で足が棒になるくらい見つめていた


こんなにも鮮やかに描かれているということは、誰かモデルがいたのではないかと、ふと思い


病院に問い合わせてみたものの、存じ上げませんという返答のみで埒があかず


ネットで調べたところ、2年前からこの広告が使われているということだけわかった


様子のおかしい俺を心配した先輩に散々説教されても俺の想いは消えず、諦めた先輩がツテを使ってその病院から同じ広告のポスターを貰ってくれたから


駅で広告の前に佇み、その横を通り過ぎる人々に訝しがられる事は無くなった


夏休みを終えて、医大の寮に帰ってきた後
そのポスターは俺のベッドの真上に貼られて


俺はその絵の男をチャンミ(장미、薔薇の意)と呼んで
毎晩寝る前に1日の出来事を話す相手になってもらった


絵に恋をしたというだけでも嘘みたいな事なのに、それが男だということを知ったヨニには
まるで汚いものを見るような顔で罵声を浴びせられ、フラれた


それでも俺はむしろホッとした気持ちだったんだ
これで彼に、全ての想いをぶつけられるってさ…


親友は先輩から俺のことを聞いていたらしく、先輩が説得して無理ならば…と何も言わなかったし


父親はすでに亡く、一緒に暮らそうと俺が呼び寄せても母は亡くなった父の墓を守ると言って結局来なかったから、俺を止める者は居なかった


俺の父親は田舎町で町医者をやっていて、いわゆる医者の不養生ってやつで一昨年亡くなった


俺は小さい頃から親父の跡を継ぎたいと思っていて、何とか地方の医大に受かったんだけど


絵の中の彼に恋をした事で、俺の目標は変わった
内科医から形成外科医を目指すことにしたんだ


-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


あれから2年…


毎日大学で必死に勉強をして
毎晩、絵の中のチャンミに話しかけて1日を終えていた俺も無事に医師免許試験に合格した


地方の医大から、国内最大手の病院を受けるのは稀有な例だったけれど


絵の中で幸せそうに微笑むチャンミに力を貰った俺は、学内トップの成績を残せたおかげで教授から推薦を貰って、あの美容整形医院の採用試験に臨んだ


母親が、必死に貯めた金であつらえてくれたスーツに身を包み面接に臨む


〈チョン・ユンホ君、入りたまえ〉


面接会場には、病院長のみが座っていた


目鼻立ちが整った院長は、若い頃はさぞかし美男子だったろう。70代半ばだとネットで見た


来年、一人娘に院長職を譲り、引退するとの話だ


〈チョン・ユンホ君、キム教授から特別に推薦をされたが…この病院に入りたい理由は何だね?〉


院長が穏やかに質問してきた


俺は…あの日から2年間、絵の中のチャンミに励まされながら努力した月日が、無駄になるかもしれないという覚悟で正直に答えた


上辺だけの模範的な答えもできるけれど
嘘を言う事は絵に恋した自分を自分で否定することになると思ったんだ


ゲイではない自分が、この病院の広告の絵に描かれた人物に恋をした事…


薔薇という名前を付けて毎日話し掛け、励まされながら死に物狂いで形成外科医を目指した事…


そしてこの絵との出会いが
自分の人生に於いて最大の運命だと思った事を…


『この病院に勤めることで、私は2年前に出会った絵の中のチャンミに恩返しをしたいのです。絵に恋をした自分は、ここで働くことで恋が実る気がします』


院長の目を真っ直ぐ見据え、正々堂々と思いを述べた


笑われてもいいと思った
俺が絵に恋をしていると聞いて、まともに聞いてくれた人など皆無だったから


院長は目を閉じて俺の話を聞いたあと、ゆっくり息を吐いた


呆れた言葉が出るか?
それともバカを言うなと一喝されるか?


俺は膝の上に置いた拳をギュッと握る


〈チョン・ユンホ君、君の言う運命を信じよう。私のところに来たまえ〉


院長はスッと立ち上がり、俺に握手を求めてくれた


近くで見た院長は…なぜだろう
どことなく俺のチャンミに似ている気がした


気のせいだろうか?


ともかく…


俺の一世一代の決意が実ったんだ
絵の中のチャンミに、少しだけ近づけた気がした…





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恋文
2016-01-29 Fri 20:00



〈はじめに〉

このお話は、私の大切な友人であるあゆさんとの共作になっております

あゆさんはユノからチャンミンへ
私はチャンミンからユノへ

互いにその事を知らずにそれぞれ手紙を書いたという設定になっております

ぜひ合わせてご覧いただければと思います


あゆさんのブログへはこちらから
↓ ↓ ↓
With love…TVXQ 〈To. Changmin〉



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*



ユノへ



あの日から
もう10年以上の月日が経ったんだね



そして



この12月26日という記念日に
あなたの顔を見る事が出来ないというのは
初めてじゃないかなって思う



だからね
恥ずかしいんだけど、僕



こんな機会は滅多にないって珍しく前向きに捉えて、あなたに手紙を書いたんだ



そう
初めてのラブレターを
ユノに書いたよ



マネヒョンが面会に来るって言ってたから
ユノヒョンに渡して欲しいって頼むつもり



マネヒョンの事だから
〈チャンミナは本当にユノ想いだな、なんだかんだ永遠に優しいマンネだわ~〉なんて



相変わらずの見当違いっぷりで引き受けてくれると思う



あれだけ一緒に居ても、僕たちの事に気づかないっていう…そんな天然のマネヒョンが大好きなんだけどね^^



『ハァ?誰を大好きだって?!』



そんな風に僕の顎に指をかけてヤキモチを妬くヒョンの姿が目に浮かぶよ
ユノって意外に…ヤキモチ焼きだよねㅋㅋㅋ



会いたいな、ユノ
ユノのその腕に包まれて眠ったのは…もうずいぶん前のことになっちゃったから



あなたの温もりが、唇が、恋しい
そう素直に書けるようになったのは、僕も少しは進歩してるってことかな



いつも、ひねくれた言い方ばっかりだったもんね



ねえユノ
あれから12年が経ったんだね



僕たちの正式なデビュー記念日は別の日だけど
12月26日を東方神起の記念日ってペンは言ってくれてるよね



カシオペアも、ビギストも
よく今まで僕たちのことを見捨てずに応援してくれたな、って本当に思う



たくさん辛い思いもしたけど
僕はやっぱり、あなたが居てくれたから挫けずに来られたって思ってる



ほんといつも言ってるけれど
最初はね、ユノは怖かったよ



目つきも鋭かったし、他のメンバーには優しいのに僕にはなぜか冷たい気がして



でも一緒に過ごしていくうちに、他のヒョン達には決して見せない温かい目で僕を見てくれているあなたに気づいたっけ



初めはさ
リーダーのユノヒョンがマンネだった僕を温かく見守ってくれてるんだって思ってた



それがユノヒョン…ユノの僕への愛情だったって気がついたのは



僕があなたを愛しているって
そう自分で気づいたからだったのかもしれない



どっちが先に好きになったんだろう
未だにさ、たまにそんなことで言い合いになる事もあるよね



僕はそのたびに思うよ
どっちが先でも後でもなく、僕たちは出会ったこと自体が運命だったんだって



…なんてねㅎㅎㅎ



けっこう僕ってロマンチストでしょう?
ユノには負けるかもしれないけど…
兵役を終えたら、こんな風な詞を書きたいんだ



ユノと僕の歌をね



やだな、なんだか書いていて顔が火照っちゃう
ユノの事となると僕、いつもこんな風に真っ赤になっちゃうよ…いい加減みんなにバレてるよね



あなたと逢えないこの期間で
少しはこんなクセも治るといいんだけど



寒くなってきて、訓練所内は暖房もあんまり効かないしけっこうハードだよ



年下の仲間に囲まれて、新鮮な気持ちになる
ただ、やる事なす事慣れないことばかりで戸惑うことの方が多いかな



でもそんな時は
あなたにもらった腕時計に自然に手が伸びる
僕を落ち着かせてくれるお守りだから



だから、防寒服を着ている時もね
すぐに触れるようにマジックテープでぎゅっと止めて、袖が落ちてこないようにしてるよ



この時計がさ
ユノとの通信機だったらいいのに



そう思いつつ、今も時計を見たよ
時間は見てないんだけどね



ユノは…もう色々なイベントにも出ていて、すっかり馴染んでいる感じだね



ちょっとだけ寂しいな
っていうか、ユノと一緒にイベントに出ている人達全員に嫉妬してる



ヒョンの…
ユノの隣に立っていいのは僕だけでしょ



でも…『チャンドラ~最近ヤキモチばっかり!』って85ラインのメンバーで遊んでる事を咎めた時に言われたし…



仕方ないから我慢する



でも
浮気だけは絶対許さないから



僕が帰ってくるまで、ヒョンは利き手を恋人にしておいて



U-knowのパートナーは
永遠にMax僕一人



そして
ユノの恋人は
永遠にチャンミン僕だけだから



12周年おめでとう

ユノ、ただひたすらあなたを愛してるよ
오직 당신만을 사랑해…





Ali様

貴女のチャンミンへの愛を
チャンミンからユノへの愛に乗せました

お誕生日おめでとうございます
貴女に素敵な毎日が訪れます様に…




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密会 (後篇)
2016-01-13 Wed 20:00


拍手20000回の記念として作りました

元メンバーに触れています(鶏龍市で10月に開催された軍フェスティバルの後の話です)

あらかじめご了承ください





side Changmin



いよいよ僕も
この国の男子として行かねばならない義務へ臨む



ユノを見送ってから数ヶ月



東方神起のメンバーとして一人でライブにも参加したし、久しぶりに出演したドラマも無事撮り終えて、そのイベントで日本へも一人で行った



ずっと行きたかった旅行にも行くことが出来て、僕の気持ちの中はしっかりと大きな区切りをつける事が出来た



そしてとうとう残す時間もあとわずかというところで、マネージャーから連絡が入った



ユノが…
休暇で帰ってくる



その時に僕の壮行会をしたいって言ってくれてるって



〈チャンドラにお前の食べたいもので良いから、って伝えてって言ってたよ。俺が手配するからさ、チャンミナ何が食べたい?〉



電話でそう聞くマネージャーに僕は即答した



「火鍋がいい」



〈オッケー、じゃあ手配して時間はメールするからな。ユノは休暇だから、おまえん家に泊まるって言ってたから用意してやって〉



ユノに会える…
僕の気持ちは一気に高まる



ドラマで忙しかったのもあるけど
僕はユノの入隊に付き添わなかった



修了式の時も
会いたいけど会わなかった



何故かって…つらいから



顔を見たいと思って顔を見れば
今度は抱きしめられたいって欲が出るだろし



でも今回は
会って、またすぐ離ればなれになってつらくなったとしても絶対に会いたい



僕の中にくすぶり続けている
青白く燃える炎を…嫉妬の炎を消したいから



あれは一か月前



欧州を旅行する僕の耳に飛び込んできたのは
軍楽隊に配属されて間もないユノが大きなイベントでMCの大役を任せられたっていうことだった



そして、あの人と
同じ場所に立つかもしれないということ



そう
僕の心に波風を立てるのは
いつもあの人だった



初めは、僕をすごく可愛がってくれていた
多分あの頃はユノよりもむしろ懐いていたのはあの人だったかもしれない



いつからか、あの人は
何かにつけて僕を挑発するような感じになった



そうなったきっかけが



僕がいつしかユノのことを
ヒョンとしてではなく、愛の篭った目で見るようになってからだと気付いたのは随分あとだった



ユノとあの人は
いわゆるカップル売りだったことがある



あの二人の間に
お互いにどういう感情があったのかは
知りたくもないし、知る必要もない



ただ、あの人の僕に対する目には
明らかに嫉妬の感情が浮かんでいるように感じていた



僕は…
今もこの先も、永遠にあの人を許さない



僕の唯一無二の存在であるユノを苦しめ、悲しませたから



僕が居ない空間で、その二人が顔をあわせることが猛烈に嫌だった



その後遠く離れた場所にいる僕の元にも
どういう状況で二人がどうしたのかという情報が入ってきて



僕は気が狂いそうだった



嫉妬以上の嫉妬心
生まれて初めて味わう感情だった



でも…一番つらかったのは
僕よりもユノだったはずだよな



火鍋がいいって言っちゃったことを後悔した



ユノ…ゴメン
あんまり辛いの得意じゃなかったよね



僕の嫉妬心が
つい火鍋って自分に言わせちゃった



そう思いながらも
マネージャーから詳細がメールで入り変更がきかなくなった



急いで支度をして
そして…僕の家に置いてあるユノの着替えも用意した



ユノ…ユノ…
こんなにあなたに会いたかったことって今まであったかな



支度を済ませ玄関で車の鍵を持つ
そして…しまっていたユノのスリッパも出しておく



いっつもいつの間にか履いてなくて
『おかしいなぁ、俺どこで脱いだんだっけ』って家中を裸足でペタペタと探し回ってさ



車の中でそんなことを思い浮かべ、思わず笑みがこぼれる



僕が店の個室に入っていくと
数名のスタッフと共に座っていたユノが…
迷彩服を着たユノが僕を見た



『チャンドラぁ!!』



スッと立ち上がって、僕に駆け寄るユノ
少し日焼けした?イベントでずっと外に居たからかな



込み上げてくる感情を抑えるために
こういう時は決まって
僕得意のツンが発動しちゃって…



「ヒョン、元気そうで何よりです」



なんてあっさり言っちゃう僕
でもユノは、そんな僕のことをよく分かってくれてるから…僕の肩をポンと叩いて席に戻る



僕が嫉妬心からあえて選んだあなたの苦手な辛い火鍋



それなのにフゥフゥしながら一生懸命食べてるあなたの姿が…立ち昇る湯気と僕の目にジワッと浮かぶ涙でぼやけるよ



マネージャーが僕に目配せをしてくれる
先に帰った体をとって、車でユノを待つようにってメールをもらってた



「ユノヒョン、皆さん、本当にありがとうございました。僕も頑張って行ってきます」



僕は深々とお辞儀をして個室を後にする



駐車場に降りるエレベーターの中で、この後ユノと二人きりになれる嬉しさに心臓がバクバクしてるっていうのに、実にタイミングよくキュヒョンから電話がかかってくる



くそッ!今度会ったら絶対脛を蹴ってやる…



運転席で1分が10分に感じるもどかしさでユノを待つ



ハンドルに思わず突っ伏して、そのもどかしさと戦う僕の元に…



ドアが開いた音と共に
最愛の人の声が聞こえた



『チャンミナ、お待たせ』



ユノ…ユノ…
会いたかったよ



「ユノ…ズルいんですよ…あなたはいつも…」



言いたかった言葉はこんなんじゃないのに
僕の口からは意味のわからない言葉が出てくる



『チャンミナ…』


「ユノ…」



もう、あの人の事なんてどうでもよかった
くすぶり続けていたあの炎も、ユノの指が僕の頬に触れた瞬間、あっという間に消える



ユノ…会いたかった



どちらからともなく近づく唇が合わさる



僕の心に巣食っていたあの人の呪縛は
ユノの唇で、いとも簡単に消されたんだ



ユノ…ユノ…
あなたは、昔も今も



そう、これからもずっと



僕だけのものだよ





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